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その日、元貴・涼架・混斗の3人は、地方で のライブだった。
朝早くに家を出るとき、いろはは少しだけ 寂しそうに笑った。
「がんばってね」
「いろはも、がんばらないでいいからね」 「すぐ帰ってくるから、何かあったらすぐ 電話してよ?」
3人とも、何度もそう言って、いろはの頭を 撫でて出かけていった。
彼らは知らなかった。
–その数時間後、地獄のような出来事が起 きるなんて。
午後3時。
いろははひとり、リビングでぼんやりテレ ビを見ていた。
インターホンが鳴ったのは、そのときだっ た。
モニターには、マスクをした見知らぬ女の 子。
制服–学校の子…..? どこかで見た顔だっ た。
いろはが戸を開けようと近づいた瞬間、
「開けなよ、いろはぁ」 声のトーンが変わった。
ドアがーー蹴破られた。
「…..え?」
一瞬、何が起きてるかわからなかった。
気づけば、数人の女子が部屋の中に入って きていた。
目が笑っていない。
携帯を構えて、動画を撮りながら、彼女た ちはこう言った。
「なに? 一人でお留守番? 可哀想~」 「兄ちゃんたち有名だからって、調子のん なよ」
「ほら、黙ってないで、泣けよ」
足が震えた。体が硬直した。声が出なかっ た。
次の瞬間–頬に鈍い痛みが走った。
誰かの拳が、顔を打った。 背中を蹴られ、転倒し、頭を打った。
「やっぱ弱っ。ねえ、撮れてる?w」
「元貴に送っちゃおうかな、この顔ww」
「うわ、血い出てんじゃん。キモいキモい wwJ
地獄。
声が遠くなっていく。視界がぐるぐる回 る。
心臓が止まりそうだった。
助けて。誰か–
「お兄ちゃん、来て……っ」
その直後。
ガチャ。 玄関のドアが開く音。
「…… いろは?」
元貴だった。
一足早くライブが終わり、強く感じた違和
感に突き動かされて、 予定を変更して新幹線で帰ってきた。
「…… 何やってんだ、お前ら」
室内にいた3人の少女が、凍りつく。 元貴の声は、怒りを超えて、氷のようだっ た。
次の瞬間には、湿斗と涼架も駆け込んでき た。
3人は一目で、床に倒れた血まみれのいろは を見つけた。
「いろはッッッ!!!」
病院のベッド。
意識を失ったまま、点滴につながれたまま のいろは。
兄たちは、その傍にいた。
元貴の拳は震えていた。唇を噛み締め、血 が滲んでいた。
「….. あと1分遅れてたら、死んでたって」
医師の言葉が、脳内で反Ỉされる。
涼架は泣いていた。顔を覆いながら、小さ く声を漏らしていた。
「守れてなかった…… こんなにも守るって決 めてたのに……」
湿斗はただ、じっといろはの手を握ってい た。
彼女の体温が、どんどん冷たく感じて怖 かった。
そして夜。
いろはの瞼が、微かに揺れた。
「……おに……い、ちゃん…….?」
その小さな声に、3人は一斉に顔を上げた。
「いろは!」
「ごめん、ごめんな、遅くなって…..!」 「大丈夫だよ、もう絶対に誰にも触れさせ ないから…..!」
いろはの瞳から、一筋の涙がこぼれた。
「…… こわかった…… でも……きて、くれて、 ありがと…..」
その言葉に、元貴は静かに、でも強く誓っ た。
「…..許さない。絶対に、誰一人逃がさな い」