テラーノベル
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❕注意❕
・刀剣乱舞の二次創作です。
・男主です。
・凛夜くんの弟くんが出てきます。
・読者様のキャラの解釈と違う場合があります。
・以上のことが大丈夫な方はこのまま読み進めてください。
初陣から十日程経った日の昼、以前より少しだけこの本丸は賑やかになっていた。
庭では、短刀や脇差たちがせっせと雪だるまをを作っている。俺はその様子を縁側から眺めていた。
「主さん見てください!大きいのができました!」
達成感に満ちた顔で俺の手を引くのは堀川だ。周囲を小さな雪だるまが取り囲んでいる。
「これ、僕が作ったんです!」
と、そのうちの一つを示しながら五虎退が言う。「綺麗だな」と褒めると淡黄色の目を輝かせ、満面の笑みで「ありがとうございます!」と、喜ぶ。五虎退の頭を撫でていると、
「そっちだけずるいです!こっちも見てください!」
と、鯰尾が手を引く。そこには大きなかまくらができていた。中には骨喰が居て、
「暖かいぞ。入るか?」と、手招きをする。
「じゃ、失礼」
骨喰の空けてくれたスペースに座る。彼の言ったとおり、中は暖かかった。
この大きさなので、さすがに中も広い。成人男性があと5人は入れるだろう。なんてことを考えていると、
「あ、いた。近侍さんが呼んでたよ」
と言って、遊びに来ていた弟が呼びに来た。
一度現世に帰った時、どうしても行きたいと言うので連れて来たのだ。
「ていうか兄さんそのままで寒くないの?風邪ひくよ」
「大丈夫。中は思ってるより暖かいし」
そう言って立ち上がると、灯夜は呆れたように息をつく。
「はぁ。ほんとに風邪ひいても知らないからね」
「はいはい」と適当にいなしながら中へ戻る。
その途中、庭の方から賑やかな声が聞こえてきた。どうやら雪合戦が始まったらしい。短刀たちの小さな悲鳴と笑い声が交錯し、脇差がそれを宥めつつも、どこか楽しそうに混ざっている。
「平和だなあ」
思わず零すと、隣を歩く灯夜が少しだけ表情を緩め頷く。
雑談しながら執務室に向かう。執務室の扉を開けると、山姥切が書類の整理をしていた。
灯夜と別れ、中へ入る。
「どうした?なんかあったか?」
と聞きながら山姥切の横に座る。
「主、これなんだが…」という言葉と共に渡されたのは
『各本丸、監査のお知らせ』
と書かれた紙だった。そこには、
『各本丸の状況を把握したいため、監査官を一名派遣するので、都合の良い日を報告されたし。』
というようなことが書いてあった。そういえばこんのすけもそろそろ本丸監査の時期だと言っていたかもしれない。
「そうだな…」
あまり早くても準備ができない。かといって遅すぎると俺が忘れてしまう。
「…一週間後くらいが妥当か」
そう呟くと、山姥切も、
「まだ刀剣の数も少ないし、今のうちに見てもらった方が楽だろう」
と言うので、一週間後に決める。
日付を書き込み、返送用の書類をまとめる。紙を整える音だけが、執務室に静かに響いた。
ふと顔を上げると、山姥切がこちらを見ていた。
「……主、緊張しているのか」
「顔に出てる?」
「少し」
苦笑して肩をすくめる。
「まあな。初めての監査だし、何を見られるのか分からない」
「だが、主はちゃんとやっている。と、俺は思う。写しの言葉に説得力があるかは分からないが」
その言葉に、胸の奥が少し軽くなる。
「ありがとう。そう言ってもらえると助かる」
再び、紙の擦れる音が室内に響く。
しばらく作業し、粗方片付いたところで、休憩がてら庭の様子を見に行く。
庭には、立派なバリケードが雪で築かれていた。
「よく作ったな、これ…」
半ば感心しながら皆の様子を見守っていると、
「こりゃ驚きだな!光坊!」
と、鶴丸と燭台切がお茶を持ってきた。
「隣、いいかい?」と、燭台切が聞いてきたので、頷いて隣を空ける。
もう一度庭を見ると、堀川たちが作った大きな雪だるまに鶴丸がいたずらをしていた。
雪だるまの頭に、いつの間にか用意していたらしい手拭いを巻き付けているのが見える。
どうやら鉢巻き代わりにするつもりらしい。
「……あれ、怒られないか?」
思わずそう呟くと、隣の燭台切が肩を竦めて苦笑する。
「ほどほどなら大丈夫だろう。ほら、もう気付いたみたいだよ」
案の定、堀川が振り返り、雪だるまを見て一瞬きょとんとした顔をした後、ぴしりと固まった。
「鶴丸さん!!」
その声を合図にしたかのように、短刀たち-五虎退、今剣、それと、いつの間にか加わっていたらしい信濃-が一斉に動く。
次の瞬間、今まで鯰尾達と雪合戦をしていたことも忘れ、鶴丸への攻撃が始まる。
「おっと、見つかったか!これは想定外だな!」
軽やかにかわしながらも、結局は数の暴力に負け、頭から雪まみれになる鶴丸。
それを見て、骨喰が小さく息を吐いた。
「……やはり、こうなったか」
庭には笑い声が溢れ、さっきまでの静けさが嘘のようだ。
「はは、賑やかだなぁ」
いつの間にか縁側にいた三日月が茶を飲みながら言う。
「ああ。……監査官が来る時も、こんな空気だといいんだけどな」
ぽつりと零した言葉に、三日月は一瞬だけこちらを見てから、静かに微笑んだ。
「大丈夫だろう。ありのままの本丸を見てもらえばいい。主が無理をしていないことは、皆が一番よく知っているからなあ」
その言葉に、胸の奥で何かがほどけるのを感じた。
ふと見ると、縁側の端に灯夜が立っていて、庭の騒ぎを眺めながら小さく笑っている。横にはいつの間にか抜け出したらしい、骨喰がいる。
「……いい場所だね、ここ」
そう呟く横顔は、現世にいる時よりも、少し柔らかく見えた。
そのまま二人で話し始めたのでそっとしておく。
雪合戦はしばらく続き、やがて、短刀たちは息を切らして雪の上に座り込む。
日が傾き始め、庭に伸びる影が長くなっていく。
「暗くなってきたし、そろそろ終わりにしろよ〜」
庭にいる男士たちに声をかけ、夕食の準備をしに厨へ向かう。
平和で、穏やかで――
その光景を見て、思う。
この本丸ならば大丈夫、と。
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