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えみ
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数日後。
ダンス練習の休憩中、ふみのりは床に座って水を飲んでいた。
そこへ、メンバー全員が集まってきた。
「ふみ、ちょっといい?」
「ん?」
「みんなで話したいことがある」
ふみのりはペットボトルの蓋を閉めた。
「なに?」
メンバーの一人が口を開く。
「俺たち、ふみにちゃんと謝りたい」
「……うん」
「最初のことも、その後の態度も。全部ひどかったと思う」
別のメンバーも続ける。
「ふみが何回も話しかけてくれてたのに、無視したりしてごめん」
「一緒にご飯行くのも断ってごめん」
「本当は、ふみとまた普通に話したい」
ふみのりは黙って聞いていた。
そして、ゆっくり口を開いた。
「……俺も、前みたいに戻りたいよ」
みんなの顔が少し明るくなる。
しかし、次の言葉で表情が変わった。
「でも、また嫌われるのが怖い」
「ふみ……」
「みんなが笑ってても、俺が入っていいのかなって思っちゃうし。話しかけても、また嫌そうな顔されるんじゃないかって考えちゃう」
ふみのりはペットボトルを見つめた。
「前みたいに戻れる自信、ないよ」
その言葉を聞いて、メンバーの一人がうつむいた。
「……ごめん」
「ううん」
「すぐに許してほしいなんて言わない。ちゃんと時間かけて、また信じてもらえるようにする」
ふみのりは少しだけ顔を上げた。
「……本当に?」
「本当」
その日、ふみのりは久しぶりに、ほんの少しだけ自然な笑顔を見せた。
翌日。
楽屋に入ると、ふみのりのいつもの席に誰かが座っていた。
「あ、ごめん。ここ座る?」
「え、いいの?」
「もちろん。ふみの席じゃん」
ふみのりは少し驚いた顔をしたあと、隣に座った。
「ありがと」
しばらく二人でスマホを見ていた。
すると、
「ふみ、これ見て(笑)」
別のメンバーがスマホを差し出してくる。
画面には、以前みんなで撮った写真が映っていた。
「うわ、懐かし!」
「このときめっちゃ笑ったよな」
「そうそう!あのときさ!」
ふみのりが話し始める。
メンバーたちは笑いながら聞いていた。
その光景は、ほんの少しだけ昔に戻ったようだった。
けれど、ふみのりはまだ完全には笑えていなかった。
みんなが楽しそうにしているときも、心のどこかで考えてしまう。
(これって、いつまで続くんだろう)
(また急に冷たくなったりしないかな)
そんな不安は、まだ消えていない。
それでも。
「ふみ!」
「ん?」
「今日、一緒に帰ろうよ」
「……うん!」
今度は断らなかった。
少しずつでいい。
またみんなの隣にいられるように。
ふみのりはそう願っていた。
その夜、帰り道でふみのりがぽつりと言った。
「ねえ」
「ん?」
「俺のこと、もう嫌いにならない?」
隣を歩いていたメンバーは足を止めた。
「ならないよ」
「……そっか」
「今まで本当にごめんね」
ふみのりは返事をせず、少しだけうつむいた。
そして小さな声で、
「もう、あんな思いしたくないな」
とつぶやいた。
その言葉に、隣のメンバーは改めて気づいた。
自分たちが思っていた以上に、ふみのりを傷つけてしまっていたことに。
今度こそ、ちゃんと向き合わなければいけない。
そう心に決めた。
その日の撮影中。
ふみのりはいつもより口数が少なかった。
「ふみ、今日静かじゃない?」
「そう?普通だよ!」
そう答えたものの、実際は朝から少し体調が悪かった。
頭が重く、身体もだるい。
それでも、せっかくみんなと普通に過ごせるようになったのに、また心配をかけたくなかった。
「次、移動するよー!」
スタッフの声に立ち上がる。
その瞬間、少しふらついた。
「おっと……」
近くにいたメンバーが腕を支える。
「え、大丈夫?」
「大丈夫大丈夫!」
「ほんと?」
「うん!」
無理やり笑って、その場を離れた。
しかし、その様子を見ていたメンバーは心配そうに顔を見合わせていた。
休憩時間。
ふみのりはソファに座り、目を閉じていた。
「ふみ?」
「……ん?」
「顔色悪くない?」
「そんなことないって」
「ちょっと熱あるんじゃない?」
「ないない(笑)」
そう言いながらも、声にはいつもの元気がなかった。
撮影が終わり、楽屋に戻ってきた。
ふみのりは荷物をまとめようとしていたが、なかなか立ち上がれない。
「ふみ、帰るよ?」
「うん……」
返事をしたものの、動かない。
「どうした?」
「ちょっと、疲れちゃった」
その言葉に、メンバーが近づく。
「顔見せて」
「やだ、大丈夫だって」
「いいから」
そっと顔を上げたふみのりの顔は、明らかにいつもと違っていた。
「え、ふみ。ちょっと待って。顔赤くない?」
「そう?」
「絶対熱あるよ」
額に手を当てると、熱っぽさが伝わってくる。
「ふみ、いつから?」
「……朝から」
「え!?」
「でも、せっかくみんなと一緒に仕事できる日だったし……」
その言葉に、メンバーたちは黙り込んだ。
「心配かけたくなかったんだよね」
ふみのりは小さく笑った。
「また迷惑って思われたくなかったから」
その瞬間、メンバーの一人が目を伏せた。
「ふみ……」
自分たちが以前、どれだけ彼を追い詰めていたのか。
ようやく、その一端を理解した気がした。
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