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笑い声が、膨張する。
さっきまでの“舞台”が、さらに歪む。
床が傾き、空が近づき、音が重なっていく。
「アハハハハハ」
「タノシイネ」
「ワラッテ」
無数の声が、重なりすぎて“意味”を失う。
ゆうなの耳がキンと鳴る。
「……っ」
思わず頭を押さえる。
そのとき――
「下がって」
短い声。
花子くんが前に出る。
一歩踏み出しただけで、空気が変わる。
「境界、広がりすぎ」
低く呟く。
「これ以上は危ないな」
にうが笑う。
「いいじゃん」
「壊れるほうが、面白いよ」
その言葉と同時に――
バキン!!
空間がさらに裂ける。
舞台が増える。
いや、“重なる”。
同じ場所に、違う景色が何層も存在している。
笑っている人。
泣いている人。
壊れている人。
全部が同時に存在して、ぐちゃぐちゃに混ざっている。
「……なんだよ……これ……」
ゆうなの声が震える。
「現実と理想と、その途中」
つかさが楽しそうに言う。
「全部ごちゃ混ぜ」
「にうの“優しさ”だよ」
その“優しさ”がどれだけ危ういか、もう分かっている。
花子くんが帽子に手をかける。
「……そろそろ、本気でいくよ」
静かな宣言。
その瞬間。
空気がピン、と張り詰める。
にうの笑みが深くなる。
「いいじゃん、、君」
「そうこなくちゃ」
狐のお面に、さらにヒビが広がる。
中から、何かが“滲む”。
それは涙みたいで――
でも、笑っている。
「じゃあ自分も」
手を広げる。
「全部、見せてあげる」
その瞬間。
ゆうなの視界が引きずり込まれる。
――教室。
――放送室。
――誰もいない帰り道。
次々と場面が切り替わる。
全部、ゆうなの“記憶”。
でも。
全部、少しずつ違う。
笑っている自分。
無理してる自分。
一人で座ってる自分。
「やめろ……」
ゆうなが呟く。
にうの声が響く。
「どれがいい?」
「どれが楽しい?」
「どれなら笑える?」
問いが突き刺さる。
「……っ」
答えられない。
どれも違う。
どれも本物じゃない。
そのとき――
「全部違うでしょ」
つかさの声。
ゆうなのすぐ横。
いつの間にか、隣にいる。
「だから選べない」
にやりと笑う。
「かわいそ」
軽い言葉。
でも、その目は鋭い。
「じゃあさ」
指を鳴らす。
パチン。
景色が止まる。
「作ればいいじゃん」
「“今”のやつ」
その言葉で。
ゆうなはハッとする。
(……今……?)
周りを見る。
歪んだ空間。
壊れた舞台。
笑い続ける仮面。
そして――
花子くん。
前に立っている。
静かに、でも確実に戦っている。
(……これが……今……)
ゆうなは息を吸う。
(じゃあ……)
拳を握る。
「……俺は……」
声を出す。
最初より、少しだけはっきりと。
「……今、ここにいるやつと……」
花子くんがちらりと振り向く。
「ちゃんと話せるやつがいい」
その瞬間。
空気が、ピシッと割れる。
にうの動きが止まる。
「……話す……?」
小さく呟く。
ゆうなは続ける。
「無理に笑わなくていい」
「泣いててもいい」
「でも……」
一歩、前に出る。
「ちゃんと“いる”やつがいい」
ドンッ!!
何かが弾ける。
舞台の一部が崩壊する。
仮面が一気に割れる。
にうが一歩後ろに下がる。
「……っ」
初めて、明確に揺れた。
つかさが笑う。
「お、効いてる」
花子くんが静かに言う。
「いいよ、そのまま」
ゆうなはさらに言葉を重ねる。
「……作り物の笑顔はいらない」
「……ちゃんとしたやつだけでいい」
バキン、バキン、と連鎖的に空間が崩れる。
笑い声が減っていく。
代わりに――
静寂。
にうが、じっとゆうなを見る。
狐のお面のヒビが、はっきりと見える。
「……そっか」
ぽつりと呟く。
「君、そういうのがいいんだ」
その声は――
ほんの少しだけ、寂しそうだった。
でもすぐに。
「じゃあ」
にこっと笑う。
「それも壊してあげる」
その瞬間。
ドンッ!!
境界が、さらに深く“裏返る”。
足元が消える。
全員が、一瞬浮く。
そして――
真っ暗な空間に落ちる。
「……っ!?」
ゆうなが息を呑む。
何もない。
光も、音も、境界も。
ただ――
「ここはね
にうの声だけが響く。
「“笑えなかった人”の場所」
ぽつ、ぽつと。
小さな光が灯る。
それは―
うずくまる影。
顔を隠している人たち。
誰も笑っていない
誰も動かない。
「ここを、全部笑わせるの
にうの声が震える。
でも、笑っている
「そしたら、みんな幸せでしょ?」
その“願い”は、確かに優しい。
でも。
壊れている。
花子くんが一歩前に出る。
「……それは違う」
静かに言う。
「無理やり変えたら、それはもうその人じゃない」
にうがピタリと止まる。
つかさが、じっと見ている。
ゆうなも言う。
「……そのままでいいって……思えるやつがいないと……」
「意味ないだろ……」
沈黙。
長い沈黙。
にうの肩が、ほんの少しだけ揺れる。
「……そっか」
小さな声。
そして――
「でも」
顔を上げる。
狐のお面のヒビが、大きく広がる。
「それでも自分は」
「笑わせたい」
その瞬間。
闇が、再び動き出す。
影たちが、ゆっくりと顔を上げる。
笑っていない顔。
でも――
無理やり口角が、上がり始める。
「……やめろ……!」
ゆうなが叫ぶ
花子くんが低く言う。
「……これ以上は、強引に止める」
つかさが楽しそうに笑う。
「クライマックスだね」
闇の中。
歪んだ“優しさ”と、それを止めようとする力がぶつかる。
そして――
ゆうなの中で、何かが決定的に変わろうとしていた。
いまからハートを増やしたいので(わがままでごめん)
❤30で続き書きます