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ー逃げ道は君になった。ー
🩷佐野勇斗 攻
💛吉田仁人 受
🤍山中柔太朗
❤️曽野舜太
💙塩﨑太智
放課後。
俺が教室で帰る準備をしていると、突然、教室のドアが勢いよく開いた。
❤️「仁人!!」
💙「仁人、早く!!」
💛「……え?」
顔を上げる。
そこには、
息を切らした舜太と太智が立っていた。
いつもなら笑っている二人が、
今日は全然笑っていない。
💛「どうしたんですか……?」
❤️「勇斗が……っ!」
💙「勇斗がっ……!」
その名前を聞いた瞬間。
胸が、大きく跳ねた。
💛「……勇斗先輩が?」
❤️「裏庭におるんよ!」
💙「なんか、揉めたみたいで……!」
❤️「結構やられたみたいなんよ!」
💛「……っ」
頭が真っ白になる。
気づけば、俺は鞄を掴んでいた。
💛「行きます!」
❤️「仁人、待って!」
💙「俺らも行く!」
三人で、急いで教室を出る。
廊下を走って、階段を駆け下りる。
胸が苦しい。息が上がる。
それでも、足を止められなかった。
――勇斗先輩。
何があったんだろう。
大丈夫なのかな。
そんなことばかりが頭の中を
ぐるぐる駆け巡る。
そして、校舎裏に着いた。
💛「……!」
そこに、勇斗先輩がいた。
壁にもたれて座っている。
制服は少し乱れていて、
頬には赤くなったところがある。
そして、その隣には――
🤍「ちょっと、動かないで。」
柔太朗がいた。
救急セットを開いて、
勇斗先輩の手当てをしている。
🩷「柔太朗、もう大丈夫だって笑」
🤍「大丈夫じゃないから手当てしてるんだけど」
🩷「もう…過保護だな。」
🤍「……心配なんだよ」
柔太朗はそう言って、
勇斗先輩の手に絆創膏を貼った。
その声は、
いつもより少しだけ小さくて、
震えていた。
そして、目元が、ほんの少し赤い。
💛「……勇斗先輩!」
俺が駆け寄る。
勇斗先輩が顔を上げた。
🩷「……あれ」
少し驚いた顔。
🩷「仁人?」
💛「……大丈夫なんですか」
俺は勇斗先輩の前にしゃがみ込む。
🩷「大丈夫、大丈夫」
💛「……嘘です」
🩷「え?」
💛「全然、大丈夫そうに見えないです」
声が震えた。
勇斗先輩の傷を見る。
胸の奥が、ぎゅっと苦しくなる。
🩷「ほんとに大したことないって」
💙「いやいや、全然大したことあるやろ!」
❤️「ほんまやで! 俺らめっちゃ心配したんやから!」
🩷「お前らまで来たの?笑」
💙「だって勇斗が急に……!」
❤️「びっくりしたんやから!」
でも、俺には
二人の声があまり入ってこなかった。
目の前の勇斗先輩しか見えない。
そんな俺を見ていた柔太朗は――
何も言わなかった。
ただ、静かに俺を見つめていた。
柔太朗side
昨日、自分が告白した相手。
その相手が今、誰を見ているのか。
誰を心配しているのか。
それが、分かってしまった。
🤍「……」
目に、涙が浮かぶ。
でも、すぐに瞬きをして、こらえる。
まだ、ここでは泣かない。
仁人が、
これから勇斗に答えを返すかもしれない。
その瞬間を自分が見ているのは、
きっと無理だ。
俺は小さく息を吸う。
そして、涙をこらえながら。
🤍「……舜太」
❤️「ん?」
柔太朗は、勇斗と仁人を一度だけ見た。
それから。
もう一度、舜太を見る。
🤍「……もう、行こう」
ほんの少し、声が震えた。
舜太は、
その声を聞いて俺の顔を見る。
そして、気づかれた。
――今にも泣きそうなんだ。
でも、
俺は必死に泣かないようにしている。
だから優しい舜太は、
❤️「……うん」
それだけ言った。
💙「え? でも……」
舜太は太智の袖をそっと引く。
❤️「太智。行こ」
💙「……?」
太智が二人を見る。
そして、ようやく何かを察した。
💙「……あ」
三人は、それ以上何も言わなかった。
俺は最後まで涙をこらえたまま。
仁人を見ることもできずに、
静かに歩き出す。
❤️「……行こか」
💙「……うん」
仁人side
三人の足音が、少しずつ遠ざかっていく。
そして、そこには――
勇斗先輩と俺だけが残った。
勇斗先輩はしばらく黙っていた。
そして、小さく息を吐く。
さっきまで聞こえていた舜太たちの足音
も、もう遠い。
静かだった。
俺は、目の前にいる勇斗を見つめる。
頬には小さな傷。
