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「美鶴、今日は行かない!?」


朝一番、叫び声に叩き起こされるのも少し慣れてきた。


「どこに……」

「内緒!でも美鶴が好きそうなところだよ!」


相変わらず行き先を教えてくれないのは何故か。

俺が好きそうなところとかほざいているが、それなら行き先を教えてくれれば行く気にもなるというのに。


「まあまあまあ、起きた?起きたよね!?」

「うるさいうるさいうるさい。わかったよ!行くよ!」


初めてシシルの言うことに根気負けして渋々布団の中から身体を起こす。

それを見たシシルはとても満足そうに、張り付いていた2段ベッドの梯子から降りて、「待ってるからね!」と叫びながら部屋からフェードアウトしていく。

このまままた寝たらどうなるだろう。多分今度は頭でも叩かれそうだ。


シシルは長くとも30分程度で帰ってくるので、今回もそんなもんだろうから服はズボンだけ変えた。

寝巻きの短パンはちょっと恥ずかしいが、別にヨレたTシャツが恥ずかしいとは思わないので、謎のロゴがでかく入った寝巻きTシャツはそのままでリビングに向かった。


リビングではシシルが首からがま口財布を下げてスタンバイすると同時に、父さんがやけにオーバーな動きで朝の体操を踊っている。


「それじゃあっよろしくねっ美鶴もっ!」

「動くか喋るかにしろよ。まずこれってお使いなの?」

「さあっ行ってからのっお楽しみっだねっ!!」


完全に面白がってこの喋り方をしている。


思春期女子ばりの目で父を睨み、玄関に向かうと背後からシシルがちょこちょこ着いてきた。

この部屋はマンションの5階にあり、エレベーターが一階とかにあるともどかしくて階段でいつも行ってしまう。

しかし今日はまだ寝ぼけているし歩くのが面倒なので、エレベーターに乗り込み、ずっと開閉ボタンと睨めっこするとしよう。


「あらシシルくんおはよう。今日もお使い?」

「おはよう山内さん。今日は弟も一緒だよ!」


2階、3階、と上がってくるエレベーターをぼんやりと眺めて、ちょうど4階目になったとき、麻のシャツを着たショートカットの女性がやってきた。

持っているカゴは藤つるを編んだ、一万円くらいするいいヤツだろうか。『丁寧な暮らし』を見たような気がする。


一方でがま口財布を下げた、ショートパンツに大きいTシャツを着ているシシルは自慢げな口調も相まって、二週間ほど前にやっていた『はじめてのおつかい 〜初夏の3時間スペシャル〜』を彷彿とさせる姿だった。

見たことある。この後泣きながら一旦家に帰って、お母さんに喝入れられるまでがセットのやつだ。


都心からも程近いこの地域では、地域コミュニティの希薄さはもはや当たり前のもので、同じ階どころか隣人の名字ですら知らない。

この山内さんはどこに住んでいるのだろうか。


「あらあら」と微笑ましげに笑う山内さんに、『おはようございます』と『ざっす』の中間くらい、表現するとしたら『はぃざっす』となるような挨拶をすると、山内さんの「あらあら」がまた増えた。


「話には聞いてたわ。美鶴くんよね、初めまして。」

「そうこれが美鶴。寝起きなんだよ。」


シシル、余計な一言は入れなくていい。


「ああハイ。弟っつても同級生っすけどね。」

「知ってるわ。クラスも同じなんでしょう?すごい偶然よね、とっても楽しそうで聞いてるこっちまでワクワクしちゃうわ!」

「まぁー……そっすね。」


寝起きということもあり、中々気の利いた返事ができない。

シシルの方を見やると、どことなく自慢げだが、目が合うとバツが悪そうな顔をしており、教員実習に来た大学生に謎な先輩面をする女子小学生を思い出した。


ようやく着いたエレベーターに乗り込むと、ボタン操作を装って会話に参加できないフリをする。

シシルと山内さんが背後で親しげに話すのに、 なんとも言えない居心地の悪さを感じていた美鶴は早く着けと開閉ボタンを睨むことになった。

それじゃあね。とエレベーターを降りて別れた山内さんに手を振った後、向かったのはマンションから徒歩3分のベーカリーだった。

カフェも併設されているこの「ベーカリーすすき」の朝食用のパンは最近美鶴が気に入っているもので、毎朝焼きたてで売っているパンはふんわりとしていてとても美味しい。


「これお前が買ってきていたんだ。」

「うん。すすきさんのパン美味しいよね。」


いつもの朝食用パンに加え、シシルイチオシだというメロンパンも四つ買った帰り道、ふと聞いてみると、少し誇らしげな表情のシシルが小さくスキップしながら振り向いた。


「美鶴もこのパン好きでしょ?」

「ん、結構好き。」


まだほのかに暖かい、優しいパンの匂いに包まれながら、こういうのも悪くないなと思った。




ーーーーーーーーーーーーーーーー

爪切りです。

前回書き忘れたのですが、美鶴の友人たちはそれぞれの口調が定まるまではマジで誰が誰だかわからないので


ウザ絡みの佐藤→美鶴

うるさいの加賀→名雪

胡散臭いの楠木→ミツル


といった具合に、美鶴の呼び方を分けていたりします。

正直私はこれでも誰が誰だかイマイチ分かってません。


あとコメント機能があることを今日知りました。ちょっと知るまでが遅すぎる

なにか質問等々ありましたら是非お気軽にくださいo(^^)o

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