※注意※
百合
・◇ ・◇・
「月が綺麗ですね、部長」
「…そうね、秋は空気が乾燥して透明度が高くなるからね」
なんでもない、という風に知識を教えてくれる部長が好きです。
覚えていますか?初めて会った日のこと。その日も貴方は笑顔が綺麗でしたね。
・◇・◇・
「水藍、早く志望校を決めてしまいなさい!」
中学3年の晩夏。
中学3年と言えば高校に向けての受験シーズン真っ只中なのだが私は志望校が見つかっていなかった。そのため私より母が焦っていた。
「そんな焦っても決まらないって笑」
母をなだめているがこれでも私も焦っている。仮にでも決めたら良いのだが適当だけは嫌なのだ。
「んー…じゃあここにする」
「….優縁高等学校?!?!」
「何か問題でも??」
言葉通りの上に本気で顔が疑問符を浮かべていた。
「水藍…いくら決まらないからってここは偏差値高すぎよ」
「だーいじょうぶっ!公立だからお金はモーマンタイ!」
「私は偏差値の話をしているのよ」
優縁高等学校。県内で様々な公立高校が存在する中で偏差値は堂々の1位を叩き出す。単純に賢いだけでなく運動面はもちろん、社会に呑まれない人材を創り出すことを心がけている。
そのため、ポッとでの人間が簡単に合格を掴み取れる高校ではないのだ。
が。それでも、言った。夜舞 水藍と言う名の少女は。
志望校が決まったからと言ってすぐ勉強を始める訳では無い。
面接で聞かれるであろう志望理由を用意するためにオープンスクールに行かなければならない。嬉しい事に一週間後は優縁高等学校のオープンスクールの日。通常であれば長期休みで行われるはずだが…暇な日がないのだろう。
「そろそろ行くわよ」
「はーい」
志望校が決まると不思議と勉強に身が入るものだ。
今まで真面目にやらなかった事により内申はボロボロだが…。
まずは受かればいい。
「公立って言ってたけどなんでこんなに豪華なんだろうねー 」
「豪華と言っても校舎や敷地面積は平均ぐらいでしょ?」
ただ思ったことを口に出しただけなのに しっかり答えてくれるMyMother。好き。
「いやー、話が長かった長かった」
「しょうがないでしょ。大切なことなんだから」
説明というものは重要だが面倒だっ。
何から見に行こうかな、って言っても授業を回って部活動見学をするだけ。
時間帯的には授業しか見れないし。
もし入学したら今の1,2年生が先輩になるから雰囲気見とこうかな。
「……..授業大変そうだった」
「止める気になった?」
「それは、無い」
授業見学の感想。授業が大変そう。以上。
もう息が詰まるし帰ろうかと考えたところ声をかけられた。
「こんにちは。もし良かったら天文部、見ていかない?」
流されるように来てしまった。
いや、1つぐらい見ておいた方が良いという気持ちからだ。
流されてない。私は流されてない。
「…昼過ぎなのに見えるんですか?」
素朴な疑問を口にした。答えられず困ればいい、とさえ思いながら。
しかし、何事もないかのようにニッコリ微笑んで
「太陽の光って強いでしょ?だから星が見えにくいだけなの。
望遠鏡で見れば見えるわよ。」
望遠鏡を覗き視界にはしっかりと星が映っていた。
「…きれいですね」
「でしょ?」
理解して貰えた。そう言う嬉しさが顔に滲み出ていた。
(星が)きれいですね。
いいえ。
(貴方が)きれいですね。
「私の名前は風宮 月。
ここに入学したらぜひ天文部に。」
・◇・◇・
桜の蕾が開き出す4月。
誰よりも早く門をくぐり
入学式が終われば誰よりも早く天文部に行く。
「初めまして、こんにちは」
受験を終えるまで、貴方の事だけを考えていました。
・◇・◇・
風宮 月 ×夜舞 水藍
▹▸続く