「ミルキィ!?ねぇ!?起きてよっ!」
ミルキィの肩を揺らし起こそうとするが、ミルキィに変化は見られない。
レベルドレイン後、倒れたミルキィは呼吸をしているものの、何の反応も示さなかった。
「ど、どうしよう……僕は馬鹿だ…なんで…」
後悔ばかり募るが、今はその時ではない。
「帰ろう・・・まずは街に戻って、それからだ」
レビンはミルキィを背負うと最低限の荷物だけを持ち、街へと向かった。
実質レベル100越えのレビンにとって、一人の少女をおぶった状態であってもダンジョンは容易かった。
「…?…レビンさんっ!?ミルキィさんは……えっ!?寝てる?」
レビンを迎えたカーラはその格好に驚きを隠せなかったが、ミルキィが呼吸をしている事を確認すると冷静になった。
「とりあえず部屋は空いてるかな?ミルキィを休ませたいんだ」
「は、はい!ご案内しますね」
案内されたレビンはベッドにミルキィを寝かせると食堂に向かった。
「ガーランドの友の皆さんですか?……そうですね~おそらくこれまで通りだと、明日くらいに戻ってくると思いますよ」
ガーランドの友はレビンたちよりこの宿歴は浅い。
その為、カーラは明言を避けたかったが、レビンの様子がそれを許してくれなかったので不確かながら答えたのであった。
「ありがとう。これ代金ね。とりあえず5日分」
「ありがとうございます。あの…ミルキィさんは大丈夫ですよね?」
カーラも心配なのだ。
「うん。僕の幼馴染だからね。目覚めたらまた話に付き合ってあげてね」
「もちろんですよっ!」
宿を長めに取ったレビンはミルキィのそばについていたい気持ちを抑え、何かないかと情報を集めるために行動を開始した。
辺りは夕暮れ。レビンが街に戻ってから半日が経とうとしていた。
「くそっ!どこにもそれらしい話が無いじゃないかっ!」
冒険者ギルド、街の治癒師、行政の図書保管庫、街の年寄り、数々の情報を集めたがそれらしいものは見つからなかった。
調べていくうちにわかったことは、ギルドが知っている限りでは過去にレベル70以上の冒険者がいたようだということ。
現在の事は秘密である。しかし、レベル100越えはいないと聞いた。
「前例がないなら情報があるわけないよね……しかもミルキィは……」
声にこそ出さなかったが、その後にはヴァンパイアとエルフのハーフという単語が出かかった。
宿に帰り、相変わらず美しい寝顔のままの幼馴染へとレビンは語りかける。
「必ず起こすから。いつもそうだったよね?僕が昼寝をしていたらミルキィが起こしにきて遊んだよね?
ピクニックの日には僕が朝起こしに行ったよね。
今回も…必ず起こすから待ってて」
レビンは疲れからか、ベッドに眠るミルキィの手を握りしめ、自身の意思とは無関係に眠りへとついてしまう。
ドンドンッ
ドンドンッ
朝日がまだ登り切らない内に、レビン達の部屋のドアが乱暴に叩かれた。
(ん…?朝か…ミルキィは……相変わらずか…誰だろう?まさかヴァンパイアだって…それはないか)
不安が脳裏を過ぎる。しかしそれは違うと、寝ぼけ眼な頭で答えを出したレビンは、ドアへと向かう。
ガチャ
「どちら様で『ミルキィちゃんは!?』!?アランさん達…」
身を乗り出したアランをレビンは咄嗟に抑えた。
無防備なミルキィの姿を同性に見せたくなかったのだ。
だが、本人はそれに気付かない。
「待ってください。お話しますので別の場所で…」
レビンのその言葉に続いて、女性であるサリーから声があがる。
「アラン。心配なのはわかるけどやめて。ミルキィちゃんが嫌がるよ?
