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「ガクくん、今から、海、行きません」
電話越しに伝えられた言葉。
午後5時。良い子は家に帰る時間だろう。
辺りはもう夕暮れに包まれていてこれからだんだんと暗くなっていく。
例え夏でも夜は冷えるし、海の水だって冷たくなる。
それに、俺はまだ免許を取ったばっかだし、暗い道に慣れていない。
それを分かって彼は言っているのだろうか。
「いや、あの、今から海行っても遅いし明日にしません?どうせ明日も休みじゃないですか」
「まぁ、明日も暇なんですけど…今日じゃなきゃダメなんです」
何を言っても今日じゃなきゃダメだと譲らなかった。
まぁ、元から分かりきってたことだけど。
集合場所を決めて車で刀也さんを迎えに行く。
夜の街はキラキラしててとても綺麗だった。
だけどやっぱ運転に慣れていないから少し心配だったけど。
待ち合わせ場所に着くと、車から降りて刀也さんの姿を探す。
彼の姿が見つかると手を大きく振って走り出す。
「ん、」
「え、これ刀也さんが買ってきてくれたんですか?!」
「海行っても入れなくて暇になるだろうと思って。」
「じゃあなんで行くんですか…」
「まぁまぁ」
突きつけられたのはかなりの量が詰め込まれた花火セットだった。
何時くらいまで海にいるつもりなのだろうか。
出来れば刀也さんには休んでほしいんだけどな。
まぁこれも彼なりの休日なのだろう。
そう思って車を走らせる。
「うわきれーーーー!!!」
太陽は半分しか見えないけど、それが海をオレンジ色に染めてとても綺麗だった。
「んふふ、いい景色でしょう?」
「めっちゃ綺麗っす!」
彼はまるでこれを狙ったんですよ的なドヤ顔をする。
浜辺にしゃがんで話し続ける。
最近は色々忙しくてあまりお互いのことを話せてなかったので気分が上がってしまう。
だけど打ち付ける波の音が気持ちよすぎて気を抜いたら寝てしまいそうだった。
「ガクくん、…眠い?」
「あぇ、そう見えます?」
「なんか眠たい時のガクくんになってる」
「なんすかそれ、w」
でもそう言ってる刀也さんも眠たそうで。
流石に砂浜で寝るのはな…と思い、何か眠気覚ましの物を…
あ
「花火!!!」
「そういや話すのに夢中になってて忘れてましたね」
「持ってきます!」
走って車から持ってくる。
「どれからやります!?」
「じゃあこの普通のやつで」
刀也さんに準備を手伝ってもらってやっと花火を開始する。
最初はさっき刀也さんが選んでくれた普通の花火。
パチパチといい音を奏で、綺麗に弾ける。
せっかく他の人も居ないから花火をぶん回してみる。
円を作ったり、ハートを作ったり、星形を作ったり。
やってる側も楽しくて、見てる側も楽しそうだった。
他の花火も楽しんでいると、気づけば辺りが暗くなってしまった。
「これで最後っすね、」
最後はお決まりの線香花火。
落としたら負けのゲームに夢中になって、先程とは違い、とても静かになる。
それに堪えれず、刀也さんが吹き出してしまった。
「あ!刀也さん落とし…」
「んははっwガクくんも落ちてるじゃんw」
つい声を出してしまった勢いで刀也さんとほとんど一緒のタイミングで落としてしまった。
「はぁー、楽しかったっすね」
「ガクくん、疲れ、取れました?」
え?
「ガクくん最近ソロイベとかあってすごい疲れてそうだったのでたまにはと誘ってみたんですけど」
あー、彼にはバレていたみたいだ。
自分でもわかるほど深いクマができたり、なんか体の気怠さが取れなかったり、どちらかというと俺の方が疲れていた。
「ありがとうございます、めっちゃ楽しかったです!」
「なら良かった」
☔️
カタツムリパフェ・骨粉