R15くらいの想定
人によっては暴力と捉える描写あり
小悪魔な緋八に伊波がお灸をすえる話
オチを考えずに書いてしまったがために謎が謎を呼ぶ文章になってしまいました。
例に漏れずオチはありません。
それでも構わない方はどうぞ。
酔っ払った緋八を家に連れてきたときだった。
ヒーロー達の会合という名の飲み会で珍しく雰囲気酔いしてへべれけになった緋八を一人帰路につかせるのはまずいと判断して家へと運んだ。
同僚として尊敬できる部分が沢山ある緋八が他のヒーロー達に気を許して酒をのんで本音を語った部分を見られたのが内心嬉しく、ちょっとほっこりしていたところすらあった。
だからその良い飲み会後に実は財布スられて……とかあったら台無しになってしまうだろうから家へと連れて帰った。
その時は彼の酔った時の悪癖のことをすっかり忘れていた。
家に着いた時点で緋八はほぼ意識がなく、寝ているも同然の状態だった。
緋八の羽織物を脱がせてベルトを緩めてソファに寝かせて自分はシャワーへと向かった。リビングを出て廊下を歩いていたその時だった。
「ねぇ……」
後ろから話しかけられて、なあに、と振り返る前には抱きつかれていた。
猫が甘える時のようにぐりぐりと頭を肩に擦り付けてきて驚く。
「マナ?」
誰かと間違えているんじゃ、と少し大きめの声で呼ぶ。お腹の方に回された腕をとんとん、と軽く叩く。
返事はない。するりとその手を取られて指を絡めるようにして握ってきた。
耳に当たる息遣いが熱い気がしてぎょっとする。
「マナ、俺、俺だよ」
なんかまずい。色々と状況が、空気感が。
最近の話を聞くに現在彼女はいないはずだけれども。
必死に呼び掛けて振り返って緋八の顔を見ると、とろり溶けた表情でこっちをみていた。
「うん……らい」
甘い声にハッとした。その気になれば振りほどけた手を振り払えなかった。
酒で上気した頬に、乱れてくしゃっとなった髪に、薄く膜の張った目に伊波は射止められたように動けなくなった。
誰とも間違えていなかった。酔っ払って酩酊状態ではあるものの、緋八は目の前にいる伊波を伊波だと分かってこうしている。
指と指の間をなぞるように自身の指を絡ませてきて、満足気に緋八は笑う。
子供の指遊びみたいに甲をなぞってきてそれが擽ったくて手を引くとぎゅっと体を抱き込んできた。
緋八が密着したところ全部が熱かった。
「ま、な」
「目え見てよ、ねぇ」
「え」
「ずっとさあ、ふたりになりたかったんでしょ」
緋八の掠れた声が耳元でするたびアルコールの匂いがした。
「襲ってみせてよ、らい」
耳にちゅっ、とリップ音がした次の瞬間には緋八を押し倒して口吻をしていた。
どう考えたって酔っているとはいえ、これだけ煽った彼が悪い。
彼は稀にこういう酔い方をするタイプだった。今思えば自分が連れ帰っていたのは賢明な判断だった。
他の人にこんなことしてる彼なんて考えたくない。
怒りに身を任せてこんなことをする自分はおかしいと分かっていた。 でも止められない。
もう、どうにでもなれ。
「んぅ、んん」
啄むようにして唇を重ね、抵抗できないように手首を掴む。
歯列をなぞって舌を絡めれば、彼はもうされるがままで。
「っは………い゛っ」
息苦しくなって口を離して次は彼の首筋に噛み付いた。歯型が残るくらい強く。
さすがに痛いのか手を解いて肩を押される。
負けじと強く押さえつけ、犬歯を突き立てる。
「はあ゛っ、ごめん。ごめんなさい」
酔から冷めたのか、震えた声で謝罪が聞こえた。何に対して謝っているのかは分からない。
煽ったことに対してか、それともこの場を何とかやり過ごすために言っているだけなのか。
肩を押す手を力いっぱい押さえつける。ギリギリと手首を絞めた。
鉄っぽい匂いがして口の中に微かに血の味が広がる。
見れば半円状に点々と跡がついていてそこから血が滲んでいた。
傷口を舐め取り、じゅっと吸う。
「ひッ」
短く悲鳴を上げる緋八の目にはうっすら涙が浮かんでいた。
その表情で我に返った。
酷いことをした、とはあまり思わなかった。
どちらかといえばこのくらいにしてやろう、という気持ちだった。
がっくりと力の抜けた彼は息切れしていて、首筋には噛み傷、 手を離すと掴んでいた跡がくっきりと彼の手首についていた。
我ながら容赦ない。思わず苦笑する。
これで少しは懲りただろうか。
ちゃんと切り替えないと。ひと呼吸おいてできるだけいつもの声のトーンで言う。
「駄目だよマナ。男煽っちゃ」
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