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「…………うみにゃ?」
就活生みたいな、遊びのない真っ黒なスーツに身を包む、どこか見覚えのある後ろ姿。そういえば、随分と会っていない。就職するんだ、そう言って別れたのは、何ヶ月前のことだったか。
「……人違いじゃ、ないよな」
声をかけてみたのに、うみにゃと思しき人物は振り返るどころか立ち止まってもくれなかった。他人の空似だと言われると、そんな気もしてくる。もともと猫背ではあったけれど、こいつ、こんなに小さかったっけ。
「…………え、あ、DD!?」
それでも、本物のうみにゃだったらきっと後悔するから。慌てて駆け寄って、肩を叩く。うみにゃは、飛び上がりそうなくらい肩を震わせて、びくりとこちらを見た。
「久しぶり」
「ん、あ、ごめん、メッセージ返せてなくて」
「……まあ、会えたからいいよ」
忙しくなるから、しばらく会えないかも、そう言いながら、うみにゃとはSMSの連絡も途絶えていた。俺の顔を見て一番に思い出すんだから、既読はつけていなくても、見てはいたんだろう。スタンプの一つでも返してくれればいいのに、きっと考えすぎてなんて返せばいいかわからなくなったに違いない。らしいといえばらしいから、見逃してやることにする。
「DDは、元気してた?」
うみにゃは、俺がSMSの件にそれ以上追求しないことに心底安堵した様子だった。そのくせ、当たり障りのないことを問いかけながら、先ほどから目が合わないのは、どういった了見だろうか。