テラーノベル
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⚠ドイツ×イタリアのカップリング表現あり
その夜も二人は静かにテーブルを囲んでいた。イタリアは視線を上げると、きちんとスーツを整えたまま座るドイツに気づき、ぽつりと呟いた。
「今日も、おつかれさまだね」
その言葉に、ドイツは曖昧に笑みを見せた。けれどその目はどこか遠く、なにかを言いたげにわずかに唇が開いていた。
「俺…さぁ………」
ドイツはそこで一度、言葉を切る。そして視線を逸らすと、苦笑まじりに頭を掻いた。
「あ゛ー……、やっぱいいや」
イタリアはその態度に一瞬戸惑い、それから気づかぬうちに心臓がひとつ強く鳴った。きっとそれは、問いただすべきではないこと。その一方で、それでも気になる感情がじわりと広がる。
雨音がまた、二人のあいだに流れる。
雨音が規則的に響く中、イタリアはじっとドイツの横顔を見つめていた。その口からこぼれかけた言葉の余韻が、まるで見えない煙みたいに部屋に漂っていて、イタリアにはそれがとても気がかりだった。
「…なにか言いたかった?」
さりげなく尋ねるイタリアに、ドイツは視線を伏せたまま、小さく肩をすくめる。
「別に、大したことじゃない。ただ…ちょっと変なこと考えてただけだ。気にしなくてもいい」
その答えはどこかぎこちなくて、イタリアにはますます気にかかる。でも、無理に聞き出す気にはなれなかった。 ドイツが言葉にするにはまだ早すぎるのだと、どこかで察していたから。
イタリアは手元のグラスに視線を落とす。その水面にぼんやりと、自分とドイツの影が重なって映る。
「ふーん、じゃあ気が向いたら話してね?」
軽い口調で言ったつもりだったが、どこか真剣さが滲み出るのをイタリア自身も感じた。
その言葉に、ドイツはふっと笑ったようだった。その笑みは普段よりも少しだけ硬くて、どこか痛みを隠すように見えた。
「そうするよ」
それきり二人は沈黙に戻る。だけどそれは気まずさというより、互いにどこか探り合うような静けさだった。
遠くから雨の音だけが届き、街灯の淡い光が窓枠に落ちる。その薄闇にひたりながら、イタリアはぼんやりと思った。
――きっと、今夜からなにかが少しずつ変わり始める。
そしてその気配に、イタリアはなぜか心地よささえ感じていた。
コメント
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