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看守達の短編集!

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看守達の短編集!

15 - 第15話 桜の木の下。1年に一度君に会い、声が届く日。

♥

54

2025年03月16日

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川上→「」

中島→〈〉

ーーーーーーーーーーーーーーーー

ー中島sideー

最近は風も穏やかになり、桜の蕾も開き始めていた。

今年も貴方に会いに満開に咲いた桜の木の下へ歩く。

あの日の事は今でも鮮明に覚えている。保管庫で血を流しながら倒れていた貴方。目に光は無く、生前の鮮やかな紫色の瞳は濁った色に変わっていた。真っ先に自分が犯人に疑われ、痛みつけられ、囚人に助けを求め、看守を辞職した。

悲惨な人生だった。

貴方は法では決して許されない物を所持していて、後で他の人から聞いた話だが、貴方は俺を消そうとしていたと聞いた。

それでも、俺は貴方を尊敬し続けた。もちろん、今でも変わらない。

だからこそ、毎年この季節になると貴方に会うために刑務所の近くの丘の上にある桜の木の下に行くんだ。

ひらひら舞う桜の花弁を見る度にもう貴方は居ないのかと思い涙が溢れてくる。

〈川上さん………中島です……〉

話しかけても返答が返ってくる事がない事は分かりきっている。でも貴方がそこに居るような気がして無意識に話しかけてしまう。

桜の花弁がこれまでの貴方との思い出が散って行くかの様に舞い落ちている。

そう思ってくると余計に大粒の涙が零れてくる。

貴方は望んで居なくなった訳ではない。

あの時までは、また貴方が仕事復帰して笑い会える日が来ると思っていた。また貴方の笑顔が見れる日が来ると思っていた…。

その希望は保管庫に入った瞬間崩れた。


あの日の事をずっと思い返していたら、いつの間にか日が陰ってきた。

随分と長い時間ここにいたのだろう。

向こうの空は闇に染まりつつある。自分の頭上はオレンジ色の空が広がっていて、その下には桜の枝と花が見える。とても美しい。


〈川上さん……そろそろ俺は帰ります……〉


何も声もしない桜に向かって別れを告げた。


何も……返答は返って来ないはずなんだ……

なのに……聞こえてきた貴方の声…………


「また……一年後……待ってるぞ……、!」


俺は振り返った。一瞬だけ貴方の姿が見えた。

美しく舞う桜の花弁の中にいた貴方はとても美しくて………どこか儚げな様子だった……。


声が聞こえなくなってから、貴方の姿も消えてしまった。


幻でもいい。会えただけで、声を聞き、姿を見れただけでも嬉しかった。

俺は桜の木の下で……

〈はい……!!また会いに行きます…!〉

そう約束し、桜の木を後にした。

また次も、会えたらいいな。


四月一日。それは貴方が居なくなった日。

そして。年に一度、再会できる日。

ーーーーーーーーーーーー

ー川上sideー


俺は桜の木の近くで立っていた。まぁ、誰にも見えないだろうが。

何故なら俺は生者では無いからだ。幽体だ。

毎年、決まった日に、俺の後輩が会いに来てくれる。だから刑務所の近くの丘の上の桜の木の下で彼を待っている。

今年も桜が満開で、風でひらひらと桜の花弁が舞い落ちて居る。

綺麗だなと思いながら桜を眺めて居ると聞き慣れた声が聞こえてきた。

〈川上さん…………中島です……〉

待っていた彼の声だ。

今年もこんな俺なんかの為に会いにきてくれたんだ。

俺はやってはいけない事をした。決して許されるものでは無い様な物だ。

彼は自分の力で副看守長という地位を得たのだろう。

だが、俺は違う。

俺はとある物を使い看守長と言う地位を得た。

所詮俺の地位は他力で得た物だ。とても自力でとは言い難い。

それを使い始めたら終わりの始まりだ。

合法な物では無い為バレたら捕まる。

やめられなくなるサイクルが出来上がってしまう。

俺は彼に使っていた事がバレた瞬間、あの時言う事聞いて止めていればあんな大事にはならなかったのだろう………。

だが、その後、俺は彼を消そうとした。

なのに彼は…毎年俺に会いに来てくれている…

不思議だ………。


君は桜の木の下の前でずっと涙を零したまま動かない…………

俺まで貰い泣きしそうだ…………。


君に酷い事をしたのに毎回会いに来てくれて……こんな俺の為に泣いてくれて……

嗚呼。一度でもいいからまた君に姿を見せられたら……。

君に声を届ける事が出来るなら……。


数時間後。日が陰ってきた。辺りを見渡すと桜の木の向こう側は闇に染まりつつある。俺と君の頭上はオレンジ色の空が広がっている。

〈川上さん……そろそろ俺は帰ります……〉

と告げ、彼は桜の木とは反対の方向に歩き始めた。

その時、自分の体が一瞬だけ彼に見える状態になった。声も出せる………。それなら…最後に……

「また一年後待ってるぞ……………、!」

そう告げた。

彼は振り返り涙を零しながらだが、笑顔で…

〈はい……!!また会いに行きます…!!〉

と告げ去っていった。


また一年後も………俺はまたこの木の下で君を待っている。


四月一日。それは俺がこの世界から居なくなった日。そして、1年に一度、君に会い、声が届く日。


ーfinー

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コメント

5

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川上さああん、、中島さあああん、、 辞めてくださいよ…… こっちまでもらい泣きしますって… しろもちさんはなんでこんな神な話が かけるのか、 疑問に思った今日この頃…

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