異変を見逃さない事。
異変を見つけたら引き返す事。
異変が見つからなかったら、引き返さない事。
8番出口から、外に出る事。
「なんだ…?これは。」
「……私の所のゲームかと。」
規則正しく蛍光灯が並んだ日本式の駅の壁。貼られていた紙を見たドイツがそう呟きをこぼした。
日本が言うには、彼のあるゲームに登場する文言らしい。
「ジャポーネ、つまりゲームの中ってこと……?」
「その通りです。私はもうにゃぽんとプレイ済みなので…、多分すぐ抜けれますよ。」
「それは頼もしい。……今はあるのか?」
「ないです。今は0番なので。」
日本が黄色い看板を指さす。そこには彼の言うとおり”0”と書いてあった。
多分正しく進むなり戻るなりすれば数字が増えて、8番で戻れるんだろう。考えていた推測が口から零れていたらしい。日本は頷いた。
プレイ済みの日本と頭のいいドイツ、あと自分で言うのはなんだけど、僕は閃きが得意だ。きっとすぐに抜けられる。はず。確証はないけれど。
そんな微かな安心と、大きな不安を抱いて。僕達は前に進んだ。
「ここは……無いですね。」
「赤い波!?逃げるぞ!!」
「何あのタイル!?」
「蛍光灯がA型の方を×す配置になってます。戻りましょう。」
「何もないようだな……。」
「うん、今回も何にもないね。」
「ああ!点字ブロックがきしょいです!!」
1、2、3、4、5、6、7、と思った通り僕達は順調に進んだ。ここで進むなり異変を見つけて引き返すなりすれば8にたどりつけるんだ。
しかし、ここで急に違和感を覚えた。余りにも順調すぎやしないかと。
何かしら一波乱あるはずなのに。一切の間違いもなく進めたんだ。
「最後の最後で何かあるかもよ?」
「……見た感じないんですが。どうしたんですか?」
「ああ、ヤーパンの言う通りだ。…ich的にもないと思う。」
思わず声を上げてしまって、2人に驚かれた。
もう少し君達2人は慎重じゃなかったっけ……。君達2人は、……君達は。
おかしい、これは異変だ。絶対に異変だ。
考えていたことがどうやら口から溢れていたらしい。
ドイツが心配そうに俺に近付いてくる。錯乱したか、だなんて彼は日本と話していた。
そんな普段通りの姿ですら、自分の目にはおかしく映るんだ。兎に角、戻らなきゃ行けない。いや、でも。彼らが言うなら進むべき……?
ううん。戻るべきだ。
僕は2人を振り切って駆け出した。進行方向とは逆に。
看板を見る前に。ioの意識は途切れた。
その時、理解してしまった。
コメント
2件
素晴らしい。👏👏👏(拍手喝采) なんでこう惹き込まれるような文章を書くのが上手いんですか??🙃🙃