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◆きのこちゃんが姫子に“選択”を迫る
光が揺れ、
影が姫子に手を伸ばした瞬間──
「姫子ちゃん、だめ!」
きのこちゃんが飛び込んできた。
姫子の腕を掴み、
影から引き離す。
「触れたら戻れなくなる!」
「戻れないって……どこに?」
きのこちゃんは姫子を見つめた。
その目は、いつもよりずっと真剣だった。
「姫子ちゃんは選ばなきゃいけない。
“影”に近づくか、現実に戻るか」
「選ぶ……?」
「影はね、森川さんの“心そのもの”なんだよ。
姫子ちゃんが触れたら、あの人の心に深く入り込む。
でも、それは同時に──」
きのこちゃんは言葉を飲み込んだ。
「姫子ちゃん自身も、戻れなくなる」
姫子は胸が震えた。
「……どうすればいいの?」
「次に影が手を伸ばしたとき、
姫子ちゃんがどう動くかで決まるよ」
姫子は影を見た。
影は静かに姫子を見つめていた。
翌朝。
姫子が出社すると、
純が入口の近くで待っていた。
姫子は驚いて立ち止まった。
「あ……森川さん、おはようございます」
「森野さん、ちょっといい?」
純の声はいつもより少しだけ硬かった。
姫子は胸がざわついた。
「昨日……話しかけようとしたことがあって」
姫子は息を呑んだ。
逃げようと一歩下がろうとしたが──
後ろから別の社員が入ってきて、
姫子の退路がふさがれた。
逃げられない。
純は姫子の目を見た。
「森野さん……最近、変な夢とか見てない?」
姫子の心臓が跳ねた。
(……聞かれた)
純は続けた。
「俺……誰かの手を掴んだ夢を見たんだ。
その相手が……森野さんに似てた気がして」
姫子は言葉を失った。
夢の影が言った言葉が、
胸の奥で響いた。
──会いたかった。
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