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<学園の中は、静けさに包まれて>
※捏造設定あり
2025-01-09
「…ねぇ学園長。」
「なんです?」
「なーんか変な魔力感じるんだけど。」
「あぁ、確かに。先程から妙な魔力がありますね。少なくとも味方ではないでしょう。」
「まー、そーだよね。誰が来ようと変わんない。
_僕は戻る気なんてないから。」
✦✦✦
「はぁ、…ねぇ、魔物多くなーい?しかも見たことないやつ…ツララ分かる?」
異世界だからか、魔法界にはない魔物が多い。見た目が似てると言えど、生態や攻撃方法は全く別のものらしく、殲滅に難航していた。
「いや…初めて見る個体、…これ、持ち帰ったら研究進むかもしれないな…さむっ、」
「一体一体は脅威ではないです。ただ複数個体となるとかなり厳しいかと。持ち帰るなんて魔力切れを起こすか殺すかしないと尚更です。」
「だよねぇ、うーん地獄…あ、そうだ、あれ飲もうっと、…」
私は太ももに括り付けたバンドから人差し指程度の小瓶を二つ取り出す。
「?、ライラ、何取りだして…」
オーターが私を見ているうちに、1つ飲み干す。
「いや、ちょっと待ってライラ、それもしかして…」
そして、ライラが聞いてくる前に私は、その2つ目を勢いよく飲み干した。
「うん?魔力凝縮液だよ?」
瓶を唇から離し、口元を拭いながら私は答える。
「は?なんでここにあるんですか?あれは全て回収したあと、まとめて魔法研究管理局で処分したはずでしょう。」
そう。これは本来、ここにあってはいけない代物。何故かといえば、これは先日道を歩いていた時に私が見つけたもので、ツララが研究してみると有害物質が含まれていることが判明しているからだ。魔力を大幅に増すことができる利点がある代わりに、体調異常や吐き気、倦怠感などの欠点がある、まさにハイリスクハイリターンの代物。
「いやいやオーター。天才神覚者が再現できない訳が無いでしょ?秘密裏に造ってたんだよ。あ、もちろん規律内でね?ちゃんと規則は守ってるからね、オーター?」
もちろん作るのにはそれなりの苦労と時間がかかったが、結果として成功作となったのだから問題ない。オリジナルと同じ効果を得られ、尚且つ副作用も殆ど出ない優れものだ。
「はぁ。だとしても危険です。凝縮薬は安易に常用していいものじゃないんですよ。」
私はくるっと振り返って、オーターの目を見る。
「でも害となる材料は全部取り除いたよ?これは”正しく飲めさえ”すれば、私にとっては安全そのものでしかない。」
研究の結果で、私にしか飲めないってことは分かっている。無理に私以外が飲めば最悪死亡も有り得るものだ。つまり私がちゃんと正しい飲み方で摂取すれば危険性はないということ。
黒く淀んだ空をバックにして、紫色のそれを翳す。小さなビンに入っているが、効果は大きい。
「ま、もちろん飲みすぎると死ぬし、薄めないと害だけどね。流石にそこまでは出来なかったから、今度また研究してみようと思ってるけど…今ちゃんと現存してて、限りなく本物に近いものがこれだけで、…しかもやっと完成したものがこれだけだから…ま、そういうことで2人は飲んじゃダメね。飲めないことは無いけど、100分の1くらいに薄めないと死んじゃうよ。」
それでも、100分の1くらいに薄めたとしても、私より酷い副症状は出るだろうけど。
「………………」
オーターが呆れたように私を見る。いや確かに私が100悪いけどさ。やめてよただでさえ罪悪感えげつないんだからさ。
「…あとでメリアドールさんのところに連れていきますからね。必ず。」
「えっやめて??本当に私手術苦手なんだよ」
「…仕方ないからね、頑張って、ライラ。」
「ツララぁー……」
まぁ自業自得かと思いながら、私は歩く。
✦✦✦ - NRC校門前にて
「…本当にここが目的地なんですか?」
オーターがそう聞くのも無理はなく。
「うん。…ここはれっきとした学園だよ。」
「…でも、それにしたってここは…」
「初めて見るんだもん、そう思っても仕方ないよ…魔法使ってるんだから。」
「…魔法…?」
ふふ、と笑いながら私は答える。
「ここはね、構造はイーストンと同じだよ。全寮制で、購買や食堂もある。でもね。」
「人数が違うんだよ。イーストンは3つの寮で構成されてるけど、NRCは7つ。」
「7…!?」
ツララが驚きの声を上げる。無理もない。
「そう。まずそもそもの話、人数が違うんだよ。確かにイーストンは魔法界にある超名門校で、しかも初等部からあるおかげで広いけれど。でも寮の数では劣ってる。」
「まぁだからと言ってこっちが魔法の巧拙で負けてるわけじゃないよ?人数が多い分、上手に統制が取れてない寮だってある。だから別に負けてるなんて気負う必要はないからね。」
「……………」
「…まぁ話はズレたけど。とりあえず入ろう?外にいても誰も来ないからさ。」
私がそう手を引くとツララとオーターは戸惑いながらも学校の中へと足を踏み入れた。
✦✦✦ - NRC 1F廊下にて
「…綺麗ですね。まるで、時が止まっているような…」
「あ、分かる?そうなんだよね。此処、保存魔法かどうかは分からないけど、昔っからこんな感じで。…私が前に来た時と少しも変わらない。」
「…それにしても、本当に誰もいないね。本当に学校なの?此処。」
「その筈だけど…でも本当に居ないなぁ。皆どっかに集まってるの……っ!?2人とも、伏せて!」
その瞬間、頭の上をヒュンっと通過していくなにか。
「は…?」
呆気にとられているオーターと、驚いて固まっているツララに焦りながら声をかける。
「っ、2人とも怪我は無い!?大丈夫!?」
「自分は大丈夫、」
「私も大丈夫です…というか、今のはなんですか?急にライラが叫んだと思ったら、頭の上を何かが通過して行ったような…」
「…魔法だよ。…多分、この魔力は…」
私は警戒しながら辺りを見渡す。監視カメラらしきものは無い。なら…
「……………」
「…?人の形をした…水の塊? 」
嫌な予感が的中してしまった。あーあ、出来ればこの勘は当たって欲しくなかったなぁ、と思いつつ、2人に今の状況を知らせる。
「…っ、やっぱりそうだ。ツララ、オーター。油断しないで。これはアイルの魔法だよ。」
「…あの子の…?なんで、そんなこと…」
「…多分、私の事を本気で殺りに来てるんだと思う。油断しないでね、2人とも。…これは注意じゃない。警告だよ。」
私は真剣な目を2人に向けた。だって分かってもらわないと、2人程の実力者でも死んでしまう可能性があるから。
『…レイニー・アイス・バレット』
そう唱えられたあと、氷の雨が素早く私達の方へと向かってくるのが確認できる。
「っ、…ウィンド!」
それを私はギリギリのところで跳ね返す。数秒前まで氷の塊だったそれは、パリン、と音を立てて崩れ去る。けれど、いくらはね返しても、魔法のその勢いは無くすどころか更に増しているように見える。なんなら、違う魔法も何種類か使っている気がする。
「…2人とも。ここの処理お願いできる?」
魔法を発動して攻撃を対処しつつ話す。
「いいですけど…ライラは何処に?」
「……ちょっと、ね。仲直りに行ってくるよ。」
「、!…分かった。じゃあ、ここは任せて。」
「うん、ありがとう。…いってきます。」
-アイルが、無事でありますように。
私はそう祈りながら、アイルがいる場所へと向かった。
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