夜——。
静まり返った部屋の空気を破るように、みことが苦しそうに身を縮めた。
「……さむ……い……」
かすれ声に、いるまはすぐ反応し、体温計を見なくても状況を読んだ。
「悪寒か。……熱、これから上がるか」
寝具棚から毛布を一枚引き出し、ふわりとみことの肩にかける。
額の冷却シートはぬるくなっており、いるまは新しいものに交換しながら静かに言った。
「……しんどいだろうけど、落ち着け」
みことは涙目のまま、震える声で呟いた。
「……すち……すちに……あいたい…… すち……おいてきちゃった……」
そんな言葉をこぼすたびに、胸がひっくり返るように痛む。
いるまはその気持ちを理解しながらも、首を横に振った。
「泣くな。余計に体力持ってかれるだろ」
そう言って、みことの頬を軽く抓む。
しっかり指に熱が伝わった。
「い、ひゃっ……いひゃい……」
抵抗する力もなく、泣きそうな顔でいるまを見る。
「泣き止め。すちの前で泣いたら、あいつのメンタルも溶けんだよ」
みことは唇を噛み、苦しそうに頷いた。
その頃リビングでは、すちはひまなつの膝の上で泣き疲れて眠っていた。
小さくなった身体で、みことの名前を握りしめるように指を丸めて。
ひまなつとこさめは交代で背中を撫でていたが——
夜中、すちが突然ぴくりと動いた。
「……みこちゃ……? みこちゃ……どこ……?」
掠れた声で起き上がり、涙をぽろぽろこぼす。
「すち、すち。大丈夫。みことはいるまが見てるよ」
ひまなつが肩を押さえながら優しく説明する。
こさめも急いでティッシュを手に取り、涙を拭きながら声をかける。
「すちくん、夜だからね。今行ったらみこちゃん起きちゃうよ。 だいじょうぶ、ちゃんとそばにいるから……ね?」
すちはぐずりながらふたりの胸元に顔を埋めて、小さく泣いた。
「みこちゃ…………さびしい……」
らんは様子を見に寝室へ向かい、ドアをそっと開けた。
「いるま、どう?」
いるまは熱のあがり始めたみことの額に触れながら答えた。
「発熱の波が来てる。朝になってもこれなら病院行く。 喉も渇いてるみてぇだし、脱水も注意だな」
「……みこと、しんどそうだな」
「ああ。でも……すちに会いたいって泣いてた」
らんは重く息を吐き、腕を組む。
「どう転んでも、二人を会わせないわけにはいかねぇな…… ただし今みことの前にすち放ったら、どっちも倒れるからなぁ」
いるまは頷き、みことの寝汗をタオルで拭き取りながら続けた。
「このまま夜も付き添っとく。 お前はこさめとなつのケア頼む。あの二人もしんどいだろ」
「任せろ」
らんは静かにドアを閉め、ため息をつきながらリビングへ戻っていった。
夜はまだ長い。
みことの熱はじわじわと上がり、 すちはみことの名前を呼んでは泣き、 仲間たちは手分けをしながらその夜を支え続けていた。
コメント
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みんな仲間思い( *´•ω•`*)ダネ良いメンバーで幸せだろうね( ´˘` )