悠人と一緒にいる時間を、まだ夢じゃないかと思ってしまう。
でも、朝、目を覚ますと毎日悠人がいて。
「ああ……夢じゃないんだ」って、実感する。
だけど、次は……
「触れたら消えちゃうんじゃないか?」って、また疑う。
毎日、その繰り返し。
「穂乃果。明日からよろしく頼む」
帰ってきた悠人が言ってくれた。
不安そうにしてる私に、
「大丈夫だ。俺が側にいるだろ? 何も心配しなくていい」
って、優しく微笑んだ。
「うん。私なりに一生懸命頑張るね」
「ああ、頼む。穂乃果が側にいてくれたら、心強い」
悠人……
私みたいな人間を少しでも頼りにしてくれて、梨花さんには申し訳ないけど、やっぱり嬉しい。
ありがとう……
私達は、明日に備えて早めに眠った。
しばらく午前中だけ講師とアシスタントという関係になる。そして午後からは、お互い美容師に戻って普通業務。
何だか忙しくなりそうだ。
ゆっくり目を閉じたら、あっという間に眠りに落ちた。
朝になって、緊張のせいかパっと目が覚めた。
窓を開けると、気持ちの良い春の風が入ってくる。
まだ少し肌寒さも感じるけど、待ちに待った春の到来が嬉しかった。
鳥のさえずりも心地良い。
私はベッドから起きて、ベランダに置いてある植物のプランターにお水をあげた。
可愛い色とりどりのお花に癒される。
でも、ゆっくりはしていられない。
私は支度をして、悠人と一緒に車で出かけた。
月城美容専門学校に着いてすぐ、まずは準備室に向かった。
「おはようございます」
ノックと共に元気の良い声が聞こえた。
入ってきたのは、ここの校長だった。
「悠人君、頼むよ。君の授業は本当に人気があるからね」
「久しぶりなので緊張してますが、精一杯頑張ります」
嘘、悠人も緊張するの?
たぶん、謙遜なんだろうな……
「アシスタントの結城 穂乃果です。よろしくお願いします」
「前回の方とは違うね。君もここの卒業生なんだってね。よろしくお願いしますね」
「あ、はい。頑張ります」
私の頃には、いなかった先生だ。
悠人のお父さんの親しい友人みたいだけど、校長を任せるなんて、きっと信頼してるんだろうな。
校長が出ていった後、すぐに私達も生徒達が待つ教室に向かった。
廊下で、先生達が悠人に頭を下げて挨拶する。ここの学校を作った月城グループの御曹司だと、みんな認識してるみたいだ。
悠人も丁寧に挨拶してて、全然偉そぶらないところが悠人らしい。
生徒達も悠人を2度見したり、すれ違った後に振り返たり、みんなびっくりしてる。声を出して驚く子までいる。
何だか可愛いな、みんな。
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