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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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ラヴィラビットのクエストから数日経った。あのクエストはもちろん達成して報告も済ませている。で、ここ数日で体感したことが幾つかあるのだが……。

まず一つに、複数人でクエストをやるとやはり早い。いやね?そんなこと言わなくても分かるだろって思うけど、思ってるよりもほんとに早いのよ。普段一人でやってて一日出来て二つのクエストが限界なのに、二人でやるとクエスト内容によるけど倍くらいは一日で色々できちゃうのよ。

次に、やっぱりマリンはとんでもなく強いということ。これも罠魔道士なんて言うかなりのレア職業だからもあるだろうけど、それ以上に彼女と罠魔法が相性抜群過ぎるのよ。理由として、彼女は八歳(推定)でまだまだ幼い子供だ。だからこそ罠魔法が真価を発揮する。規則的な罠の配置はなく、彼女の気分。思うがままに配置するため避けることがほぼ不可能に近い。

また、今はまだひとつしか使えないがその一つ『捕縛【Lv1】』が汎用性が高く、魔物退治に一役も二役も買ってくれるのだ。相手の動きを封じるということは、こちらが生殺与奪の権利を握ってることになる。上手く使えば足止めにもなるのが恐ろしい。幸いなことにこの罠魔法を扱うのが無垢な少女だから人には使わないが、悪意ある者がこの魔法を会得したらそれはもう胸糞な感じになるだろう。

さて、そんな数日を過ごしたのだがおかげでお金がかなり潤い、貯金なんかもできるようになってきて少し余裕が出てきた。なので、このお金を使い少し前から考えていた彼女に新たな罠魔法を覚えさせることに使おうと思う。実は、俺の知り合いに魔導書を取り扱う本屋を経営してる人が居るのでそこに行けば罠魔法の魔導書もあるだろうという浅はかな考えではあるが、その浅はかな考えに賭けてマリンと共に本屋にと向かう。


「っしゃいまーせ〜…」

「久しぶりー『フムル』おばば」

「もっかい言ってみろ?ここでお前の顔を吹き飛ばす。」

「ごめんなさいフムルねぇーちゃん。」

「はい。よろしい」

この人はフムルおばば………じゃなくて、フムルねーちゃん。歳で言えばまだ三十手前なんだけどなんか言動がもう老人臭くて俺は勝手におばば呼びしてるが、ただ失礼なので普通は言うのはやめよう。

