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#ホラーゲーム
りと。@ねむねむ中(=o=;)
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#STPRファミリー
第七話 ロマンチスト
集落を出て、しばらく歩いた頃。
「――この辺りだよ。」
うりくんが、鼻をすんすんと鳴らしながら足を止める。
「魔物の匂いがする。結構強い、やつだ。」
「匂いで分かるん……?」
「俺、鼻はいいからね。」
うりくんが、得意げに胸を張った。
「油断しないで。」
のあちゃんが、静かに周囲を見渡す。
遠くから魔物の呻き声が聞こえた気がした。
俺は、思わず一歩後ろへ下がった。
――あの光景が、まだ頭の奥にこびりついている。
ツタや根が魔物に絡みつく様子。
鮮血の真っ赤な色。
暗闇で聞こえたミシミシと軋む音。
鉄と土の混ざった匂い。
思い出すだけで、指先が冷たくなり呼吸が乱れる。
無意識に服の裾を指先が白くなるほど強く掴んでいた。
「たっつん、大丈夫?」
じゃぱぱが、俺の顔を覗き込む。
「……う、うん。大丈夫。」
片手でじゃぱぱの顔を押し返す。
「本当に?」
「…うん。」
嘘だった。
全然、大丈夫じゃない。
思い出すだけでこの様だ。
でも、そう言うしかなかった。
「――来た。」
のあちゃんが、短く言う。
茂みの奥から、大きな影がゆっくりと姿を現した。
今まで会ってきた魔物とは、明らかに違う。
一体で、他を圧倒するような気配。
赤く血走った目が、こちらを睨みつけている。
まただ。
またこいつも、俺だけを見ている。
冷たい汗が額に流れる。
「……思ったよりも大きいね。しかもこの魔力量…」
じゃぱぱの声から、いつもの軽さが消えた。
「これは、確かに集落の人たちじゃ無理だ。」
うりくんが、爪を構える。
「俺が最初に行く!身軽さなら任せて!」
「油断しないでよ。」
のあちゃんの声。
「分かってるって!」
うりくんが、地面を蹴った。
驚くほどの速さで、魔物の懐に潜り込む。
鋭い爪が、魔物の腕を切り裂いた。
細い線が浮かび上がりそこから真っ赤な血が垂れている。
すごい身体能力だ。
「……効いてる!」
「うりくん速い……!」
俺は、思わず声を上げた。
でも。
魔物の反撃も、速かった。
巨大な腕が、うりくんを薙ぎ払おうとする。
「うりさん、危ない!!」
のあちゃんにしては珍しく取り乱した声をあげる。
「大丈夫、こんくらい避けられる……って、うわっ!?」
うりくんが、辛うじて避ける。
でも、体勢が崩れた。
「隙あり。」
じゃぱぱの影が、その隙を突いて魔物の足元に絡みつく。
「今のうちに!」
のあちゃんのツタが、しゅっと伸び、魔物の身体全体を締め上げていく。
――ミシミシ。
あの音。
俺の心臓が、ぎゅっと縮こまった。
「……っ。」
視界が、少しぼやける。
息が、浅くなる。
――怖い。
やっぱり何度見ても、慣れない。
俺は…弱い。
「うぐぅっ……!」
魔物の唸り声が、悲鳴に変わっていく。
じゃぱぱが動きを封じている。
のあちゃんのツタが魔物を貫き、うりくんの爪が魔物に突き刺さる。
そのたびに血が飛び散る。
鉄と土の混ざった匂いが、また鼻の奥に広がった。
俺は、慌てて目を逸らすことしかできなかった。
「――終わりだ。」
じゃぱぱの影が、大きく膨らむ。
黒い靄が渦を巻き、拳よりも大きな塊になっていく。
じゃぱぱが本気だ。
いつもは感じない、狂気を少しだけ感じた。
これが『殺気』と言うやつなのだろうか。
「今!」
のあちゃんの根が、魔物の動きを完全に封じる。
じゃぱぱの魔力が、放たれた。
――ドンッ!!
