アメロシ
地雷の方はさようなら
「氷点下のくちづけ」
冷たい風が吹き抜ける冬の夜。モスクワの街は白銀に覆われ、静寂が支配していた。
そんな中、俺——アメリカは、ロシアの屋敷の前に立っていた。
「ロシア! 開けろって!」
何度呼びかけても、応答はない。けれど、中にいることはわかっている。ロシアは俺の訪問を拒んでいるのだ。
「……なんで、避けるんだよ」
俺はロシアが好きだ。言葉じゃ足りないくらい、心の奥まで焼き尽くされるほどに。なのに、ロシアはいつも素直じゃなくて、俺を遠ざける。
我慢できなくなり、俺は強引にドアを押し開けた。中に入ると、ロシアは窓辺に立ち、雪が舞う外を見ていた。
「……勝手に入るな」
「無視するお前が悪い」
ロシアはため息をつき、俺を一瞥する。その瞳には、微かに戸惑いが滲んでいた。
「俺のこと、嫌いなのか?」
俺の問いに、ロシアはゆっくりと目を伏せた。
「……そんなわけがない」
「じゃあ、なんで避ける?」
沈黙。やがて、ロシアはぽつりと呟いた。
「お前の感情が、重すぎる」
その言葉に、俺の中で何かが弾けた。
「——俺の何がいけないんだよ?」
一歩、ロシアに詰め寄る。ロシアは少しだけ後ずさったが、逃がさない。俺は彼の肩を掴み、強引に壁に押し付けた。
「好きだって言ってるのに、なんでお前はいつも逃げるんだ?」
ロシアは目を見開き、俺を見つめた。その表情は、思っていたよりも脆かった。
「……お前が、怖い」
「俺が?」
ロシアはうつむき、震える声で続ける。
「お前の感情は、俺には熱すぎる……こんな寒い場所にいる俺には、どう受け止めればいいのか……わからない」
その言葉が胸に突き刺さる。ロシアは俺のことを嫌っているわけじゃない。ただ、俺の愛が激しすぎて戸惑っているだけなんだ。
「……バカだな」
俺はそっとロシアの顎を持ち上げた。
「そんなの、慣れればいいんだよ」
そして、迷うことなく口づけた。
ロシアは一瞬驚いたように体を強張らせたが、やがて力を抜いた。冷たい唇が、ゆっくりと俺の熱を受け入れていく。
離れたくなかった。ずっとこうしていたかった。
「……少しは、伝わったか?」
囁くと、ロシアは赤くなりながら目を逸らした。
「……まだ、よくわからない」
「じゃあ、何度でも教えてやるよ」
そう言ってもう一度唇を重ねると、ロシアは観念したように息を吐いた。
雪が降り積もる夜、冷たい部屋の中で、俺たちは少しずつお互いの温度を知っていった—
コメント
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多分私今日が命日です
良すぎて爆破しそうです