テラーノベル
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ヴァルガラの地に2人の乙女が対峙する。
片方は運命によって全てを諦め、ピリオドを求める者。
片方は運命によっておっさんと出会い、これから先70年くらいイチャイチャしたい者。
実に由々しき事態である。
莉子さんの戦闘動機の方がしょうもない事をどうやっても誤魔化せそうにない。
アリナ・クロイツェルは笑顔で告げる。
「莉子よ!! そなたは思わぬ拾い物であった!! 妾の最期の相手はあの逆神と言う男にしようと決めておったのだが」
「ふぇっ!? あ、ああ、相手って!! 何の相手ですかぁ!? わた、わたしだってまだなのに!! 急に出て来て……なんて大胆!! アトミルカの女の人って性に奔放なんですかぁ!?」
莉子さんはもう手遅れ。
我々は、これまで何度もそう確認して来たではないか。
覚悟だってしていたし、心構えだって出来ていたはずである。
では、このやるせない失望感は何か。
「ほんに面白き娘よ! 妾を前にして、それほどまでに自然体を保つとは!! その幼さでよくぞこの領域にまで到達した! 褒めてつかわそう!!」
「……また幼いって言ったぁ。ハッキリと理解しました!! アリナさん! あなたは敵です!! わたしの試練です!!」
「ほう。度胸は実に素晴らしい。バニングとて、妾にここまで直截な物言いはできぬぞ。して、何の試練であるか? さらなる力を求めるか?」
「決まってます!! ……愛の試練です!!」
「莉子。そなたの言っておる事がたまに理解できぬのは、妾が悪いのか?」
「なんで理解できないんですかぁ!! アリナさん、わたしの2つ上くらいでしょ!?」
ちなみにアリナさんは莉子さんのだいたい数百ほど年上である。
転生すると記憶がリセットされるため、本人も何年の時間を生きているのかは把握できていない。
ただし、見た目は20手前の美人な女子大生にしか見えない。
その上均等の取れたスタイルは莉子さんの追い求めるそれに近く、「絶対に男の子が好きな体形だよぉ!!」と無条件の敵意を向けるには充分な理由であった。
「まあ、良い。少しだけ煌気を解放しよう。その上で、まだ強気な態度が維持できるか。楽しみであるな。……はぁ!!」
アリナの煌気が3分の1程度解放される。
それだけで大気が震え、バニング治療中の六駆と久坂も思わず振り返った。
「なんちゅう煌気じゃ……。こりゃあ、ガチで次元が違うのぉ。ワシなんぞは近づいただけで致命傷じゃぞ」
「んー。確かに。既に僕の煌気総量のマックスに限りなく近い放出量ですねー。しかも、全然余裕そうですよ、あの子。恐ろしいなぁ」
そこに駆けつけて来たのは55番とザール・スプリング。
ザールは傷つき倒れ、呼吸もままならない師を見て苦悶の表情を浮かべる。
だが、それも一瞬。
自分の師は望んだ戦いで、誇り高き敗北を喫した。
ならば、悔いる事など何もないと、ザールは前を向いた。
「敵であるあなた方にこのような事を申し上げるのは筋違いも承知の上! ……ですが、どうか!! バニング様をお救いください!!」
「やれる事は全てやりますよ!! ところで、どなたですか?」
久坂が答える。
「10番じゃよ。このバニングの弟子っちゅうことじゃ」
「なるほど。よくお師匠が戦っている姿を見届けましたね! ご立派です!!」
ザールは26歳。
どう見ても未成年の六駆なのに、その言葉には重さを感じ「やはりバニング様がお認めになられた男だ」と納得した上で「お願いいたします」と再度頭を下げた。
「ボンバァァァァァァ!!」
「おいおい、ちぃと待て! ありゃあ8番じゃろが!! どがいして元気にしちょるんじゃ!?」
「ああ! 僕も莉子も攻撃の途中で戦うのヤメてましたから! ほら、久坂さん助けに行って、国協のじいさんぶっ飛ばしたところで!!」
「お、おお。そうじゃったか。で、デカいお主。まだ戦うっちゅうんか?」
8番は穏やかな顔で首を横に振ると、ポケットから怪鳥の照り焼きを差し出した。
「自分はもう戦えません! 2番様の戦いを見ていました! 感動しました!! さらに敵に手を差し伸べる紳士的な態度!! これをどうぞ!! 照り焼きです!!」
「ありがとうございます! いやー! ちょうどお腹空いてたんですよね!! あっ! 美味しい!!」
久坂は疲労困憊の中、煌気力場を構築し続けている。
