テラーノベル
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黒 透 。
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家へと近づくたびに、あたしは離れがたさを誤魔化すように彼にぴたりとくっつき、 出来るだけもっと長く一緒にいれるようにわざと歩くペースを落とす。
「…んだよ」
そんなあたしに気付いたのか、 イザナは無愛想な様子であたしに言葉を投げた。 彼の耳元で花札の耳飾りがカラカラと揺れて、同じようにあたしの心も揺らぐ。
そうしている間に、とうとうイザナの足があたしの家の前で止まり、 あたしの足も止まった。 気持ちがぐしゃぐしゃになって、言いたいことややりたいことが上手く思い浮かばず、あたし は彼の腕の中で小さく唸る。
その瞬間、幼子をなだめるような手つきでイザナの手が私の頭を撫でた。
「…オマエさぁ、」
「そんなに嫌ならもうオレん家住めばいいだろ」
呆れと優しさを半分ずつ混ぜた声で、 イザナが短くそう言う。
そのままあたしの手首をギュッと掴んで、来た道を戻ろうと体の向きを変えた。
その一瞬の動作に 「またイザナのところに戻ろうかな」という甘い考えが脳裏をよぎって体を流れに任せようとしたその瞬間。
『……っ!!!』
頭の中で、自分の母親の姿がハッと蘇り、鋭く心に引っかかった。
いつも意味不明なことで怒って、半狂乱になって叫んで、あたしを殴りつけてくるおかあさん。
そんなお母さんだけど、 でも、 優しいときもあるの。
「○○ちゃん」って優しくあたしの名前を呼んで、 泣きながらあたしに縋り付いてくるときもあるの。
たしかに怒ってる時が多いけど、だけどあたしに優しくしてくれるときだって本当にあるの。
そんな、その日の気分で子供を都合よく扱うようなおかあさんが大嫌いだけど、離れたいけど。
『ごめん、』
そう簡単に捨てられない。
そう言って、逃げるようにイザナから体を引いて、 反射的に彼の手を振り払った。
その瞬間、 時間が一瞬だけ途切れて、痺れるような感覚だけが手に残った。
そんなあたしを見て、 イザナは眉を僅かに歪ませ、不機嫌を隠す気もなく言葉の代わりに視線で不満をぶつけてきた。
『あ、あたしも出来るならそうしたいけど…』
少し俯きながら小さく、「おかあさんが怖いから…」と付け足し、気まずさを和らげるように、口元だけで笑う。
『またねイザナ!だいすき!』
腕に僅かに残るイザナのぬくもりを引きずるように、私はゆっくりと自分の部屋へと歩いた。
指先に力を込めて、慎重に扉を動かした。
鼻を刺すようなアルコールと煙草の匂いが部屋全体に広がっている。
「……何?帰ってきたの?」
酒焼けしたその声に頭がぐらっと揺れた。
フォークやカッターナイフなどで滅多刺しにされた子供用のぬいぐりみ、割れてぐちゃぐちゃになった写真立て、錆びて黒くなってきた結婚指輪や、まだ少し中身が残っているであろう大量の酒の缶が無造作に放り捨てられている床の上に、 おかあさんはぽつんと座っていた。
光の欠片もない真っ暗な部屋 の中で、隈や涙の跡がんだ母の目があたしに向く。
「なんで今帰ってくるのよ…気持ち悪い」
アルコールで擦り減った声が、やけに生々しく空気を震わせた。
「…あんたなんか出来たせいで、産まれてきたせいで、 あの人に捨てられちゃったじゃない!!!」
「アンタがいなければ、…!」
半狂乱になってそう叫び散らかす母親にひゅっと息を止めていると、不意に血が一直線に飛んできて、避ける間もなく視界の端でガシャンと砕けた。 わけも分からず、とりあえずいつもみたいに「ごめんなさい」 と紡ごうとして口を動かした瞬間、口の中の切れたところがじくっと痛んだ。
しくじったな。
今日はダメな日だったらしい。
「せめて男の子だったらよかったのに」
言葉が、 血が、 涙が。 床に飛び散って、 あたしを濡らした。
「アンタなんかが産まれたせいで……」
ぐしゃぐしゃに絡まって目の前に垂れた前髪の隙間から見える母の顔は、いつも通りの怒り顔で、こらえていた涙がぽとりと落ちた。
親に虐i待されている子に多い「親から離れられない」「殴られるけど頼られたら無視できない」っていう依存?をがんばって文字で表現してみたんだけど伝わるでしょうか?ᵕ̩̩_ᵕ
ちなみにあたしは親に依存なんてしてません🎶何があっても何を言われても絶対に見捨てます🎶
たぶん物語でまた説明すると思うけど一応夢主ママが夢主を虐i待する理由と経緯⬇
①夢主ママと夢主パパが出会う
②夢主ママと夢主パパが付き合う
(結婚はしていない)
③夢主ママが夢主を妊娠する
④夢主ママがそれを夢主パパに伝えるが、その次の日に夢主パパが失踪。連絡が取れなくなる。(行方不明っていうか、夢主ママの妊娠の責任を取りたくなくてほかの女のところに逃げた。つまりクズ)
⑤夢主ママメンタル崩壊
⑥お腹にいる夢主を殺す勇気も捨てる勇気もない+堕ろすお金もなくて仕方なく夢主を出産、頼れる人もおらず夢主と夢主ママの二人暮し開始
⑦最初は夢主のことを愛そうと思ったが出産の疲れ、一人で育てていかなければいけないという責任感からくるストレス、夢主パパに捨てられたトラウマで 夢主に八つ当たり
⑧何人かいい感じの男の人との交際するか、「子供(夢主のこと)がいる」と言うと毎回逃げられるからまたもや夢主に八つ当たり。これを繰り返している。
⑨仕事や男の人とのデートで夢主と暮らしている家に帰ってくる日が少なく、帰ってくる日は大体男の人に捨てられたとき。そして夢主に八つ当たり←今ここ
みたいな感じ。
「フォークやカッターナイフなどで滅多刺しにされた“子供用のぬいぐりみ”」→夢主を産んだばかりの夢主ママが昔、夢主のために買った唯一のプレゼント(ぬいぐるみ)。
「ぐちゃぐちゃになった“写真立て”」→夢主ママと夢主パパのツーショットが入っている写真立て
「錆びて黒くなってきた“結婚指輪”」→夢主パパが昔夢主ママにプレゼントしたもの。
コメント
2件
伝わりました! 見てる時に過去がこうなのかなーと考えたのが全手当たっていたので凄く分かりやすかったです! 次回も楽しみにしてます!