細かな説明は1話にて説明しております。
前回と同じ、スノードロップの花言葉を中心にした小説です。
チャットの通知音が鳴った。
時計は午前2時14分。みんなもう寝てる時間だ。
何気なくDiscordを開いた。
そこに、短い一文が表示されていた。
【訃報】ドズル社・おんりーさんが、本日未明に永眠されました。
心臓の音が、一瞬で聞こえなくなった気がした。
何かのドッキリ? 違う。悪質なイタズラ? 違う。
文章はあまりにも整っていて、現実味がありすぎた。
指が勝手に震えていた。
おんりーは、静かなやつだった。
無口ってわけじゃない。
必要なことはちゃんと話すし、企画のときも的確。
でも、自分のことはあんまり語らない。
かといって、他人に興味がないわけでもない。
むしろ、
「みんなのこと、めっちゃ見てる」タイプだった。
「おらふくん、そこ、企画的にはアツいけどちょっとリスキーかも」
「……まあ、君らしいけどね」
一見、淡々としてるように聞こえるけど、
その裏にはちゃんと“優しさ”が詰まってた。
誰よりも気を遣うくせに、
誰よりも“気遣われるのが苦手”なやつだった。
ずっとそばにいたはずだった。
それでも、見落としてた。
いや――見て見ぬふりをしてた。
「最近寝てとる?」
「うーん…まあ、最低限はね」
「最低限って何時間?」
「3時間くらい……かな」
おんりーはいつもの調子で笑ってたけど、
声がちょっとだけかすれてたのを、ちゃんと覚えてる。
もっと踏み込むべきだった。
でも、
「おんりーのそういう距離感、壊したくないな」って
どこかで思ってしまってた。
それが今になって、一番悔しい。
葬儀のあと、ドズルさんから手渡されたUSB。
「……これ、おんりーが残したものみたいなんだけど。よかったら。」と。
中には一本の音声ファイル。
ファイル名は「snowdrop_01.mp3」
クリックすると、あの声が耳元にふわっと届いた。
「おらふくん……これが届いてるってことは、
もう、僕はいないんだろうな」
「ごめん。
多分、最後まで何も言わずにいなくなったと思う。
でも、それが僕なりの“気遣い”だった。
優しくされたら、たぶん…引き止められてたから」
「君は、僕のこと、ちゃんと見てたよね。
それが、ありがたかった」
「最後に見た夢は、みんなで笑ってる配信だった。
それだけで、十分だった。ありがとう」
「スノードロップが咲いたら、
ちょっとだけでいいから、僕のこと思い出して。
でも、すぐ前を向いてくれていいよ。
……その方が、僕らしいでしょ」
音声は、そこでふっと途切れた。
イヤホンを外したあとも、耳に残っていたのは、あの静かな声だった。
それからしばらく、時間の感覚がなかった。
SNSを見ても、動画を開いても、音がしなかった。
おんりーがいないっていう現実が、ゆっくりと、確実に、胸に沈んでいった。
雪が溶けはじめたある日。
なんとなく外に出た。
あいつと昔見つけた場所――
庭の隅の、石の近く。
そこに、ひとつだけ咲いてた。
スノードロップ。
白くて小さくて、でも、ちゃんと立ってた。
「……咲いたな、これ」
しゃがんで、指でそっと触れた。
「……なんで、おんりーは何も言わなかったんよ。」
風が吹いて、花がわずかに揺れた。
「もっと俺が言ってたら、変わってた?」
誰に聞いてるのかもわからなかった。
ただ、心の中がずっと叫んでた。
でも――
そのスノードロップは、黙ったまま、
まっすぐに春のほうを向いていた。
春の初め。
ようやくマイクに向き合えた。
動画の収録は、今までで一番静かだった。
でも、やらなきゃって思った。
おんりーが残した「最後のお願い」を、俺が繋がなきゃって。
カメラを見つめながら、何度か言葉が詰まった。
でも、絞り出した。
「おんりーは、たぶん最後まで“僕らしい”やつだった。
無駄に泣かれるのも、しんみりされるのも、絶対イヤだったと思う」
「……でも、俺は泣いた。いっぱい泣いた。悔しかったし、悲しかったし、何もできなかった自分が腹立った」
「けど、今は――ちゃんと前を向こうって思えてる。
おんりーが、そう望んだ気がしてるから」
「スノードロップって、冬の終わりに咲く花なんだよ。
どんなに寒い冬でも、ちゃんと咲く。
それって、すげーやん?」
投稿したあと、コメント欄には無数のメッセージが届いた。
「ありがとう」
「おんりーちゃん、忘れません。」
「この言葉に救われました」――
それを見て、初めて胸の奥が少しだけあたたかくなった。
季節は巡って、また雪が降る。
あの日のスノードロップの場所に、
今年もまた、小さな白い花が咲いていた。
風に揺れても折れずに、まっすぐ空を向いていた。
「……なあ、おんりー」
「お前がいなくなってから、まだ全部は慣れないけどさ」
「俺は、ちゃんと生きとるよ」
ポケットの中のイヤホンをぎゅっと握った。
「来年もまた、咲いたら話しかけに来る。
……だから、その時まで、ちょっとだけ待っててな。」
白い花は、静かに揺れていた。
あいつのように。
👏👏すばらし~!
すのーどろっぷやっぱりいいね!👍️👍️
では!おつら!✌!
コメント
2件
スノードロップってすげぇ!!!?✨ どっちの話も泣いた🥺