散った桜の記憶
注意
シクフォニ妄想
LAN様記憶喪失になります。
口調乱れあり
メンバー名=本名になっています。
誤字脱字あり。
以上苦手な方はback推奨
珍しく、メンバーから掛かってきた電話にあんな嫌な予感を感じることなんて、初めてだった。
スマホが震える。いるまから電話だ。
珍しいなと思いつつもスマホを手に取り、電話に出る。
「もしもし、いるま?どうしたの? 」
電話越しのいるまからの言葉に、俺はしばし動けなくなった。
「…え、うそやろ…らんらん、が…?」
桜の記憶は散ってしまう
「うーん、これくらい材料あれば、明日の料理には間に合うか?」
「それくらいあれば、すっちー達が何とかしてくれるよ!」
いるまとらんは、明日の料理配信に向けて買い出しに出されていた。
明日、4月18日は、シクフォニ歌い手グループのリーダーをしているピンク担当LANの誕生日だ。そして、メンバー達が料理をして、リーダーを祝おう!という話になったのだ。
「…聖人組に掛けるか」
いるまとらん以外のメンバー達は、今頃みことの家で計画を立てている。
「ま、こんなもんか。…そうだ、俺まだ買いたいものあったわ。私用なんだけど。ちょっとそこの雑貨屋行ってもいいか?」
「うん、いいよ。じゃあ俺ここで待ってる」
「悪ぃ、荷物持っててくれ。すぐ戻るから」
いるまはそう言って、足早に店の中に入っていく。らんは、待っている間にSNSを巡回しようと、スマホを取り出す。取り出すと同時に電源が付き、今の時刻と日付が表示された。
(4月17日…いよいよ俺の誕生日とはいえど、やっぱ実感湧かないなぁ…。どうせいるまも私用とか言っといて俺にプレゼント選んでくれたり…?いやいや、あいつに限ってそんな事ないか!変な期待すんのやめとこ)
あはは、と笑いながらそんな事を考える。
ふと景色を見ると、大分散っては来たが、桜が咲いている。綺麗な桜だな、と見蕩れる。
ずっとここに立ち止まるのも暇だなあと思い、いるまには悪いが、周辺を少しだけ散歩しようと歩き出す。
信号が青に変わり、人々は横断する。
その時、信号が赤のはずの車線の車が、速度を落とさず横断歩道を縦断しようとしている。
目の前には子供…。らんは守らねば、と荷物を置いて走り出す。
「危ないっ!!」
子供には申し訳ないが、突き飛ばす。然し、らんは体勢を崩し、転ける。
運転手はよそ見をしていたのか、やっと信号の存在に気付き、ブレーキをかけるが、遅かった。
道路とタイヤが擦れる音がする。そして次の瞬間にはドンッという音ともに、らんは車に轢かれた。
「っく…うぅ 」
(痛い…子供は…大丈夫かな…意識が…遠のく…いるま…いるま…)
雑貨屋から出てきたいるまは、らんの姿を探す。
「らん?…たく、待っとけって言ったのに…どこほっつき歩いてんだ?しかも荷物置いて…盗まれたらどうすんだよ…」
いるまは少し、イラッとしながら、荷物を持ち、らんを探す。
すると、交差点の方が少し騒がしいことに気付く。
「誰か…救急車に電話を…!!」
いるまは嫌な予感がしながらも交差点の方に歩み寄る。見慣れた服、特徴的な桃色の前髪、自分達の知るリーダーが、血を流してうつ伏せに倒れていた。
「っ!!らん!!」
ビニール袋がカシャカシャと音を立てて揺れる。
「…知り合いですか…?」
「知り合いも何も、友人だ…早く、救急車を呼べ!!」
焦りと混乱からか強い口調になってしまう。
その場に居た人が、119へ電話を掛ける。
『事件ですか?事故ですか?』
「事故…救急です!!人が…車に轢かれて、血を流してます!!早く、来て下さい!!」
『分かりました!すぐそちらに向かいます!』
暫くして、救急車のサイレンが鳴り響く。
いるまは、救急車に乗り込み、ただ、リーダーの無事を祈ることしか出来なかった。
