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第十四章
禍の降臨
―二つの影―
二人は雲の上から、巫女たちの姿を静かに見下ろしていた。
「……ずいぶん楽しそうですねぇ」
口元を緩め、妖しく微笑むその者は、一つひとつの仕草さえ艶めかしい。
「希望に満ちた顔というのは、どうしてああも美しいのでしょう……。壊して、苦痛で歪めた時は、もっと愛らしくなるのかしら……」
隣に立つもう一人は鼻で笑った。
「……興味ねぇ」
「ふふっ。相変わらず単純なんだから」
「力以外に興味はねぇ」
細く目を細め、眼下の五人を見つめる。
「ですが……右腕さまがお気になさる理由も、少し分かる気がするわ」
「……あぁ」
鋭い視線が、真っ直ぐ煉華たちへ向けられる。
「少しは楽しめそうだ」
二人はゆっくりと地上へ降りていく。
地面へ近づくにつれ、草木は枯れ、大地は黒ずみ、鳥たちは飛び立つ間もなく息絶えていった。
「……ちっ。抑えろ」
低く吐き捨てる声が響く。
「ごめんなさい……。つい興奮しちゃって。堪らないの」
「変態が」
ぶっきらぼうな一言に、その者はクスリと笑みを浮かべた。
二人が近づくにつれ、辺りの空気は重く淀み始める。
青空はゆっくりと陰り、生暖かい風が辺りを吹き抜けた。
まるで、この場にいるすべての命を拒絶するかのように――。
「……なに? この嫌な感じ……」
煉華は刀の柄へと手を伸ばし、鋭い眼差しで辺りを警戒し始めた。
「皆さま、お気をつけください」
羅刹もまた周囲を見渡し、静かに身構える。
琥珀と蒼紫、詞葉もそれぞれ武器へ手を添えた。
風が止む。
鳥の囀りも、木々のざわめきも消え失せた。
辺りを包むのは、耳が痛くなるほどの静寂。
そして――。
ドォォォンッ!!
轟音とともに、大地が激しく揺れた。
五人の前へ、二つの影が静かに舞い降りる。
舞い上がる土煙。
やがて風が煙を払い、その姿がゆっくりと姿を現した。
「初めまして、四神の巫女の皆さま。そして…神官様」
その者は優雅に一礼し、妖しく微笑む。
「私は赫夜。邪神様に仕える者の一人です。以後、お見知りおきを」
「……赫夜!」
羅刹の表情が険しく変わる。
赫夜は口元を緩めたまま、小さく首を傾げた。
「私をご存知でしたか。光栄です」
そう言って隣へ視線を向ける。
「そして、こちらは――」
「……双剣」
低い声が赫夜の言葉を遮った。
男の視線は、琥珀の腰にある双剣へ釘付けになっている。
「女が……双剣だと……」
握り締めた拳がミシリと音を立てた。
「あら、まだ自己紹介の途中なのだけれど?…刀骨」
赫夜は困ったように笑う。
しかし刀骨は答えない。
ただ、琥珀だけを睨みつけていた。
「……気に食わねぇ」
次の瞬間。
ドンッ!!
地面を砕き、刀骨が一直線に琥珀へ駆け出した――。
コメント
1件
わあ…第十四話、一気に不穏な空気が押し寄せてきましたね。赫夜の妖艶な微笑みと「壊して歪めた時の方が愛らしい」という台詞、背筋がゾクッとしました。それに対して刀骨の「力以外に興味ねぇ」という素っ気なさもキャラが立っていて良い対比だなと。そしてラスト、双剣を持つ琥珀に食ってかかる展開…次が気になりすぎます!