地響きのような音。
土煙が舞い上がる。
しばらくして、静寂が戻ってきた。
「……勝った……?」
俺は、震える声で呟いた。
煙が晴れると、そこにはもう何もいなかった。
地面に大きなくぼみができている。
「よし、討伐完了!」
うりが、尻尾をぶんぶん振りながら駆け寄ってくる。
「たっつんさん、勝ったよ……って。」
うりが、俺の顔を見て動きを止めた。
「……あれ、めちゃくちゃ顔真っ青じゃん。」
「……う……。」
俺は、まだ震えている自分の手を見た。
全身が、冷たい汗でじっとりしている。
「もしかして、まだビビってる?」
「…うん。」
認めたくないけど、認めざるを得ない状況。
「たっつんさん、そんなんじゃこの世界生きていけないよ?」
うりが、呆れとも嘲笑とも捉えられる口調で言う。
「そんなこと言われても……。」
俺は、力なく答えるしかなかった。
「まあ、そのうち慣れるよ。」
のあちゃんがこちらに歩きながら、あっさりと言う。
「俺これに慣れんの……?怖すぎ……。」
自分がいつか、この光景を平気な顔で見られるようになる。
その未来を想像すると、それはそれで少し怖かった。
「おい、うり。俺のたっつんをいじめんなよ。」
じゃぱぱが音もなく近づいてきて、うりの首根っこを軽く掴む。
「俺はお前のものではないけどな?」
「え?」
じゃぱぱが何を言ってるんだとでも言いたげな顔をしている。
何こいつ。
「はいはい、ごめんってば。」
うりが、両手を上げて降参のポーズを取る。
その様子を見て、のあちゃんが小さく笑った。
「……本当に、賑やかだね。」
その声には、どこか安堵したような響きがあった。
*
集落に戻ると、長とうりくんのお婆ちゃん、それとうりくんの妹―りうちゃんが出迎えてくれた。
「無事でよかった。こんな短時間であの魔物を倒せたのかい?」
「倒せたよー!」
うりくんが嬉しそうに答える。
「おかえりー!お兄ちゃん、ほんとにちゃんと戦ったの?」
「ちゃんと戦ったわ!!」
「素晴らしい。本当に感謝してもしきれないよ。」
長が、深く頭を下げる。
「約束の品を渡そう。」
古びた箱が、俺たちの前に差し出された。
中には、一枚の紙切れと、薄い布が入っている。
「魔道具!!」
じゃぱぱが嬉しそうに覗き込む。
「何ですか!?」
「一つ目は、片道切符。」
長が、静かに説明を始める。
「一度きりしか使えないが、自分が一番想っている者の元へ、瞬時に移動できるものだ。」
「へー。」
じゃぱぱが興味深そうに見つめている。
「一番、想ってる者……。」
俺は、思わずその紙切れを見つめた。
「もう一つは、幻影マント。」
長が、薄い布を持ち上げる。
「被れば、姿を消すことができる。」
「え?S級レベルの最強アイテムじゃん!」
じゃぱぱが目を見開きまくし立てる。
「ただし――」
長の表情が、少し険しくなる。
「長く…そうだな、2時間、それ以上被り続けると、存在そのものが薄れ、この世から消えてしまう。まるで幻影だったかのように。だから、使い方には気をつけることだ。」
「なんだー、代償あるのか。でも、だとしてもA級レベルのかなりいい魔道具ですね。」
じゃぱぱが少し残念そうに言う。
「……それは、なかなか物騒な代物ですね。」
のあちゃんが、興味深そうにマントを手に取る。
「ありがとうございます、大切に使わせてもらいます。」
俺は、箱を受け取る。
「それで、うり。お前は今後はどうするのかい?」
「え?それは…」
うりくんが琥珀色の綺麗な瞳で俺の目を見てくる。
俺と違って綺麗な透き通った瞳に思わず見惚れた。
無意識に左目にかかる眼帯を指先で抑えた。
「たっつん?」
じゃぱぱが俺の顔を訝しむように覗き込んでくる。
「たっつんさん、俺もついていっていい?」
「……もちろん!」
「一緒に行くのかい。」
お婆ちゃんが、うりくんを見て微笑む。
「……うん!たっつんさんとは運命共同体だから!!」
「ふふふ。その運命、俺は未だに理解できてへんけどな。」
「そのうち分かるようになるよ、きっと!!」
うりくんが、にっといたずらっぽく笑った。
こうして。
俺たちのパーティに、うりくんが加わった。
――そして、片道切符と幻影マント。
二つのアイテムを手にして。
旅は、また一歩、先へと進んでいく。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
次回はオレンジ髪のあの子。
次回予告
「――やあやあ、可愛いお嬢さん。」
「誰が、俺のたっつんに触っていいって言った?」
「――いい加減にして。」
「……あんた、デーモン?」
「……ありがとう。これは、大事な人からもらったものなの。」
その声は、さっきまでとは少し違う響きだった。
……どこか、寂しそうな。
次回 第8話 ヒマワリのような
コメント
2件
書き忘れてたんですけど、「片道切符」は本家様の恋愛人狼に出てくるアイテムを参考にしました!
めっちゃ良かった……!😭💕 タイトルの「ロマンチスト」、今回のシリアスな空気と戦闘シーンの中で、たっつんの心の弱さとか繊細さを引き立てててエモかったよ…。 うりくん新メンバー加入おめでとう!片道切符と幻影マントっていうワクワクな新アイテムも出てきて、今後の展開に期待しかない…! たっつんのトラウマ描写、ちゃんと地続きで書かれててリアルだった〜。次回の「ヒマワリのような」も絶対読む!ゆきさん毎回ありがとう!🌸