テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「……て、提案?」
龍聖君は、さらに顔を近づけた。
照明が薄暗いからといって、こんなのは反則だ。
「ああ。俺は、両親から結婚を急かされてる。お見合いの話もたくさんあって困ってるんだ。正直、恋愛なんてしてる場合じゃないし、誰も好きにはなれない。そして、琴音は工場をつぶしたくない。おじさんやおばさんを安心させてやりたいと思ってる。それにはお金が必要だ」
龍聖君、何が言いたいの?
「う、うん」
「お互いの利害が一致してるだろ? 2人とも両親を安心させたいって気持ちがある。それに俺は琴音の両親に恩返しもできる。だから……」
「だ、だから?」
「俺と琴音が結婚する」
「えっ!? け、け、結婚?」
何を言い出すのだろう。
龍聖君はおかしくなったのか?
「ああ、そうだ。お互い、相手の思いを汲み取って、結婚という名の契約を結ぶ。まずは1年間」
「け、契約結婚するってこと?」
「そうだ。両親にはそんな約束があることは伏せておく。それから先は……まあ今は考えないようにしよう。どう? こんな名案は他にないと思うけど? もちろん、琴音に助けてくれる彼氏がいないなら……の話だけど」
そう言って、龍聖君はグラスを唇にそっと押し当てた。
あまりにも突然過ぎる驚きの提案に、何が何だか頭が回らない。
「か、彼氏なんていないよ。私に彼氏なんかいるわけない。それに、契約結婚だなんて、そんなこと」
「彼氏、いないんだ……本当に?」
不思議そうに見つめる視線が気になった。
「えっ……どうして?」
「いや、この前、琴音が男性用のパジャマを買ってたから。あれは……彼氏への贈り物なのかって……」
「ち、違うよ! 全然違うから。あれはね、お父さんの誕生日に渡そうと思って買ったものだよ。今の私に彼氏なんているわけないじゃない」
「そっか……。だったら……良かった。誤解して悪かった」