レビンくん。私達の部屋でいいかな?」
「サリーさん。ありがとうございます。すぐに準備しますね」
そういうとレビンはドアを閉め、ミルキィに行ってくると挨拶をするとガーランドの友と合流した。
そして部屋へと案内されて入ると話が始まった。
(何から……ううん。どこからどこまで話たらいいんだ?)
ここに来て何も考えていなかった事に気付いたレビンだったが、勘違いしたガーランドの友のメンバー達が勝手に話し出す。
「…言い訳か!?男なら正直に話せよ!」
「アランッ!レビンくんはまだ何もいってないよ!落ち着いて!」
「あった事を話すだけなのに口籠るのがその証拠だろ!」
「アラン。レビンくんはそんな人じゃないわ。知っているわよね?」
ミルキィの事が心配なアランは気持ちのやり場に困り、レビンに当たるも周りの女性陣から諭された。
「…悪い。レビンが一番辛いのにな。それで何があったんだ?」
レビンは人の優しさに触れて込み上げるものがあるが、泣いている場合ではない。
「…その前にお聞きしたい事が」
「何かな?何でも聞いてね」
「皆さんは差別をしますか?」
ガタッ
椅子を倒しながらアランがレビンに殴りかかる。
その俊敏さに誰も反応できなかった。ただ一人、レビンを除いては。
「アランさん。失礼な事を聞いているのは重々承知しています。
後でいくらでも殴って構わないので、先ずは答えてください」
レビンはアランの拳を傷つかないように優しく受け止めると、それとは打って変わり力ずくでアランを椅子へと座らせた。
「くっ…」
アランの全力を事もな気にあしらうレビンに、息を呑むガーランドの友。
いち早く立ち直ったダリーがレビンに問う。
「レビン。このメンバーで一番分け隔てないのがアランだ。
そのアランが集めた俺たちが差別をしたりすると思うか?」
「思う思わないの話であれば思いません。ですが確証が欲しいんです」
「…差別はしねぇが…今のレビンは嫌いだ」
ぶっきらぼうに答えたアランに他のメンバーも続く。
「私もしないわ。例え奴隷であってもみんな同じよ」
「私も。言葉が通じるなら誰とでも分かり合えると思ってるよ」
「俺もだ。レビンの力になりたい」
3人がレビンを真っ直ぐ見つめて答えた。
アランはバツが悪そうにしているが……
「ありがとうございます。まだ誰にも言っていないし、一生二人だけの秘密にすると誓ったのですが、僕の力足らずで…ミルキィとの約束を…誓いを破ります」
「…何なんだよ?差別もしないし誰にも話さねぇから言ってみろよ」
「はい。実は…ミルキィはヴァンパイアとエルフのハーフなんです」
レビンの告白にガーランドの友のメンバーは言葉を失う。
暫くして回復したサリーがレビンに話しかけた。
「レビンくん。確かにヴァンパイアの差別…ううん。迫害はあるね。でも私達は誰も差別も迫害もしないよ。
それで…ミルキィちゃんはどうしたの?」
レビンはこれまでの事をガーランドの友に話した。
「なるほどな…レビン達が年齢にして…いや年齢は関係ねぇか。強すぎる理由はわかった。
だけどレベル100越えのショックで寝込むとかはわかんねぇな…」
ミルキィが倒れた原因について話した後、それぞれにわからないと返されただけであった。
「ごめんね…力になれなくて」
「いえ。話せて少し楽になれました。また頑張れそうです」
人に打ち明けるのは勇気のいる事である。
しかし、打ち明ければ少し楽になるのも。
「レビンくん。とりあえずミルキィちゃんの身体を拭くね?もちろんサリーと二人でね」
ミルキィの身体を拭くというセリフに真っ先にアランが立ち上がったが、女性陣からの冷たい視線を受けて直ぐに座り直した。
アラン。モテるためには紳士たれ。
レベル
レビン:22(121)
ミルキィ:???
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