この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません
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岩本side
辰哉のことを愛していないわけではない。彼のことをどう思っているかと聞かれたら間違いなく好きだと即答できる自信はある。だが、性的対象として見れるかどうかとなると話は別だ
「”今日取引先と飲み行くから遅くなる”」
『”あいよー”』
いつもこうやって迷惑をかけて申し訳ないと思っている。俺が絶対にやってはいけないことをしている自覚もある。でも、やっぱり目先の利益を優先してしまう俺は、今日も罪を重ねる
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「”ごめん、やっぱ帰れなくなった”」
『”おいおいまたかよー”』
『”こんな可愛い嫁さん放ってどこほっつき歩いてんだぁ?わら”』
「”そういうんじゃないから、一緒に飲んでたら相手潰れちゃったから送るだけ。今日は車ん中で1日過ごすわ”」
『”冗談じゃん、わかってるから行っておいで”』
【へー、嫁さん優しーじゃん?】
画面と顔の間に入り込んできたのは特徴的なふわふわのピンク髪。取引先の相手で一緒に飲みに行っていたのがコイツ。そこまでに嘘はない。だが、そこから先…潰れちゃって送るだけ、ってとこからは真っ赤な嘘だ
「まあね」
【なのに裏切ってんだ?】
「…まあ、ね、」
【ごめんて、そんな顔しないで】
そっと頬に手が添えられて、機嫌を窺うように、慰めるように柔らかい唇が重ねられる。何度も短いキスを繰り返して、俺のワイシャツのボタンが外れていく音が聞こえてくる。俺も彼の服の裾から手を入れて、触れと強請るように主張してきている胸飾に手を這わせた
【…っふ、ぁ…♡っん、】
「…今日ちょっと激しくしていい?」
【いいよ、溜まってんだもんね笑】
「別にそういうわけじゃ」
【でもさぁ、ここは早く俺ん中入りたいって主張してきてるよ?】
とんとん、と彼の細い指が俺の屹立したそれを刺激する。かく言う彼も、同じように主張し始めたものを隠しきれていないのだが。俺だけじゃないだろ、という抗議も込めて彼のズボンの縁に手を掛けては下へずらそうと軽く引っ張る
「脱がなきゃ始めらんないでしょ」
【えーじゃあ脱がして♡】
「お前ほんと…」
喉元まで出かかった文句を飲み込んで、腰を上げるよう促すと彼のズボンを下ろして、下着もついでにその辺に放る。彼はちょっとばかり乱暴にされる方が好きだということを知っているから。ぽい、とベッドに軽く投げてその上に覆い被さると丸いくりっとした大きな目を更に丸くさせて驚いていた
【え今日なんかSな日?笑】
「いやお前がこういうの好きだからさ」
【にゃは、俺のこと考えてくれてんだ?】
「たまにはそういう日、あってもいいでしょ」
【んは、そーゆーとこよなあ照の良いとこは。お言葉に甘えて今日はいっぱい要望聞いてもらおーっと】
「全部は無理だよ?」
【だぁいじょぶよぉ、じゃあ絶対条件だけ!言っとくね】
「…先に言っとくけど根性焼きはもうしないからな?」
【わあってるって、根性焼きじゃないし】
「あ違うの?じゃあ何」
【それがさぁ、俺……】
「えぇ…」
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特に遠慮することもなく奥を突きながら彼の首元へ手を伸ばす。ぎりぎり、と俺の手に力が入ると彼の喉からか細い息が漏れ、苦し気な表情で俺の腕をほどこうと弱々しく掴んでくるも、全く力は入っていない。自分から首絞めて欲しいって言ってきた癖に、案外耐えらんないんだな
【……ぐ、ぅ”…っん”、い”…】
「頼んできたの佐久間なのに、こんなんで止めようとしてんの?」
眉を顰めて、大粒の涙を目に浮かべて必死に抵抗する彼の顔は真っ赤になっていた。そろそろ離さないとやばそうだったから手を解いてやると急に大量の空気を吸い込んでしまったからか、激しく咳き込んだ。そんな彼に冷たい視線を送りながらゆるゆる律動を再開する。焦ったように俺の動きを止めようと触れてきた手を握り、何も考えられないうちに大きすぎる程の快楽を与える
