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「ジェイデーン、朝だぞ。起きろー」
「ん゛~…んん……」
俺は体を起こして伸びをする。
「おはよペンギン…」
「おう、おはよう」
ペンギンが手を差し伸べてくれる。俺はその手を取ってベッドから立ち上がる。まだ寝ているクルーもいるが、ペンギンと一緒にキッチンの方へと向かう。朝食の準備をするのを約束してたからな。
「ジェイデンって手際いいよな、料理上手いし」
「褒めてもなんも出ねえって。腕のリハビリにもなるしな」
「確かにな。にしても昨日の今日でもう普通に歩けてるってお前の回復力どうなってんの?」
「さあ。なんか傷とかの治り早いんだよね」
そんなことを話しながら2人で朝食を作る。
そうしているうちに他のみんなも起きてきて、全員でテーブルを囲んで食べる。うん、美味しい。
食事を終えて、食器も片付け終わったところで、シャチが俺に声をかけてきた。
「ジェイデン、武器の手入れ手伝ってくんね?」
「いいよー」
俺はそう返事して、武器の手入れを手伝う。
「ジェイデンってさ、キャプテンのことどう思ってんの?」
「恋バナみたいな切り出し方すんなよ……」
「いいじゃんいいじゃん。で? どうなん?」
「ん~……面倒見のいい兄だったり、手のかかる弟だったり……。まぁ嫌いじゃないよ。ローと話してるのは楽しいし、ハートの海賊団のみんなも好きだしな」
素直に答えると、なぜか呆れたような顔をされた。なんだ。正直に話したのに失礼なやっちゃな。
俺がむくれてると、シャチがため息をついてから口を開きながら俺の頬を突く。
「まあいっか」
「ンだよお前」
変な奴め。俺より年上だからって俺のことを子供扱いするのはよくないと思う。精神年齢は俺のが上だぞ。一応。
そう思いながらも、シャチの作業を手伝いながら雑談を続けた。
すると、ペンギンが入ってくる。
「あ、ペンギン」
「どしたー?」
「どしたー? じゃねえよ。包帯変える時間だろ」
そう言うペンギンの手には救急箱があった。
「もうそんな時間? シャチと駄弁ってるとすぐ時間が経つわ」
そう言いながら、俺は作業を中断して椅子に座る。ペンギンが俺の腕と足に包帯を巻いていく。
「うわ~、治ンの早すぎじゃね…?」
「それ朝ペンギンに言われた」
シャチが俺の怪我を見ながらドン引きする。回復力がおかしいのは俺が一番わかっている。なんでなんだろうな。俺がこの世界に転生したことと何か関係があるんだろうか。まあ考えても答えは出ないから考えるだけ無駄だけど。
「そういやこの船っていつ出発すんの?」
「まだしないな」
「そっかー」
「そういやお前、知ってる?」
「え? 何?」
「火拳のエースの公開処刑が確定したこと」
公開処刑……? エースの?
俺はさあっと血の気が引いていくのを感じた。思わず自分の体を抱きしめる。そうか……。そう、だよな。
マリンフォードでの処刑、エースを救出しようとルフィが奮闘して、白ひげも来て、頂上戦争が起こって……。
「ジェイデン?」
「…………」
「ジェイデン!」
「っ、あ、な、なに?」
「いや、青い顔してるから。もしかしてお前、火拳とも知り合いなわけ?」
「正確には知り合いの知り合い…というか。友達の兄貴なんだ」
「火拳にきょうだいがいたのか?」
「血は繋がってないけど、大事な兄ちゃんなんだって、ルフィからよく聞いてた」
「ルフィ…って麦わら!?」
「そうだよ」
驚いている2人をよそに、俺は思考を巡らせる。確か原作でローがマリンフォードに姿を現したのはもうエースが死んだあと。彼らと行動を共にしている俺にはどうすることも出来ない。書き換えようのない現実。
……そもそも俺は、無理してまで死人救済なんてするつもりなんかなかったけどな。現時点で死んでいるキャラもいるのに『みんな救う』だなんて綺麗事言えるほど俺は聖人君子でもないし。
そこまで考えたところで、ペンギンが声をかけてきた。
いつの間にか包帯を巻き終わっていたらしい。
「ありがとう、ペンギン」
「それはいいけど……。大分暗い顔だな。大丈夫なのか?」
「ああ、うん。ちょっと考えごとしてただけだから。大丈夫だ。ちょっとローのとこに行ってくる」
「おう…」
俺は2人にそう言って部屋を出る。
部屋を出てすぐに、俺は壁に寄りかかって座り込んだ。
エースの死。変えられない未来。どうしようもない無力感に苛まれる。
「くるしいなぁ…」
俺はどうしてこの世界に来たのだろう。目的もなく生きていて、いいのだろうか。俺に課せられた宿命とか、そういったものはないのだろうか。