が、この老兵はまだツッコミが可能。
「六駆の。お主、メタルゲルの外皮食うて腹ぁ壊したのに、ようもまぁ、敵から得体のしれん食い物出されて躊躇なく食べるのぉ?」
「美味しいですよ? あ、でも喉が渇いてきた! すみません! 誰かー。飲み物ってあります?」
8番が「あ、自分取ってきます!! ボンバァァァァァァ!!」と言って、瓦礫を粉砕しながらどこかへ走って行った。
アトミルカの残存勢力が割と善人ばかりで困ると言うのは、サーベイランスの向こうにいる南雲修一監察官の感想である。
◆◇◆◇◆◇◆◇
アリナは驚いていた。
彼女が驚くのは、実に数十年ぶりの事である。
「まさか、煌気放出を受けて表情ひとつ変えぬとはな。妾もいささかプライドが傷つくぞ」
「すごいと思いますよ! だけど、真の愛の前では愛なき力は無力なんです!!」
莉子さん、控えめな胸を張って宣言する。
ちょっと何言ってるのか分からないのはご了承いただきたい。
「ふふふっ。面白きよ!! では、攻撃を開始する!! これをどう受けるか! 莉子!! はぁ!! 『絶花』!!!」
アリナが手のひらから放ったのは、真っ白な花の形をした煌気弾。
花をモチーフに戦うのは、久坂剣友の『梅花』や塚地小鳩の『銀華』、さらに55番の薔薇属性と、久坂一門のイメージが強いが彼らのスキルは皆が華やか。
咲き誇る花を具現化するのに対して、アリナの『絶花』は色を失い今にも崩れ落ちそうな儚い花。
だが、内包している煌気は絶大。
特殊な効果などはなく、その巨大すぎる煌気で着弾したものを破壊し尽くし、最終的には消失させる。
アリナの死生観が如実に現れたスキルであった。
「たぁぁぁぁぁっ!! 『苺光閃』!!!」
ただし、莉子の扱う『苺光閃』も特注品。
なにせ、頭おかしいスキル使い一族の逆神家三代が知恵を絞って考案した、使用者の成長に合わせてどこまでも進化する苺色の巨砲。
『絶花』は苺色の閃光によって相殺された。
「ふ、ふふふ!! なんだ、そのスキルは!! 妾にも構造が分からぬ!! だが、この終わりを意味する『絶花』を殺すか!! あははは!! 愉快、愉快だ!!」
「たぁぁぁぁぁぁっ!! 『苺光閃』!!!」
生の終着点を見つけて愉悦に浸るアリナさん。
に、何の躊躇いもなく追撃をぶっ放す莉子さん。
「なんだ、なんだ!! 今の世にもおるではないか!! とびきりクレイジーな戦士が!! だがぁ! この程度で妾を倒せると思うてくれるな!! 『絶消』!!」
『苺光閃』が煌気による力業で抹消された。
これも初めての事である。
だが、莉子さんは手を緩めない。
「やぁぁぁぁぁっ!! 『苺光閃』!!!!」
「ええい! いくら強力なスキルでも連発すれば良いと言うものではないわ!! 『絶』……!?」
アリナの動きが一瞬だけ止まる。
『絶花』は右手、『絶消』は左手で発現される。
その左手がわずか1秒にも満たない時間だが、痺れて動きが遅れた。
「莉子。そなた、人の器に収まらぬ煌気を持っている事は認めよう。……だが! なんだその極大スキルの連射は!? しかも威力が増しておるだと!? 理屈が分からぬ!! よもや、そなたも妾のように無限の煌気を!?」
莉子さんは何度だって胸を張る。
愛を叫ぶときは胸からだと言うのが、恋する乙女の基礎教養。
「わたしにだって限界はあります!! けれど!! 愛の力には限界はありません!! 愛は無限なんですよぉ!!」
「……何という事だ。妾がハナミズキに囲まれておる間に、現世では理解不能な革命が起きておったとは」
初めて表情を大きく崩したアリナ・クロイツェル。
心中お察しするに余りある。
無限の煌気と無限の愛。
真に強いのはどちらか。雌雄を決する時は今。
コメント
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第496話、読み終わりました!もう、莉子さんが完全にブレイクしちゃってますね(笑)「愛の試練」とか言い放つあたり、彼女の純粋さと強さが同居してて、笑いながらも応援したくなりました。アリナさんの「無限の煌気」と莉子さんの「無限の愛」の対比、すごく好きです。ラストバトルなのに、どこか温かい空気があって、五木さんらしいなあと感じました。次も楽しみにしてます!
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