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年が明けた。
大晦日から初七日までの慌ただしさは落ち着き、本格的な寒さが街を覆う。
urのリハビリは年末で終了した。
たまにjpとttに会ったり、一緒に買い物に出る以外はほとんどを二人きり、家の中で過ごしていた。
yaは自室のパソコンの前で、ダルそうにキーボードを叩いていた。
暇つぶしになるかな、とフリーランスのプログラマーとして収入を得ていたya。
jpから譲り受けた都心の一軒家は家賃もローンもないし、二人で暮らすには十分な貯蓄もあった。
このまま死ぬまで、urと二人で。
ふとそう思った自分に驚いた。
無意識のうちに、この家でurといることを当たり前に思っている自分がいる。
いつまでこの暮らしができるんだろう?
いつかはurもここを出ていくのかな。
夢だったり、大切な人を見つけて、、、
想像しただけで心臓が締めつけられる思いだった。
(素直にならな)
ttの一言を思い出す。
…ずっと一緒が良い。
この気持ちはなんだろう?
友情?仲間?絆?
キーボードに手を置いたままのyaの耳に、優しいピアノの音色が聞こえてきた。
urが退院した日、快気祝いとしてjp達から送られたのは立派なグランドピアノだった。
シェアハウスにいたころMIDIキーボードで音楽を弾いていたurは、本物の鍵盤に目をキラキラさせて喜んだ。
時間がある時はこうしてピアノの前で過ごしている。
(毎回yaが起きているのを確認する。きちんと気を遣えるのだ)
urがいる部屋のドアをそっと開ける。
耳を澄ますと、演奏に合わせて小さな声で歌っているようだった。
聞いたことのない歌。
…誰かを想う歌?
伏目がちに、物憂げな表情で演奏するur。
赤みがかった茶色の瞳に長いまつ毛と前髪が影を作っている。
yaの心臓が高鳴るのがわかった。
(あんな顔もできんだな…)
ふと顔をあげたurは、ドアの隙間から見つめるyaに気づくとパッといつもの戯けた表情になった。
「お、なんだよ」
「俺の素晴らしい演奏に引き寄せられたかぁ?」
「……ほんとお前って勿体無いよなぁ」ハァ
「はぁ!?」
手離したくない。
yaの深層が呟く。
心臓はとっくにこの思いに気づいている。
頭がそれに抵抗する。
「…どうした。なんかあった?」
「…」
「…話したくないならいいよ。」
「でも俺の曲聴いてって。俺が作ったんだ」
「yaくんのための曲だよ。…いつもありがとうな」
ど素人なりにわかる繊細なメロディは、urの心の深い部分を音にしたようだった。
女たらしですぐふざけるし、デリカシーがなくて下品なur。
俺とのペアは、不仲組、なんて呼ばれてたっけ。
でも本当は純粋で優しくて、全てを許すような微笑みを浮かべることもあるんだ。
urの心の底には、碧空を映す静かな湖面が広がってるんだろう。
そうyaは感じていた。
(素直に…)
心臓と頭が結びつく。
…俺、こいつが好きなんだろうな。