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「読唇術ってすごいね」 そう言われたとき、胸の奥がじんわり温かくなった。努力してきたことを、ちゃんと見てもらえた気がした。
私は聴覚障がいを持っている。 1歳のときに感音性難聴だとわかり、それからずっと“音のない世界”で生きてきた。今は補聴器をつけて生活しているけれど、補聴器は“音を大きくするだけ”の機械。どんな音なのか、何を言われたのかまではわからない。だから普段のコミュニケーションは、筆談や音声読み取りアプリ。
そして“読唇術”。 口の動きから言葉を読み取る、あの技術だ。でも、読唇術って万能じゃない。 相手がマスクをしていたり、早口だったり、横を向かれるともう全然わからない。 コロナ禍のときは特にしんどかった。 買い物に行くのも怖かったし、アプリを出したり筆談をお願いするたびに「迷惑かな」と思ってしまった。
それでも最近は、聴覚障がいへの理解が前よりずっと広がった気がする。 理由はわからないけれど、助けてくれる人が増えた。 それだけで世界が少し優しく見える。
読唇術は、私にとって“人とつながるための大切な橋”。 これからもこの技術を使いながら、いろんな人とコミュニケーションしていきたい。