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若き覇王に、甘くときめく恋を

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若き覇王に、甘くときめく恋を

75 - 第三章 ときめきの甘い恋を、あなたに EP.3「突然の雨に見舞われて」⑩

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2025年02月13日

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やがて家が近づいてくると、まだ彼と離れたくない気持ちが募った。


起きて間もなくにホテルを出たことで、割りと早い時間なこともあって、


ブランチとか、せめていっしょにしてくれないかな……。それとも私の部屋に、来てもらっちゃうとか……。


そうあれこれと頭を巡らせていたら、自分の発想にぽわぽわと顔が火照ってきて、両手で頬を押さえた。


「うん? どうかしたのか?」


私の様子を見咎めた彼に、やや気づかわしげに尋ねられる。


「あ、いえ違います。どうかしたとかじゃなくて、その……」


こういう時、察してもらえたらとも思うけれど、貴仁さんはそういうタイプでもないかな……。……実際言っちゃえば、そうした計算のないところも、彼を好きな理由の一つでもあるのだけれど……。


でもだったら、昨夜のリベンジもあるし、私から言わなくちゃだよね? おウチに呼ぶのはちょっとハードルが高めだけど、外でのごはんくらいなら付き合ってくれるかな……と、食事のお誘いを仕掛けた、その矢先──


「今日は、この後に会社に寄って行くんで、あまり時間が取れなくてすまないな」


彼の方から、しゅんとなる一言を切り出されてしまった──。


日曜なのに、出勤なんだ……。仕方ないよね、彼はあの大企業のトップなんだもの……。


「いえ、そんな……今日は、ありがとうございました」


口では受け入れながらも、その実もっと一緒にいたい気持ちは胸の奥でくすぶっていた。


……もし、仕事終わりでもいいから会いたいって伝えたら、会ってくれるかな? とは一瞬考えるけれど、そう言えば、きっと立て込む仕事を切り上げてでも、彼は会いに来てくれるように思えた。


だけどそれでは、繰り越した分のしわ寄せで、次にはよけいに忙しくなるかもしれないことを考えると、わだかまる気持ちはありはしても、”会いたい”と言い出すことはできなかった。


ただ、デートで消化し切れないでいたことを、彼の優しい心づかいで拭えたからこそ、できるなら自分でも少なからずの挽回がしたかった……。


「じゃあまた、次に時間が空いたら、連絡をするから」


マンションの前で車を降りて、「はい……また」と、無理に笑顔を作り頷く。


貴仁さんの運転する車が、遠く走り去って行く。


その次第に小さくなる車体を見つめながら、『時間が空いたら……』って言ってたけれど、忙しい彼の次にっていつになるんだろうと感じた。


「……もう少しだけ、あなたといたかった」


立ちすくんで独り呟くと、ふと涙がこぼれそうになって、私は足早に部屋へ駆け込んだ──。


「こないだは数週間が空いたけど、今度はいつになるのかな……」


ひとりきりの部屋でポツリと口にする。


だけど、いくら会えなくたって、わがままを言ったりして、あまり彼の心を掻き乱したくもなかった。


寂しい……けど、私も仕事を頑張らないと。そうしないと、貴仁さんにちゃんと胸を張って会えないもの……。


そう思い至って、「ヨシッ!」と、自分自身に気合いを入れるように声に出す。


──と、ふいにスマホが、メッセージが届いたことを知らせた。


見るとそれは貴仁さんからで、私は急いでSNSの画面を開いた。


『言い忘れていた。今日は、私の方こそ、ありがとう』


そんな儀礼的なメッセージをわざわざ送ってくれるなんて、ホント律儀なんだものと、ふふっと笑みをこぼしていると……、



『仕事がなければ、もっと君といたかった』



ピコンという電子音とともに、まるで私の気持ちに応えるかのような一文が寄せられて、


彼のこういうところにキュンとさせられちゃうのは、やっぱり言うまでもないように感じた──。


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