ちなみにこの本屋の店長で唯一のスタッフでもある。

「久しぶりに顔出しだと思ったら、幼女連れてくるとはね……。いつかやるんじゃないかと思ってたけどまさか…………」

「変な勘違いして勝手に話を進めるな。この子はちょっと前に助けた奴隷少女で、今は俺が保護してる子だよ。」

「はいはい。知ってる知ってる。街で噂になってるからね」

「え?」

「ここ数日幼女を連れ回す男の人をよく見るってね。しかも、その人は幼い子を無理やり連れ回してクエストに連れて行ってるとさ」

「凄い!ほぼ全部嘘で形成されてる」

「てことはどこかしらはホントなんだな?」

「クエストに連れて行ってるはホントだね。厳密に言えば着いてくる、かな?」

「嘘つけ」

「嘘じゃないもん!ミナルお兄ちゃんと一緒に居たいって私から言ったんだもん!!」

「…お前、『お兄ちゃん』呼びまでさせて」

「違うって言ってんだろ!!」

「そんな怒んなよぉ?ジョークじゃないか」

「ジョークだとしてもタチ悪いからやめてくれ」

「まさか底辺金欠限界冒険者が進化して『ロリコン変態底辺金欠限界冒険者』になって帰ってくるとはね」

「ねぇ?俺そんな不名誉で呼ばれてるの?」

「これはまじで言われてるね。」

「底辺金欠限界冒険者は百歩譲っていいけど、ロリコン変態底辺金欠限界冒険者は許さんよ?」

「私に言われても噂がそうなってるからねぇ……。どうしようもないさね」

「…はぁ。もういいわ。ロリコン変態底辺金欠限界冒険者でもいいよ。」

「そんなショげないでよぉ?アンタ意外といい顔してるんだから、そんな悲しそうな顔したら私がゾクゾクするだろぉ?」

「慰めるんじゃなくてただの癖を出すな。」

「ハッハッハッ!!こりゃ失礼したな」

「んな事より今日はしっかり理由あってここに来たんだよ」

「なんだ?絵本でも紹介したろか?」

「要らねっての!!今日来たのはこの子の魔法を強化しに来たんだ!」

「へぇ?その子魔道士なんか?」

「罠魔道士の才があるんだとさ」

「そいつはすごいな!お前さんは才能がなくてひたすら地道な努力してそれでもなお発芽しない底辺金欠限界冒険者なのにな!」

「なぁ?フムルおばばは俺を言葉のナイフで刺しとかないと気が済まないのか?」

「凹むお前さんを見たくてやってるんだからそりゃな?」

「だから三十路手前でも彼氏いないんだよ……。」

「一番言っちゃいけねぇこと口にしたなこのクソガキ!?」

「はい。すいません。お許しください。」

「で?欲しい魔導書ってのがその罠魔法に関しての本ってことだな?」

「そうですね。こんだけボロいんだからそういうの眠ってるかなって」

「お前も人の事言えねぇレベルで大概だからな?」

「大丈夫、フムルねーちゃんだけだから。」

「相手を選んでやってるところに悪意を感じる。」

「んな事より、あるのないの?それだけ教えてくれね?」

「あるけど、昔内容見た感じ確かレベル2までしか載ってないぞ?」

「それでも構わないよ。とにかく今は罠魔法の種類を増やしたいからね。」

「あっそ。んじゃ持ってくるからそこで待ってろ。」

彼女はこの街に来て最初に話した相手であり実は恩人でもある。この街に来た頃俺は右も左も分かんない状態でただ立ち尽くしていたのだが、そんな俺を見かねてフムルねーちゃんは俺に声をかけて少しの間家で寝泊まりをさせてもらった。

その僅かな時間であるが俺は彼女に心を許して仲良くさせてもらっている。そして、ある意味助けて貰ったので、そのお礼として何とか金を作ってちょいちょい顔を出して売り上げに貢献してる。それが現時点で俺ができる恩返しだからだ。

「ほれ持ってきてやったぞ」

そう言って埃まみれの魔導書を受け取る。受け取った衝撃で埃が舞い、それを思いっきり吸い込んでむせる。

「ゴホッゴホッ……。あのなぁ?投げ渡すならせめて埃は取っておけ!」

「わりぃわりぃ。急いでるんかなぁて思ってさ」

「んなわけねぇだろ!」

「とりあえず中身確認してみてくれや。もしかすると別の魔導書持ってきたかもしれないからさ。」

そう言われ念の為魔導書を開き中身を確認する。内容は確かに罠魔法について書いてありその中に『捕縛』もあったが、レベルという概念はこの魔導書には書いてない。正確に言えば、『捕縛』にだけレベルの概念がなく他の魔法にはレベル2まで記載があった。

「なぁ?」

「ん?」

「なんでこの魔導書『捕縛』にレベルが無いんだ?」

「なんでって、捕縛にレベルも何も無いからだろ?」

「は?」

「捕縛は言うなれば金縛りみたいなもんで、何かしらの力で身動きを封じるもんだ。その本にそう書いてるだろ?」

「確かにそう書いてるが、マリンの使う捕縛はレベルの概念があり金縛りのような見えない力ではなく、物理的に拘束してるぞ?」

「ならあれでしょ、時代と共に魔法も進化したんだよ。」

「えぇ……。あんま納得いかないんだけど」

「それぐらいしか私は考えつかないし、別にそんなに深く気にしなくてもいいだろ」

「まぁ、確かに使えればいいや。」

「そそ、使えりゃいいんだから細かいことはいーの。」

「んじゃ、これ買うわ。いくら?」

「ん?金は要らないよ」

「いらないの?」

「そんな本在庫として持ってても誰も買いに来ないし、その証拠して埃まみれだったろ?」

「いやまぁ…。そうだけど一応商品じゃ?」

「そんなもんに価値は無いのよ。扱える人が滅多に居ないから価値もつけられない。なら、必要としてるやつにタダであげた方が私の運気もあがるでしょ?」

「なるほど。下心丸出しの優しさってことね。」

「わたしにも運気よこせっての。」

「とりあえずこれありがたく貰ってくわ。」

「はいはーい。次来る時はもっと金持ってきて落としていきな」

「底辺金欠限界冒険者にそんなもん期待すんなフムル”おばば”が」

「ならとっとと底辺脱却しなさいな『ロリコン変態底辺金欠限界冒険者』が!」

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