(誕生日前に…何やってんだよ、馬鹿…)
雑貨屋でらんの誕生日プレゼントに買った桜の置き物を握り締める。
嫌に、長く感じた。
院長から、室内に入るよう呼ばれる。
らんは、入院着を着て、包帯を巻かれ、点滴をされて、眠っていた。
「…らんは…助かるんですか…?」
「命に別状は無かったですが、目覚めるまでに少し時間を要すでしょう」
「…そう…すか…」
言葉に詰まる。ただ、院長の話にいるまは頷くことしか出来なかった。
最後に、らんの手を握る。
「東京ドーム、目指すんなら、早く目覚めろよ…」
そう言って、いるまは病院から出た。
スマホを開けば、同じメンバーであるみことから、数時間前にメッセージを預かっていた。
『帰りが遅いんやけど…大丈夫?』
既読を付ける。このことを、言葉で伝えられる気がしない。だから、電話を掛けた。
その頃、みことの家では、すち、暇72、こさめが計画を立てていた。こさめに関しては、みことが飼っている猫のハルと遊んでいた。
「ハル〜、一緒に遊ぼ〜?」
「こさめちゃん、とりあえずこっち先に済ませようよ…」
すちが呆れながら、こさめにそう言う。こさめは渋々作業にまた取り掛かる。
その時、みことの携帯から電話が掛かってきた。
「誰からやろ…」
「いるまじゃね?」
暇72の予想通り、いるまから電話が掛かってきている。だけど、みことは何か嫌な予感を覚えた。
「もしもし、いるま?どうしたの?」
電話越しが、恐ろしく静かだ。だけど、いるまは覚悟をしたように、言葉を発した。
『…らんが…車に轢かれた…』
「え…?」
念の為スピーカーにしていた為、メンバー全員が振り返る。
「うそ…やろ、らんらん、が?」
「嘘じゃない…俺はちょっと…気持ちに整理をつけたいから、今日は休むわ…明日、見舞いに行こうぜ…」
そこで、プツッと電話が切れる。あんなに元気の無いいるまを見たことがない。それよりも、らんが、リーダーが、車に轢かれた…?
さっきまで賑やかだったのに、今はお通夜みたいに静かだ。
リーダーの誕生日前に、こんな悲劇が起こるなんて、誰も予想してないだろう。
次の日、らんが入院している病院にメンバーで向かった。
病室に入っても、らんは眠っている。桃色の前髪が日光に当たって、より一層桃色になっているように見える。
「ほんとのことだったんや…」
「嘘ついたって仕方ねえだろ…」
メンバーは眠れなかったのか、目の下には薄く隈ができている。
「…これから、活動どうする?」
「そこが問題なんだよな…」
暇72が問いかけた質問にいるまは頭を抱える。メンバーが事故にあっておいて、いつものテンションで毎日投稿なんて出来る気がしない。スタッフに頼んで、らんの諸事情で暫く活動休止にする、という事しか思い付かない。
「みんなには…迷惑かけるけどさ…これしか、思いつかない…」
「そう、だな。個人もちょっと休憩して、振り返るか…」
「でも、シクフォニは絶対終わらせない。とにかく第一はらんが起きることだ」
いるまは元々つり目だけど、今はもっと鋭く、メンバーを見ている。それにメンバー全員頷く。
「明日、俺用事もねえし、できる限りらんの傍にいるわ」
暇72はそう言う。
「そうだな、言い方変だけど、個人も休むんなら、かなり時間はあるから、順番に見舞いに行くか」
「じゃあ、明後日はこさめの番だね!」
「そうすると、こさめの次が俺、俺の次がすち、その次がみこと…でいいか?」
「俺は大丈夫だよ」
すちもみことも同意だ。
「取り敢えず…こんな形で祝ってしまうけど…誕生日おめでとう、らん」
今日は4月18日、らんの誕生日。昨日雑貨屋で買った、桜の置物をそっと枕元に置く。気のせいか、らんの口元が緩く微笑んだ気がした。
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