「地球に行くために、 な」
「はい?」
「ん?」
ピュノンは静止画のように固まる。私は首を傾ける。
「チキュウ?あの?青色の?」
「そうだ。地球だ」
「ふざけてるんですか?」
「んなわけねぇだろ!」
地球はこの星からかけ離れた場所にある。青く美しいその星に惹かれたのは少し前になる。私たちの星は惑星として認定されていない。昔、分裂する前は美しくて大きかったため可能性はあった。だが分裂後は、小さくなってしまった。なんとか星と言えるくらいだ。だから、地球に憧れた。青く美しいあの星を。昔のこの星のようだ。あそこには人間が住んでいるようで、生息できるのも地球のみ。そんな優れた環境を持つ地球に惹かれた。
「良いこと言ってるって顔してますね」
「そうか?」
「でも本当は漫画が好きだからでしょう?」
「な、なんのことを言っているんだ!?」
「あなたの部屋を掃除したとき、漫画が沢山ありましたよ」
「勝手に入ってくんな!」
なぜ勝手に入ってくるんだ。掃除は下の者に任せているはずだろう。なぜ1番入らせたくない我が妹に掃除させているんだ。面倒ではないか。どうせ馬鹿にされるんだ。知っている。ピュノンはそういった漫画に興味がない。
「もしかして、地球に行きたいとでも?」
「悪いか!」
「地球は危険です」
ピュノンは目を伏せて言った。冗談のつもりではなさそうだった。
「人間は私たちのような能力を持っていません」
確かにそうだ。人間はただの人間であって、私たちとは違う。
「何にせよ、私たちが地球に行って本当の姿がバレたら大変でしょう?」
「そんなので、怖がって諦めるほどの気持ちじゃないんだ」
「…分かりました。検討しましょう」
冷たい目だった。
「そうしてくれ」
同じように冷たく返した。深呼吸をした。
冷たい風が、流れた。
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