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棒読みのサニーに続いたナッキの声は意外に元気だ。
「あ、夜は危ないよナガチカ! 昨夜もそうだったけど恐ろしい魔力? 殺気みたいな奴が動き回っているんだよ! だから自分の塒(ねぐら)でジッとしているとか、旅立ちを明日とかに早めるだとか、そこらの岩にでも頭を打ち据えて僕らの事を忘れるだとか、打ち所でポックリだとか、その方が良いよ! 危ないからさっ! ポックリねポックリ!」
何かもう本心が駄々漏れで全然隠せていない……
だと言うのに鈍いのだろう、我が父、グフングフンっ、えっと、ナガチカというニンゲンは笑顔である、恥ずかしい男だ。
「あはは、ご心配無く! あの魔力でしたら私の指示だったんですよ! 昨日地下に入った時に昔馴染みが眠りこけているのを見つけましてね、起こした時にこの先の水路の下で眠ると皆さんにご迷惑を掛けている、そう伝えましてね、もっと北、『美しヶ池』の北側に移るように説得したんですよ! だからもう大丈夫ですよ、あの蟹、一旦寝始めたら周囲が砂丘になっても起きないですからね! 昨日も言ったでしょう? もう少し深く眠りついていたらお猿を呼ばなければ起こせませんでしたからぁ、この年になって木登りなんてゴメンですからね、それに居場所を知る為にフランスくんだりまで出向いてアルヴィルのオークを訪ねるのも面倒臭いですよ、良かった良かった」
ほう、アルヴィルのオーク、ナラの事だよな…… アルヴィル…… ベルフォース村の事だろうか?
父はハッとした表情を浮かべて言葉を続ける。
「あっ! そうかぁ! 皆さんが驚かないように夜中に移動するように伝えたんですけど、あれか? 夜の方が魔力が数倍になるんだったかな? あの蟹って昼なお暗いレルネーの沼出身でしたぁー、なるほど! それで皆さん変身したりしちゃったんですねぇー、失敗失敗ぃ、テヘペロー! でも、運良く誰も死ななかったんでしょ? 良かった良かったぁ」
「「…………」」
マジか…………
「『メダカの王様』であるナッキ殿にとって自分より何よりも一番大切なのは池の仲間、配下達の安全ですもんね、私もハタンガの仲間達、家族が一番大切ですから判りますよ! 皆さん無事で良かったぁー、私のウッカリで恐ろしい思いをさせてしまって申し訳なかったですね、これこの通り」
躊躇(ためら)い無く頭を下げてみせるナガチカ、この手の発言と素直な態度だけは好感が持てるのだが……
ナッキは言う、何故かいつもと違い慎重な口調だ、今更か。
「ううん、ナガチカさんは親切心でやってくれた事なんだから気にしなくて良いよ、良いですよ、結果的には皆進化できましたし、寧(むし)ろ感謝している位だよ、位です…… 色々お世話になってしまって何とお礼を言ったら良いのやら、でも、七日後にはお別れですね、そうなったら二度と会えないでしょうし、言葉を交わす事も無いでしょうね、お名残惜しい、大変残念ですがお互いの仲間のためです、いやぁ、本当に残念ですね」