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「私もずっと雪都から元気とか勇気とかいろんなものをもらってましたから。あっ、でも、雪都も新しいおじいちゃんとおばあちゃんができて大喜びなんですよ。すごく有難いことです」
「これがお互いにとって1番最良の選択だったということだな。俺達は、これからもずっと一緒だ」
そう言って、慶都さんはお気に入りのワインとワイングラスを用意してくれた。
温度管理されたワインセラーには、年代物の高価なものから手軽なものまで、いつでも飲めるように常備されている。
コルクタイプの赤ワインのキャップシールを、ソムリエナイフを使って器用に剥がす慶都さん。
スクリューでコルクを抜き取り、慣れた手付きでワインを注ぐと、それはトクントクンと流れ込み、透明なグラスがゆっくりと赤に染まっていった。
その一連の流れはまるで芸術のようにも思え、慶都さんのスマートな振る舞いに思わずキュンとしてしまう。
「さあ、どうぞ」
「すみません、ありがとうございます。いただきます」
「深みのある濃い赤……とても美しい」
ワイングラスのステムを持つ細くて長い指に、何ともいえない色気を感じてしまう。
ワインを眺めるその顔も、この世のものとは思えないくらい麗しくて。
「え、ええ。本当に綺麗な色です」
「君にはきっと、こんな色のドレスが良く似合うだろうな」
「えっ、とんでもない! こんな素敵な赤……私には似合いませんよ。もっとハッキリした顔立ちの美人さんしか……」
そう言った瞬間、頭の中に思わず麗華の顔が浮かんだ。
麗華なら間違いなく着こなすだろう、情熱的な深紅で彩られたドレスを。
「君には何でも似合うよ。でも、こんな魅力的な色のドレスを着れば、周りの男性がほおっておかないだろうから、残念だけど諦めるか」
「けっ、慶都さん。冗談はやめて下さい。私はそんなに良い女じゃ……」
「いいかげん、自分の容姿がどれ程のものなのか自覚してほしい。気が気じゃない」
口にしたワインが、慶都さんの唇を少し湿らせる。
それを見て、さらにドキドキを増したこの気持ちを隠すために、私も慌てて口をつけた。
美味しいけど、緊張のせいでせっかくのワインの味があんまりわからない。
「慶都さん、今夜はおかしいですよ。からかってばかりで……」
「からかってるように見える?」
ダメ、そんな艶っぽい目で私を見ないで。
心臓がおかしくなっちゃう。
「は、恥ずかしいです」
「君は本当に魅力的だ。他の誰かに盗られないか心配ばかりしている」
「そ、そんなこと……」
「もちろん、だからというわけではないが、結婚のこと……なるべく早くしたいと思ってる。この秋には……」
「そんなに早くですか?」
「ああ。それに雪都とも早く正式な親子になりたいんだ」
それは、とても嬉しくて有難い申し出だった。