『mad in love』
これは僕ら2人の日常の物語
仕事終わりの送迎車の中。
窓を見れば空には無数の星が浮かんでいる。
時刻は午前0時をとっくに過ぎており、 街は深い眠りにつく頃。
ありがたいことに連日お互いに仕事が続いていて、前ほど頻繁に会えなくなっていた。 特にここ数日は、直接言葉を交わせていないくらいに忙しかった。
蓮も眠ってしまっただろうか。
車に揺られながら静かに目を閉じれば、浮かぶのは蓮のくしゃっとした可愛い笑顔で、それだけで奨の心は満たされ、優しく口角が上がる。
最近はあの大好きな笑顔も見られていない。
奨はおもむろに携帯を取り出し、蓮にLINEを送ってみる。
“もう寝た?”
送った文字を見て、画面を指でそっとなぞる。
既読にならないその文字をじっと眺めながら、もう寝てしまったかな…と小さくため息をつく。
蓮だって仕事で疲れているのは分かっている。それに俺たちの関係だ。既読にならないからと言ってどうってわけでもない。
ピコン
突然鳴った通知音に慌てて画面を見た。
まるで数年前に片思いをしていた時のように、胸がドキドキと早くなるのを感じる。
“起きてるよ。仕事お疲れ様”
いつもの聞き慣れた言葉なのに、蓮に言われるとどうしても特別な言葉に見えてしまうのは、きっと奨がまだ恋に落ちているからだろう。
“もう着くの?”
“まだかかりそう。起こした?ごめんね”
“ううん。へーき。電話する?”
蓮から珍しく電話の誘い。
普段の電話といえば、一言「やろう」。何のことかは言わなくてもわかるし、それだけで十分だった。でも今は、ただ奨と話したいと言う意味だと言うことも、言わなくても分かった。
断る理由がなく、一度咳払いしてから携帯を耳に当てた。
プルルル…
🦊「奨くん?お疲れ〜」
🌺「蓮もお疲れ様。電話とか珍しいね。なんかあった?」
🦊「何もないんやけどさ、奨くんが話したいかなと思って」
そう言えば、人の心を読むのが得意だって言ってたな…なんて思いながら、電話越しの恋人の声に胸を高鳴らせる。
蓮には何もかもお見通しだったってわけだ。
でも、奨は知っている。
こう言う時の蓮も、何か話したいことがあるんだということを。
🌺「話したかったよ。すぐにでも会いたいよ蓮」
🦊「な、何を言いよんの//」
🌺「ふふw」
照れくさそうに笑う蓮がまた可愛くて、仕事の疲れなんてすぐに吹っ飛んでしまう。
🦊「俺も会いたいよ//」
蓮も自分と同じように感じていてくれたと知ると、余計に胸が痛い。
人を好きになったら、恋に落ちたら、 こんなにも胸が痛くなるものだっただろうか。
しかし、この幸せを知ってしまったら、蓮がいない世界には、二度と戻れないのだろう。
息が止まりそうなくらい、こんなに愛おしいと言う感情が溢れてしまうのも、相手が蓮だからだ。
🌺「運転手さん、もう少し早く帰れますか?」
早く帰ってこの手で、この腕で、蓮を抱きしめたい。そして、この気持ちを伝えよう。
そう心に決め、 この幸せがいつまでも続きますように、と空の星に 願うのだった…
コメント
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うわん好きすぎる