🧡「なーなー!ラウ!俺、蓮の隣がいい!!」
小さな子供のように駄々をこねる康二に、ラウールはすっかり困ってしまっている。
🤍「なんで?そんなにイチャイチャしたいなら家帰ってからすればいいじゃん…」
🧡「ええから、席かわってやー!」
🤍「はいはい」
後が面倒臭そうだと思ったのか、ラウールは大人しく席を康二に譲った。
🧡「ありがとな!ラウ!愛しとるで♡」
🤍「うん。ありがとー」
やや棒読みの返事をしたラウールは、少し不機嫌そうに俺の後ろの席に座った。
康二は俺の手を握って、今度は小さな子供に言い聞かせる様に、穏やかに言った。
🧡「蓮、大丈夫やからな。俺たちがついとる」
やっぱり康二は、あの人影に気付いていたんだ。
普段はお茶目な康二の、兄らしく頼もしい姿に俺は大きな安心感を覚えた。
🖤「ありがとう」
🧡「ええんやで。困ったことがあったらいつでも言いや」
俺たちの様子を見守っていた涼太兄さんが、心配そうに声をかけてきた。
❤️「何か、あったの?」
🧡「家についたら、すぐ言うで」
涼太兄さんは、康二の一言で何かを察したのか、頷いた。やっぱり兄弟の絆ってすごいな、と俺は勝手に感心していた。
しばらくして普段の疲れが出てしまったのか、亮平兄さんがすやすやと寝息を立てて眠ってしまった。
みんなが、しーっ!!と必死の形相で合図をするので、俺は声を出して笑いそうになってしまった。
兄さんを起こさないように、みんな静かにしていたので、行く時よりも移動時間が長く感じた。
家に到着し、亮平兄さんをみんなで起こして、大量の食料品を運びながら家に帰った。
みんなが購入品を整理し終わって、リビングに集まると、康二が真剣な面持ちで話し始めた。
🧡「さっき帰るときにな、蓮が知らん人に声かけられてたんや。俺の見間違いやなければ、あの人は多分、照兄と大兄のお母さんやと思う」
兄弟達の顔色がさっと変わる。康二が続けようとすると、照兄さんが口を開いた。
💛「あの人が、出てきたってことか?今度は蓮が狙われたのか?」
🧡「わからへん。でも、そろそろ蓮にも話さんとあかんと思うねん。俺たちの、過去を」
兄弟達は全員顔を見合わせて、頷いた。亮平兄さんは固く結ばれた唇をほどいた。
💚「蓮。少し長くなるから、座って。僕たちの話なんだけど…」
亮平兄さんは、丁寧に今までの事を話してくれた。
父親に暴力を振るわれ、虐待を受けて育ったこと。兄弟でなんとか肩身を寄せて、耐えてきたこと。
康二は関西で生まれ育ち、ラウールは小さい頃はずっと入院していた事を話してくれた。
話が終わると、みんな目に涙を溜めていた。
💚「今まで隠そうとしていてごめんね。簡単に説明できることじゃなくて」
🖤「いいんだよ。みんな、辛かったんだね」
🖤「俺はみんなに会えて良かった。生きててくれて、良かったんだよ。ありがとう」
みんなの心の傷を癒すような言葉は、届けられなかったと思う。その代わり、俺は肩を震わせて泣く兄弟達を、1人ずつ抱き締めた。
気づくと、俺の頬にも涙が伝っていた。
みんな泣き疲れて目が真っ赤になった頃、照兄さんと大介兄ちゃんが話し始めた。
💛「俺と大介の母親は、みんなのお母さんとは違って、依存体質だったんだ。どんなに親父から暴力を振るわれても、いつかは自分を愛してくれるって、ずっと信じてた」
🩷「だから、離婚した後も俺たちに会いに来ようとしてて一度、翔太が狙われたんだ」
翔太兄ちゃんを見ると、過去のトラウマからか、細かく震えている。側には康二がいて、背中を擦ってやっている。
💛「それで警察に通報して、母さんは傷害罪で逮捕された。その時はなんとか事なきを得たけど、どうやら刑期が終わったみたいだな」
🩷「兄弟がまた危害を加えられるのだけは、絶対に避けたい」
大介兄ちゃんが自分の気持ちを素直に伝えた瞬間、突然インターフォンが鳴った。
🩷「まさか…母さん!?」
🖤「俺が行くよ!」
気付けば、俺はそう言っていた。驚く兄弟達を無視して、玄関へ走り出す。
あの人には、俺に対する止めどない殺気を感じた。自らの息子に対する異常な「愛」も。
俺はどんなことをされてもいい。ただ、これ以上傷つけてさせはいけないんだ。俺の大切な兄弟を。
俺が玄関のドアを開けると、フードを目深に被った、大介兄ちゃんによく似た女性が立っていた。
🩶「ちっ、あんたか。今すぐひーちゃんと大ちゃんに会わせて。そうしないと…」
🩷「母さん、俺だよ。大介だよ」
💛「こんなこともうやめて」
🩶「あぁ!大ちゃん!ひーちゃん!こんなとこ早く出ていってお母さんと一緒に住みましょう」
兄さん達が震えながら姿を見せると、母親は歪な笑顔で二人の肩をきつく掴んだ。
二人は過去のトラウマで何も言えずに俯いている。
この人はここまで二人を追い詰めていたのか。俺の中で、何かが切れる音がした。
🖤「あなたの方が、兄さんたちと一緒に住む資格なんて無いと思いますが」
俺が二人を遠ざけるようにして前に立つと、母親は怒り心頭で俺に当たった。
🩶「はあ?あんた、何を言っているのよ!」
🖤「俺は、照兄さんと大介兄ちゃんの弟です。これ以上、みんなを怖がらせないで下さい!」
🩶「うるさいわね!」
🖤「俺の兄弟に近づくと、警察を呼びますよ」
俺が冷淡にそう言い放つと、毒親へと成り果てた二人の母親は、動揺して狼狽えた。
🩶「私はこの子たちの母親よ!ただ、息子に会いに来ただけなのに…」
🖤「二人はあなたに会いたくないんです。わかったなら帰って」
俺が目付きを鋭くして睨むと、母親は一瞬悔しそうな顔をしたが、無言で引き返していった。
気付くと、後ろにはいつの間にか兄弟達が全員いて、みんな心配そうな顔をしてこちらを見つめていた。
💛「蓮、本当にありがとう…!」
泣きそうな顔で照兄さんが俺に抱きつき、ぐしゃぐしゃっと乱暴に俺の頭を撫でた。
🩷「その…初めて会ったときは冷たくして、悪かったな。でも感謝してるよ。ありがと!」
大介兄ちゃんは恥ずかしそうに、それでいて優しく感謝を伝えてくれた。
良かった。俺は兄さん達を守れたんだ。
🖤「もう大丈夫だと思うよ。兄さんたち、今まで怖かったね。よく頑張ったよ」
俺がそう言って二人を抱き締めると、二人は小さな子供の様に泣き出した。
💚「蓮、ありがとね。君がこの家に来てくれて、本当に良かった」
亮平兄さんと他の兄弟達も、涙ぐみながら俺の頭を撫でて抱き締めてくれた。
その日は、みんなが泣き止むまでずっと、俺達は抱きあっていた。
次回に続きます!今回長くなっちゃってごめんなさい!💦
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