「ねぇ佐久間、次イくとき首締めてみよっか」
【…ぁ、っえ、?♡なん、なに?】
多分酸欠のせいでろくに頭が回っていないから聞こえてきた言葉を処理しきれないんだろう。ぼんやりしていて可愛い、話聞いてないのはちょっとムカつくけど
「…気持ちいことしてあげる、ってこと」
【ぅえ、でも…ぁ、♡んっ、ふ、十分、きもち、のに…】
「気持ちいいの好きだからいーでしょ」
【ん、?っあ、うん、んっ…♡】
身体でも口でも気持ちいいことを伝えてくる彼の反応はわかりやすいし見ていて飽きない。ここが良いんだろうなとか、今のこれは嫌だったんだろうなとか全部丸わかり。善がっているところだけを擦っていると、段々俺の腹の辺りにある彼の屹立が脈打ってくる。多分イきそうなんだろうと判断すると彼が何か言う前に再び首を緩く絞めた
【っん”?!ぅ”……っぁ”、♡】
「首締められてイくとかドMかよ…♡」
絶頂と同時に首を絞めると、狙い通りの恍惚な表情を浮かべた彼が目に入った。彼が達する度に絞めて、俺の首絞めがなけりゃイけない身体にしてやるのもいいかもな。なんて。彼が俺の本命になることは絶対ないけれど、愛人だろうがセフレだろうが俺のものにするのは俺の勝手だろうし。彼のスマホにメッセージが届いているのも気にせず、行為を再開した
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佐久間side
《”さっくん今日は帰ってけえへんの?”》
ラブホの天井が目に入る。あーそうだ、昨日照とヤッてそのまま寝ちゃって…。康二からのメッセージにも気付かないほどセックスに夢中になっていたらしい。にしても、こいつ良いやつだな。別に俺と康二は付き合ってるってわけじゃなくて、ただ同居してるだけ。だからそんな気にしてくれなくても良いのに
【”ごめ!残業してたら疲れて会社で寝てたわ~笑”】
今日は流石に帰んなきゃな。まだ寝ている彼の枕元に部屋代と”先出るわ”なんてメモを置いて部屋を出た
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佐久間side
家に帰ろうとラブホ街を出てその辺に停まっていたバスに飛び乗る。なんかちょっと家と違う方向に行ってるみたいだったから歩ける距離まで来たことを確認して降りると、見覚えのあるような後ろ姿が見えた
「あれっ、ふっか?」
『ん?…あの、どちら様ですk』
やっぱりふっかだ。高校のときの同級生の深澤辰哉。振り返ったときの透明感があのときの何倍にもなっててえぐい、水に浸けた後のライスペーパーより透明だぞこりゃ
「佐久間!高校ンとき同じクラスだったんだけど覚えてる?」
『…?!さ、佐久間大介?!』
「そ!!!だいせーかい、てかお前こんな時間からどっか行くの?」
『んや、帰ってんの。友達の家行っててさ』
「あーね、ごめんな引き留めて!」
『いーよ、また会ったら話そーぜ~わら』
キラリと光った手元を見てやっと気がつく。あれ、コイツ結婚してんじゃん。どんな人と今一緒になってんだろう。高校のときすげえ仲良くしてた後輩がいたらしいけどもしかしてそいつかな
「ちょ待ってお前結婚したんか!名字だけ聞いといて良い?」
『岩本。その辺に家あるからまた探してみ、わら』
「いわm……おっけ、んじゃなー!」
聞き覚えのある名字にドキッとしたが、早いうちに帰らなきゃ康二が心配するだろうからと彼に別れを告げて再び歩き始める。家に帰ると丁度康二が出てきていて、鍵を閉めようとしているところだった
「あ!!待って待って俺入る!」
《おぁ、さっくん!!ごめんまだ閉めとらんから大丈夫やで!》
「いや此方こそごめんんん!!!」
《ちょ、俺授業遅れたらあかんから!行くわ!!!》
「ほーい、行ってらっしゃーい」
うん。首元に紅い印があったのは見なかったことにしてやろう
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