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「ありがと」
 眩しっ、さっきまでボロボロ泣いてたとは思えない、と言っても白いまつ毛の間から涙の雫が覗いている。
 兎「オレ木兎光太郎、あっちの梟谷の生徒。君は?」
 そう言い名門私立梟谷学園の方角を指差すこの人は木兎光太郎と言うらしい。
 <小手指和音です>
 「ちい…しょう…なんて読むのこれ?」
 いやいやせめて”こて”までは読めてくれ。それでも梟谷の生徒か
 <小手指和音です>
 兎「ネネ!ネネどこ高?」
 <音駒です>
 兎「まじ!?俺の学校よく音駒と練習してた、でもネネのこと見たことない」
 もしかしてバレー部だと思ってるのかな?
…バレーしてたからか
 <バレー部じゃないからです>
 兎「え!?バレーしてたじゃん」
 やっぱり
 <バレー部なのは弟です.俺は別に>
 好きじゃない、なんかそうとは言い切れなかった。でも俺に取り分け好きなものなんてない。
 兎「別に?」
 疑問の視線に何故か恥ずかしさを感じた。
咄嗟に靴をガリガリ言わせながら地面の字を消す。
 兎「ねぇなに?」
 なんでもないです、口からこの少しの言葉が出てこないことに苛立ちを覚えつつそっぽを向く。
 兎「…ネネはバレー好き?」
 音「……」
 鏡がないけど分かる。
 なんでこんな顔してるんだろう。
 兎「そっか!」
 <なにも言ってないです>
 兎「だってその顔はバレー好きでしょ、前後輩に同じこと聞いた時ネネと同じ顔してた。」
 <別に弟に付き合ってるだけです>
 変に鋭いこの人にこれ以上何かを悟られたくなかった。嘘はついてない、俺にはまだバレーボールを好きになる資格がない。
 兎「でも今弟いねぇじゃん。自主練でしょ?」
 びくりと肩が揺れる、図星だ。大丈夫言い訳なんてまだいくらでもできる、
大丈夫。
大丈夫。
 …大丈夫じゃない、腕が動かない。
 兎「やっぱり!」
 俺の気も知らないでこの人はにんまりと笑う。
 兎「好きじゃなかったらこんな寒い中外に出て暗くて危ないとこで1人で練習なんてしないよ。」
 ぐぅのねも出ない、でも好きなんて言えない。
 せめてもの抵抗で首を振る、木兎光太郎さんはそれをキョトンとした顔で見てくる。
 兎「意気地だなぁ…あれ使い方合ってる?」
 何言ってんだこの人
 <意固地では?>
 兎「あぁそれそれ!」
 合ってたんだ
 兎「ううんめっちゃイコ」ハックション!!!
 気付けば時刻は午後6時半を回りそうになっていた。
 <泣き止んだなら帰ったほうがいいですよ.風邪引きます>
 兎「えー、ネネと話してたらバレーしたくなった。ね、一緒にやろうよ、絶対楽しいから。」