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「はッ、はッ、はッ…ッ!」
オレ・花垣武道は焦っていた。
いやもう、過去の自分が見たら驚くほどにに焦っていた。
今までぐーたらしていた人生だったが、オレはこの時だけは本当に焦りまくっていた。
(逃げないと……!)
今、彼────マイキー君は外出中だ。
これは千載一遇のチャンスだ。
オレは何とか監視の目を撒いて、オレは逃げてきた。
しかし、オレは今まであの監禁部屋から出たことがなかった。
スマホも取り上げられて、連絡手段も断たれた。
曲がり角に当たる度に、自分の勘で曲がっているけれど、同じところを回っている気がしてならない。
「はッ、はッ…………あ!」
オレはやっと階段とエレベーターを見つけた。
本当はエレベーターに乗りたいが、帰ってきたマイキー君と鉢合わせになったら困る。
渋々オレは、階段を駆け下りた。
その姿が、廊下に設置された監視カメラに写っていることも知らずに。
「──── タケミっち……?」
帰ってきて、いつも通り部屋の扉を開けたら、そこには最愛の人がいなかった。
隠れているのか?
しかし、何処を探しても見つからない。
(逃げた……、のか?)
俺は唇をギリッと噛んだ。
血が出ているが関係ない。
すぐに、スマホを取り出して電話をかける。
「…ココ。タケミっちが逃げた」
それだけ言って、電話を切る。
タケミっち。
お前は俺を裏切るのか?
何が駄目だったんだ?
望むもの全てを与えたし、不便なことなんて何一つ無かったはずだ。
苛立ちと怒りで、ガンッ、と椅子を蹴り飛ばす。
大きな物音を立てて椅子は吹っ飛んだ。
「……絶っ対ェ、逃がさねえから」
俺はすぐに監視室の方へと向かった。
待ってて、タケミっち。
俺がすぐに迎えに行ってあげる。
俺がいないと生きていけないように、薬漬けにしてやる。
依存させて、依存させて、死ぬまでずっと愛し合おう。
いや、死んでもか。
きっと、優しいタケミっちは天国行きで、俺は地獄行きだから、
俺がタケミっちを地獄に引きずり込んであげる。
そうしたら、ずっと一緒だろ?
永遠に、俺はお前を、お前だけを愛し続けてやるから。
だから、戻ってきて。