テラーノベル
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小学一年生のあの日、私は一目惚れした。その人は大人で、すごくカッコよくて、私の母に小さな恋をしていた…………。
ーーー
「ミツキ! 父さん母さんの言ってた世界に行けるって言ったら行くか?」
「え?」
私の名前は十夏梅ミツキ。今話しかけてきているのは双子の兄、ヒカル。
私達の両親は、異世界で出会ったとか言う、ちょっと夢物語に浸りすぎの二人だった。そんな世界、あるわけないし。父さんにしっぽはないし、耳だってちゃんと人間だもの。
「何言ってるの。お兄ちゃんまで夢物語に――」
「夢じゃないんだぜ! なあ、クロ、クウ」
名前を呼んだのは母さんの知り合いが飼っているアリスという猫が産んだ二匹の子猫。
「時の精霊クロノスと空間の精霊クウなんだ、こいつら」
「あの、お兄ちゃん、頭大丈夫? どこかにぶつけてきた?」
私は進めていた宿題をパタンととじて、ヒカルの方を見た。
「ミツキちゃんも一緒じゃないと、足りないんだ」
え……? いま誰が話したの?
「ミーちゃんも一緒に行こうよ。僕たちの産まれた故郷に」
知らない声が二人もする。でも、ここにいるのは、ヒカルと私と猫の二匹だけ。
「どこかに行くなら、お母さんは?」
「リサは連れて行けないんだ」
「なんで?」
「――――」
声が止まる。こんな怪しい話にのったら危ない。そう言おうとしたら、ヒカルが手を引っ張った。
「こっちの時間はクロがなんとかしてくれるらしい。な、ちょっとだけ見に行ってみようぜ!」
「なにするの、お兄ちゃん! 宿題だってまだ――」
「あとで出来るらしいぜ! ほら、行くぞ!! 時と空間の精霊よ!!」
ヒカルが叫ぶと同時に、まぶしい光が私達を包み込む。
何これ? 落ちる?!
足元の感覚がなくなり、私は驚いて目を閉じた。
「あー、何だっけ、そうそう風の精霊よ!」
ふわりと足元に何かがまとわりつく。まるでふわふわの布団にゆっくりとおろされるようにふんわりと私は地面におりたったみたい。
「ミツキ! ほらここが、ライトコール!」
嬉しそうに喋る、兄の様な人を見る。なんだかいつもと違う。えっと、ヒカルだよね?
「……お兄ちゃん?」
「何だ?」
兄の耳があった場所は髪だけになって違う場所にピルピルと動く黒い猫耳がはえた。しかも、ふりふりと動く黒いしっぽまではえてる。
「何それ?」
私が指差すと、ヒカルは自分の頭の上をさわった。
「うぉ、なんだこれ!!」
私は自分にもはえていないか気になり確かめる。よかった、特に変化はないようだ。けど。
「いいなぁ……」
「うぉ、こっちも!?」
しっぽでまた驚いてるヒカルを見て、羨ましく思ってしまった。
にゃぁん
クロが私の足元によってくる。よいしょっと抱き上げたあと、ぐるりとあたりを見回した。
どこかの建物みたいだけど。
絵本や遊園地なんかで見るような、お城みたいな建物が見える。
本当に知らない場所にきたの?
「あれ、クウは?」
「え?」
クウがいないことに気がついて、私はクウを呼んだ。
「クウー! どこー!」
こんな訳のわからない場所で、迷子になったら、大変だ。クウの名前を何度か叫んでいると、突然ふわりと空から人がふってきた。
「貴方達はいったいどこから、こんなところに入ってきたんですか?」
空からふってきた人はこちらを向きながら問いかけてくる。父さんと同じ位か少し高いくらいの身長、うしろにフードがついてる黒い服。青と黒と灰色の混じった不思議な髪色、目の色が黄色と水色で、クウと同じ色だった。
その目に、私はひきこまれて動けなくなる。
「クウ?」
ヒカルが、私と同じ事を思ったようで、名前を呼んだ。
「クウ? すみませんが、私はルードという名前です。どなたと間違って」
にゃぁー
「クウ!」
ルードさんの足元にクウがすりすりと近寄る。彼はすぐに気がつき納得した顔になった。
「あれ、あぁ。この子のことか」
ルードさんは足元にいた子猫をそっと抱き上げると、「はい」と、ヒカルに手渡していた。
「なぁ、ルードってもしかしてあの魔法使いか!」
「えっと、どの魔法使いですか。私を知っているんでしょうか?」
少し困りながら、彼はヒカルに対応してくれている。子ども相手にもすごく丁寧だ。
「母さんが言ってたぞ! 真面目で律儀で、魔法大好きで。でも、弱音を吐けない、すげー頑張るヤツだって」
その言葉でルードさんの顔色が変わった。
「あの、貴方のお母さんとは?」
「十夏梅莉沙。あ、結婚するまえは何だっけ? まあ、リサって名前の、昔ここに来て色々やって帰ったらしいんだ! ルードとは一緒に旅をした大事な仲間だって聞いた!」
「……リサ……様」
ルードさんの顔が一瞬悲しそうな、寂しそうな顔になった。何で、母さんの話で彼はこんな顔になるんだろう。でも、……。
複雑そうな、その顔を私が笑顔にしてあげたいな、なんて思っていた。
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コメント
1件
うわ、番外編! 本編読んでると「あの頃の話か!」って繋がりが楽しいですね。ミツキが小学一年生でルードに一目惚れするって、もう運命的すぎる……。猫耳と尻尾が生えたヒカル兄の困惑と、それを見て「いいなぁ」と思うミツキの心情、すごく可愛かったです。そしてルードの「リサ……様」の一瞬の悲しそうな表情。あの複雑さを、まだ幼いミツキが「笑顔にしてあげたい」と思った瞬間、なんだか胸が熱くなりました。本編との繋がりがじわじわ来る、素敵な番外編でした!