テラーノベル
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雨の日の放課後、図書室の整理をしていた高校生のハルトは、古い羊皮紙に触れた瞬間に意識を失った。目を開けると、そこは豪華な玉座の間。目の前には、宝石を散りばめたような瞳を持つ、気の強そうな美少女が立っていた。彼女はこのルミナス王国の第一王女、リリィ。伝説の「叡智の賢者」を召喚したつもりが、現れたのはジャージ姿の冴えない少年だったことに、リリィは露骨に頬を膨らませた。
「ちょっと、あんたが賢者? 全然強そうに見えないんだけど!」とリリィに詰め寄られ、ハルトは顔を真っ赤にしながら「ただの図書委員です!」と言い返す。しかし、ハルトに与えられたスキルは、あらゆる事象を「解析」し、自分勝手に「編集」できるという規格外のものだった。戦い方を知らないハルトは、リリィの専属従者兼「魔法の家庭教師」として城で暮らすことになるのだが、ここから二人の騒がしい日々が始まった。
リリィは魔力こそ強大だが、コントロールが絶望的に下手で、練習するたびにハルトに爆発魔法をぶっ放したり、服を焦がしたりする。そのたびにハルトが「危ないだろ!」「うるさいわね、あんたが避けなさいよ!」と口喧嘩を繰り広げるのは、今や王宮の名物となっていた。だが、ふとした瞬間にリリィが見せる、国を思う真剣な眼差しや、ハルトが作った現代風の「パンケーキ」を幸せそうに頬張る無防備な笑顔に、ハルトは次第に胸の高鳴りを隠せなくなっていく。
そんなある日、隣国の帝国が「魔王の復活」をデッチ上げて攻め込んできた。ハルトは解析スキルで、この戦争が利権を巡る茶番であることを見抜く。しかし、リリィは自ら先陣を切って戦おうとしてしまう。「あんたは隠れてなさい、私が守ってあげるから!」と強がるリリィを、ハルトは思わず後ろから抱きしめて止めた。「バカ……っ、リリィに傷ついてほしくないんだ。俺に任せろ」と耳元で囁かれ、リリィは顔を耳まで真っ赤にして「な、何よ急に……!」と動揺し、魔法が暴発。周囲の木々をピンク色の綿菓子に変えてしまった。
ハルトは覚悟を決め、解析と編集のスキルを全開にする。彼は帝国の軍勢が持つ「武器」の情報を書き換え、すべての剣を「花束」に、大砲の弾を「カラフルな紙吹雪」に編集してしまった。戦場は一瞬にしてパレードのような光景に変わり、戦意を喪失した両軍の前で、ハルトはさらに世界の真実を「解析」して、黒幕である大臣たちの不正を空に巨大なスクリーンとして映し出した。
争いは止まり、ハルトは国を救った英雄となった。静まり返った夜のバルコニーで、二人は並んで星空を見上げていた。ハルトが「これで元の世界に帰る方法も分かったんだ」と切り出すと、リリィは今にも泣きそうな顔で「帰ればいいじゃない、勝手にしなさいよ!」と背中を向けた。しかし、その手はハルトの裾をぎゅっと掴んで離さない。ハルトは笑って、その手を優しく握り返した。「でも、まだリリィに魔法を教えなきゃいけないし。なにより、君のパンケーキを食べる顔をもっと見てたいんだ。だから、ここに残るよ」
その言葉を聞いた瞬間、リリィはハルトの胸に飛び込み、「……遅いのよ、バカ!」と叫びながら、その頬にキスをした。あまりの熱烈なアタックに、ハルトの編集スキルが勝手に反応してしまい、周囲の空気が甘い花の香りに包まれ、二人の周りにだけキラキラした光の粒が降り注いだ。
それから数年後。王国には「世界で一番騒がしくて、世界で一番甘い」と噂される賢者様と女王様の姿があった。ハルトの解析スキルは今や、リリィが夕食に何を食べたいかを当てるためだけに、贅沢に使われているのだった。
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