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北斗は踵をアレクサンダーに軽く食い込ませた



この真っ黒な雄馬は気位いが高く、戦争時代なら立派な軍馬になっていただろう



今は壊れた柵に足を挟まれた仔牛を助けるために、北斗はアレクサンダーに乗って現場に駆け付けた。仔牛は母牛を呼んで怒って泣き叫んでいる



北斗はアレクサンダーから飛び降りて、仔牛の後ろ脚を柵から抜いた



仔牛はまだ泣き叫んでいる



「よ~し・・・よし・・・血も出ていないし折れてもいない。もうこれに懲りたらママから離れるなよ!さぁっ行けっ」




ポンと仔牛のお尻を叩いた、弾けるように茶色い仔牛は母牛の所へ飛んで行った




仔牛の走り方を北斗はじっと見つめる、あの調子なら捻挫もしていないだろう、ホッと胸をなでおろした



アレクサンダーは気難しい性格のため、調教はもっぱら北斗ただ一人の役目だった



このアレクサンダーの気難しい性格を、自分と手らし合わせて好きだった



そして北斗を乗せても、あまり言うことを聞かず奔放な走りっぷりも、北斗によく合っていた




いつかこの馬が競馬レース場を疾走するのを見てみたいと夢に描いている



午後は少しアリスの様子を見に行こうと、スケジュールを開けていたのに



近いうちに、北斗の牧場の隣の村の土地を購入しようと、外国企業の視察団がやってくることになっていて



その視察団をどこに宿泊させるかで、商工会議所と近隣の牧場が揉めているのだ。なので北斗は午後にその話し合いに顔を出さないといけなくなった




最近ではこの辺もぶっそうだ、北斗は本気で領地の境界線に監視カメラを設置することを考えていた



成宮家の歴史は古い、先祖代々この土地に根づき、この土地を収めて来た近隣の住民のもめ事を収めるのも北斗の仕事なのだ




北斗がそんな自分をアリスが選んでくれたことを改めて考え直した



アレクサンダーに勢いよくまたがり、パドックで進みながら雲一つない空を仰ぐ




アリスには思いやりのある行動を心がけようと考えていた。アリスのために良い夫になろうと心に決めていた



彼女にはせめてそれぐらいの気遣いを受ける権利がある、こんな秘境にわざわざ身一つで来てくれたのだ



彼女を無事に守り、なるだけ満足してもらえるよう最善を尽くそうと思っていたのに。どんなことをすれば彼女が喜ぶかさっぱりわからない



お嬢様は普段何をしているのか想像もつかなかった




北斗はため息をついた





本当は・・・本人の口から望んでいることを聞くのが一番なんだけどな・・・




その時視界の端でなにかの動きをとらえ、北斗はそちらに目をやった



途端に心臓が口から飛び出そうになった




アリスだ!





アリスは馬に乗って草原を疾走している




髪を後ろになびかせ、馬の首の所で頭を低くして手綱にしがみついている




アリスと馬は弾丸のように、野山に突っ込んで行きそうになっている




鞍にまたがったアリスは、なんと勇ましく見えるものかと感慨するばかりだった




そしてあの馬は調教が終わっていない牝馬だ!





間違いない!あの馬はアリスを乗せて暴走している、制御が効かないんだ



アリスが危険だと分かった時、北斗の心臓は早鐘を打ち、呼吸は止まった




考えるより行動が先に出た




北斗はアレクサンダーの手綱を力いっぱい向かう方向に引っぱった



ヒヒーンと怒ったアレクサンダーが前足を大きく掲げる



北斗は渾身の力をこめてアレクサンダーの両腹を蹴った





「ハイッ!」





アレクサンダーは弾丸のように走り出した



鞭を持ってくればよかった、とにかく北斗はアレクサンダーにアリスを乗せた牝馬を追わせ、草原の土手を風のような速さで降った






アリスっっ!無事でいろ!!







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