制服も少し乱れていて、
いつもの余裕そうな笑顔はどこか
弱々しい。
何を言えばいいのか、分からなかった。
そんな仁人を見て、
勇斗が少しだけ笑った。
🩷「……なんか、二人きりになっちゃったな」
💛「……そうですね」
また、沈黙が落ちる。
でも今度は、さっきまでとは違った。
仁人の胸の奥には、
ずっと聞きたかったことがあった。
💛「……でも、俺」
一度、言葉を止める。
それでも、勇斗先輩から
目を逸らさなかった。
💛「聞きたいことがあります」
🩷「……ん?」
💛「何があったんですか」
勇斗は少しだけ困ったように笑った。
🩷「……別に。ちょっと揉めただけ」
💛「ちょっとって……」
声が震えた。
🩷「大丈夫だって。こんなの、たいしたことないから」
そう言いながら笑う勇斗先輩。
でも、その笑顔がいつもより
苦しそうなのを、仁人は知っていた。
💛「……嘘です」
🩷「え?」
💛「大丈夫な人は、そんな顔しません」
勇斗が黙る。
そして、少しだけ俯いた。
🩷「……そっか」
その声は、いつもの勇斗よりずっと小さかった。
🩷「……仁人には、見られたくなかったんだけどな」
💛「……何を?」
🩷「こんなところ」
勇斗は、自分の頬に触れる。
🩷「俺、もっと……かっこよくいたかったんだよ」
その言葉に、
仁人の胸がきゅっと締まった。
🩷「好きなやつの前では、かっこよくいたいじゃん」
俺は、何も言えなかった。
その一言だけで、
勇斗先輩がどれだけ不安だったのかが
伝わってきた。
告白のあと。
俺から返事がないまま、
時間だけが過ぎて。
その間もきっと、
勇斗先輩はずっと怖かった。
🩷「……正直、怖かったんだよ」
勇斗先輩が、ぽつりと呟く。
🩷「仁人に断られるのも」
少しだけ笑う。
🩷「柔太朗に取られるのも」
その声が、ほんの少し震えた。
🩷「……俺が一番近くにいたいって思ってるのに、そうなれないかもしれないのも」
仁人は、ただ勇斗を見つめていた。
🩷「だからさ」
勇斗が顔を上げる。
🩷「せめて、好きなやつの前ではかっこよくいたかった」
その言葉を聞いた瞬間。
胸の奥が、ぎゅっと締めつけられた。
――好きなやつ。
その言葉だけで、あの日のことが蘇る。
『好き。好きだよ、仁人』
『めちゃくちゃ好き』
『俺の隣にいてほしい』
『……好きで、悪い?』
あの日。
勇斗先輩は、俺に全部伝えてくれた。
なのに俺は、
「少し、待っててください」
そう言った。
勇斗先輩にも。柔太朗にも。
どっちも大切だったから。
どっちの気持ちも、
無駄にしたくなかったから。
……でも。
いま目の前の勇斗先輩を見ていると。
胸の奥から、
ずっと押し込めていたものが溢れてくる。
初めて屋上で会った日。
誰にも気を遣わなくていい場所だと
言ってくれたこと。
手を繋いだとき。
たったそれだけなのに、どうしようも
ないくらい心臓が速くなったこと。
俺の前髪が顔にかかっていたとき。
『俺が仁人の顔見えないの』
そう言って、
髪をそっとどけてくれたこと。
俺が熱を出した日。
学校を休んでまで、
そばにいてくれたこと。
『早く会いたいです』
そう言った俺に、
『……俺も』
って返してくれたこと。
文化祭の日。
怖くなった俺の手を握って、
『手、離さないでください』
『離さない』
そう言ってくれたこと。
『仁人が可愛いのは事実』
そうやって、何度も俺を困らせたこと。
そして。
あの日の告白。
全部。全部、思い出せる。
気づけば、目の前が滲んでいた。
💛「……っ」
🩷「……仁人?」
涙が頬を伝う。
止めようとしても、止まらない。
🩷「なんで仁人が泣くんだよ笑」
優しい声だった。
いつもの、少しからかうような声。
それが余計に苦しかった。
💛「……だって」
声が震える。
💛「……怖かったんです」
🩷「……何が?」
💛「勇斗先輩に、何かあったのかと思って……」
勇斗先輩の表情が、
少しずつ変わっていく。
💛「俺……」
言葉が詰まる。
でも。
もう、誤魔化したくなかった。
あの日からずっと、ずーっと
俺は答えを探していた。
どっちといるときが一番自分らしいのか。
どっちに会いたいのか。
どっちの隣にいたいのか。
そして今。
答えは、もう目の前にあった。
勇斗先輩に何かあるかもしれない。
そう思っただけで、こんなに怖かった。
