今までもきっと、たくさんの人の心をプラスに変えて来たんだろう。
たくさん話して夜景を見ながらワインを飲んでいたら、少し眠くなってしまった。
「ちょっと飲みすぎちゃったかな……」
頭がフラフラした。
「もう休んだ方がいい」
悠人はそう言って、私をソファから立たせて、そのまま抱き上げた。
これはお姫様抱っこ――
軽々と私を持ち上げる悠人の力に驚いた。何だかすごく恥ずかしい。
「あ、私……重いですから」
「全然重くない。気にするな」
「……すみません」
「謝らなくていいからゆっくり休め。明日は、俺も午前中いるから」
私は悠人にベッドに寝かせてもらい、気を失ったみたいに一瞬で眠りに落ちた。
今夜は、悠人と2人だけの夢みたいな時間だった。
これは、現実なのか?
やっぱり……夢かもしれない。明日、目を覚ましたら……全部消えてなくなってるのかも。
次の日、私は悠人の呼ぶ声で目覚めた。
「おはよう、大丈夫か?」
「悠人……」
「穂乃果、起きれる?」
夢じゃなかったんだね……
目の前に悠人がいる。
まだ少しフラフラしたけど、私は背中を支えられてゆっくり体を起こした。
「ごめんなさい。私、酔ってしまったんですね。迷惑かけて……すみません」
「迷惑なんかじゃない。お酒、あんまり強くないんだな。俺が無理やり飲ませたのが悪かった」
優しい……
「はい、大丈夫です。着替えたらリビングに行きます」
「わかった」
私はすぐに着替えを済ませて部屋を出た。
「温かいミルク飲む?」
「嬉しいです。いただきます」
顔を洗ってからソファに座った私に、悠人がミルクを手渡してくれた。
1口飲んだらとても美味しくて、体がポカポカした。
「穂乃果?俺といる時は敬語はいらない。気を遣うのはやめてくれ」
「でも、悠人って呼ぶだけでも緊張するのにタメ口なんて……」
言いかけた私の唇に、先輩はいきなり軽くキスをした。その行動に瞬きもできなくて、目を見開いたまま体も固まってしまった。
悠人にとったら、キスは挨拶か何かなの?
慣れない私には、心臓が止まるくらいの衝撃なのに。
「あきらめた?」
ちょっと意地悪そうに微笑む悠人。
たまに子どもみたいな顔をして、時々見せるギャップにドキドキする。
「わかった。タメ口にする……」
「うん、いい子だ」
悠人は、優しく頭を撫でてくれた。
私、こんなに幸せでいいのかな……
いや、ダメダメ。
まだ完全に信じるのはちょっと怖い。
悠人は、着替えをするために自分の部屋に戻った。
今日は、私の美容院が休みの日。
夕方に、悠人と一緒にそこに行く予定。
オーナーに話をしてくれるって……
忙しいのに、私のために時間を作ってくれた。
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