けたたましいサイレン音が建物中に響く。
逃げたのがバレたのか?
思いのほか、早く気付かれてしまった。
さっきから、ずっと階段を下りているが一向に出口が見えない。
薄暗い階段だからあまり人が寄り付かないのか、今のところ誰とも鉢合わせていない。
カンカンカンカン…、と嫌にオレの足音が響く。
「──── タケミっち ────」
ひゅぅっ、と息が空回りするように感じた。
思わず後ろを振り返る。
声の主。
嫌というほど聞いてきた声。
逃れてきた声。
少し離れたところに、『彼』は立っていた。
白い髪の毛も、未だに残っている目のクマも、何を考えているのか分からない無表情も。
何もかもそのままで『彼』は、マイキー君はいた。
「ねぇ、タケミっち。散歩は楽しかった?」
「…」
「何処に行こうとした?何か欲しいものがあったら遠慮せずに言ってくれれば良いのに」
「マイキー君」
「ん?どうしたの、タケミっち」
マイキー君の目には、光が無かった。
きっと怒っている。
今は運がいいだけで、オレは殺されてしまうかもしれない。
でも、彼はここにいるべき人間じゃない。
「オレを…、家に返してください。皆のところに、返してください」
オレは精一杯震える手を隠しながら、マイキー君を正面から睨み付けた。
彼は、数秒間無表情で止まっていた。
すると、急に口角を上げて笑って見せた。
「……じゃあさ、隠れ鬼しない?」
いつの間にか、サイレン音は止まっていた。
あれは、オレが逃げたことに対する警戒音じゃなかったかもしれない。
オレに早く逃げろと警告する音だったかもしれない。
一対一のゲームが始まった。
コメント
5件
小説でこの圧迫感はマジで凄いです。訳:マイ武最高
大スコ… マジ続き期待しまくってます、 ガチ…天才?
え?何この物語………( '-' )スゥーッ↑↑↑↑↑ 好きぃィィ!え!?マジでピンポイントで好きなんだが!?はァ…主さん……ありがとうございます……