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オレンジタイフーン
50
極限状態に陥った影人の額からは緊張のせいで汗がダクダクと滝のように次々と噴き出してくるのだった。
ギュッと力強く握り締めている掌にも汗がベタベタとしている。
頬にあたる風も生温く感じられる。
鼓動も幾らか速くなっているのが分かる。
「へへへへッ…ヤバイ、本気でヤバイぜッ、こいつは!?
なんてこったい…じいちゃんに朱雀の能力を一時的に封じ込められていたんだった…」
額のベッタリとした脂汗をグイッと拭うと…そんな危機を乗り切る為に必死で活路を見出だそうする影人である。
そんな影人へとフラフラになりながらも一生懸命に羽をパタパタとはばたかせて、今にも墜落しそうな影蔵の念神体…極楽蝶の蝶ちゃんが近づいてくるのであった。
「ん~~ッ!?
その虫っころ、まだ生きてたのか
なんだ…作戦会議でもするのか?
いいぜ…少し時間をくれてやる
フハハハハハッ…あがけ、あがけェェッ」
その様子を見ながら羅刹が余裕たっぷりに影人に声を掛ける。
もうすぐ傍までフラフラと近づいてきている蝶ちゃんに影人は優しく語り掛けた。
「あ、あ~…え~と、はじめまして、君は念神体なのかい?
ハッ、ああ…そうか、じいちゃんの念神体だな…」
蝶ちゃんに向けて影人は声を掛けると蝶ちゃんは不意に気が抜けたのかのであろうか。
突如として脱力し、重力に抗えず…落下傘のように下降していく蝶ちゃん。
それを地面に激突する直前にひょいと器用にすくい上げると影人は自分の肩に…ちょこんと座らせてあげるのであった。
蝶ちゃんはつぶらな瞳をパチクリさせながら…今にもフッと消えてしまいそうな心許ない灯火みたいな意識を保ちながら影人へと語り掛けるのだった。
『あなたが、か、カゲトちゃんだねッ…
てへへ~ッ…
はじめまして~…あたしがカゲゾ~の念神体の蝶ちゃんだよッ…
なるほど…なるほどね…
やっぱりだよぉ…小さい時のカゲゾ~にすご~くにてるよ…
ねぇ…おねがいカゲト…朱雀様のちからを…心を…感じてあげてね…
そしたらね…き~っとね、朱雀様はちゃんと応えてくれるから………
だから…だからね…恐がらないでね…
朱雀様の力はね………
優しい心と勇気があれば、あなたの大切な人をまもる力になるからね…
だいじょうぶだよッ…
きっとね…きっと…カゲトなら…だいじょうぶだよ…
や……く……そ…………く………だよ……ッ…』
最後の力を振り絞るように…影人へと語り掛けた。
今、伝えたかった言葉を言い終えぬうち…その場ではたりと倒れてしまい蝶ちゃんの念神体が透けていくように明滅を繰り返して、徐々に輝きを…色を失って消えていくのであった。
「お…おいッ…どうした………
なんでだ…なんでだよ…
せっかく会えたばかりで死んじまうのかよ!
おい…しっかりしろ~ッ!
蝶ちゃん~~ッ…!」
叫び声と共に…頭の片隅に棘が突き刺さったみたいにチクリとした疑問が浮かぶ。
そこで…パッと気付いた事が影人にはあった。
それも出来る事ならば、一番考えたくない最悪な事態である。
「………はっ!?
もしかして…じ、じいちゃんもヤバイのか……」
バッと後ろへと振り返ると竹りんと梅ちゃんが瀕死のじいちゃんに人工呼吸と心臓マッサージを施しているでは無いか。
その近くには携帯電話を片手に明らかに動揺を隠せずにオロオロとしている松っつんもいたのである。
そんな緊迫した状況に相応しくない下卑た笑い声が聞こえてくる。
笑い声の主………
それは羅刹だった。
唾を飛ばしながらケタケタと愉快そうに笑っている。
「ファハハハハハハ!!
なんだぁ~ッ…あのジジィ、アハハ…
もう…くたばっちまいやがったのかッ…
フフフ…呆気ないねぇッ、ハハハ~…弱い弱過ぎだぜ!!
本当にあの程度で能力者なのかよッ!!
フハハハハハハ~!!!!」
その瞬間…感情の糸がプツンとちぎれて爆発した!
激情が心の崩壊を招く程に怒りのメーターは振り切れんばかりに頂点に達していた。
自我さえ無くした、その時…影人には…ある異変が起きていたのだった。