会いたい。
無事でいてほしい。
笑っていてほしい。
もっと一緒にいたい。
……この人の隣にいたい。
それが、全部。
俺の答えだった。
💛「……勇斗先輩」
🩷「……ん?」
💛「俺……」
涙を拭う。
でも、また溢れてくる。
💛「勇斗先輩のこと……好きです」
勇斗先輩が、固まった。
💛「俺、勇斗先輩が好きです」
もう一度。
今度は、ちゃんと伝える。
💛「ずっと……分からなかったんです」
💛「勇斗先輩と柔太朗、どっちが好きなのか……」
💛「二人とも大切で……だから、ちゃんと考えたくて」
一度、息を吸う。
💛「でも……勇斗先輩に何かあったって聞いた瞬間、俺……」
涙が落ちる。
💛「怖くて、会いたくて……」
💛「俺が会いたいって思ったのは、勇斗先輩でした」
勇斗先輩は、何も言わなかった。
ただ、じっと俺を見ている。
💛「この先も……」
声は震えていた。
それでも、言葉にする。
💛「勇斗先輩の隣で、笑っていたいです」
長い沈黙。
そして、
🩷「……そっか」
勇斗先輩が、ふっと笑った。
その目は少し赤かった。
🩷「……俺、今めちゃくちゃ嬉しい」
💛「……はい」
🩷「待っててよかった」
そう言って、
勇斗先輩は俺の頭に手を置いた。
ぽん、と優しく。
それから、ゆっくり髪を撫でる。
💛「……」
目を閉じる。
あ、この手。知ってる。
何度も、俺を安心させてくれた手。
屋上で。
教室で。
帰り道で。
いつも優しく頭を撫でてくれた。
――いつもの、優しい勇斗先輩の手だ。
なんだか、急に安心した。
💛「……勇斗先輩」
🩷「ん?」
💛「これからも……よろしくお願いします」
🩷「……こちらこそ」
勇斗先輩は笑った。
その笑顔を見て、俺も少しだけ笑った。
帰り道。
ふと、空を見上げる。
最初に勇斗先輩と出会った場所は、
屋上だった。
あの頃の俺にとって、
屋上は逃げるための場所だった。
誰にも会いたくなくて、
誰にも話したくなくて、
ただ、一人になりたくて。
でも、いつの間にか。
俺は屋上に行く理由を変えていた。
一人になるためじゃない。
勇斗先輩に会うため。
話すため。笑うため。
そして、一緒にいるため。
逃げるためだった場所が、
いつの間にか、
君に会うための場所になっていた。
俺はもう、一人で逃げなくていい。
苦しいときは、誰かに話していい。
誰かのそばにいてもいい。
そして今、
俺がそばにいたいと思う人は――
決まっていた。
💛「……勇斗先輩」
小さく名前を呼ぶ。
返事はない。
でも、なんだかそれだけで嬉しかった。
――逃げ道は、君になった。
そしてきっとこれからは、
逃げるだけじゃない。
逃げ道になった君の隣で、笑っていたい。
ここまで「ー逃げ道は君になった。ー」を
読んでくださって、
本当にありがとうございました!
ついに仁人が、
自分の気持ちにちゃんと向き合って、
答えを出しました!
最初は逃げるために向かった屋上で
出会った勇斗。
そこから少しずつ距離が近づいて、
たくさん笑って、悩んで、
すれ違って……。
そして最後には、仁人自身が
「逃げ道になった君の隣で笑いたい」
と思えるようになりました!
ここまで読んでくださった皆さんが、
この5人の物語を少しでも楽しんでくれて
いたら嬉しいです!
……そして、もしこのお話を
「もっと読みたい」
と思ってくださる方がたくさんいたら、
もしかしたらいつかまた5人に会える……
かも?🤫💭
そのときは、また一緒に5人の物語を見届
けてもらえたら嬉しいです。
最後まで本当に、
ありがとうございました!🫶🏻
コメント
13件
全て読ませていただきました!主様は天才かなんかですか⁉︎(なんて呼べばいいかわかりませんでした)これ読んでフォローしない人いないです!その後YJがどうなったのかみてみたいです!

ここまでなんで読めたのかは不思議ですがとても面白い話でした!5人の関係性がはっきりしていてその人物らしい行動を取っていて見ていて飽きませんでした!また続き見たいです!!!!お疲れ様でした!
自分の夢の中様こんにちは! きになって初めてこの作品を読んで大好きになりました!とても大好きな作品なので、もっと見たいです!
𝕔𝕠𝕔𝕠
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