テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
いつも通りに登校している名良(なら)。しかし顔色はいつも通りではない。少し青い顔をしている。
前日、ヨルコと放課後に屋上で夕焼けを2人きりで見るという
普通の青春より色濃い青春の1ページのようなイベントを経験した。
過度な青春摂取による二日酔い状態である。
普通の人ならここで浮かれて「るんるる〜ん」なんて鼻歌を歌ったりして
上機嫌で、なんなら思い出して少し顔を赤らめたりするのだろうが、名良はそうじゃない。
思い出して顔を赤らめるどころか思い出して顔を青くして、鼻歌を歌うどころか
「はぁ〜…。めんどくさいことになりそう…。てかめんどくさいことになりませんように」
と呟くほどである。別に名良は“青春”をしたくないとか女子と話すのが嫌いというわけでは決してない。
夕焼けを見るというイベントだって、夏に制服のまま水遊びするイベントだって
夏祭り、花火、体育祭、文化祭、修学旅行だって
極力友達と、“友達”といろいろな思い出を残したい派である。しかしそのイベント事に女子が絡むと…
「はぁ…」
恋愛に発展しそうで嫌なのである。
「よおぉ〜名良ぁ〜」
と肩に腕を回され、ぐっと体重が乗り、前につんのめる。雲善(うんぜん)は名良の顔を覗き込む。
「うわっ。なに?ゾンビ?」
「誰がゾンビだよ」
「いや、なにその顔。いや、朝学校嫌なのはわかるけどさ」
「いや…。イサさんと顔合わしづらいなぁ〜って」
思わず本音が漏れた。
「ん?ん?ん?イサさん?」
ニマァ〜っとした顔になり
「なになに?なんかあったん?イサさんと」
興味津々で聞く雲善。
「あ…いや…別に」
「おいおいおいおい。親友に隠し事は、な・し・だ・ぜ⭐︎」
たしかに雲善のことは大切な友達だと思っている名良。
なので極力隠し事はしないようにしようとは思っているものの
雲善にイサさんとのことを話す
↓
雲善が楽しそうな顔をして胸に手をあてて
「この雲善様にまかせなさい!」
とか言う
↓
風善(ふうぜん)とかにも相談する
↓
風善が仲良い今日都(きょうと)さんとかに相談する
↓
なんなら雲善もイサさんと仲が良い女楽国(にょたくに)さんとかに相談する
↓
そうなると今日都さんや女楽国さんと仲が良い福留(ふくとめ)さんとかにも話が回り
女子陣で話し合いが始まり、雲善、風善、琴道(ことみち)をも巻き込んだ話し合いに発展し
周りが固められる
↓
なんやかんやで恋愛のアドバイスが始まる
↓
イサさんと2人で出かけたりとかいうイベントが発生させられる
↓
告白までの1本道が舗装され始め、少しでも道を外れようとしたら
今度は線路をひかれ、トロッコに乗せられ
強制的に「告白する」というゴールまで進まされる
↓
イサさんを呼び出して告白する(どうせ今日都さん、女楽国さん、福留さん
雲善、風善、琴道は近くにいて聞いていたりする)
↓
フラれる
↓
女子の結束により、告白したことが罪のように扱われる
↓
「え。友達だったんでしょ?」「友情壊してまで告白する?」「サイテー」と思われ
元の友達関係には戻れるなんてことは到底できなくなる
↓
学校へ行くのが嫌になる
だってよりにもよってイサさん隣の席だし
という過程を想像する名良。「うげぇ〜」という顔をする名良。
「な!なんだよ!親友じゃないのかよぉ〜」
猫のようのスリスリする雲善。
「いや、そうじゃなくて…」
「兄ちゃん、親友を困らせたらダメでしょ」
と猫の飼い主のような風善が雲善をなだめる。
「だって名良がぁ〜」
「誰にだって隠しておきたいこと1つや2つあるでしょ。兄ちゃんだって最近見てるジャンルが逆痴k」
「バーぁ〜あ!?なに言おうとした!?ねえ?弟くんよ?なに言おうとした?」
「だから兄ちゃんでも親友にでも知られたくないことあるでしょ。って」
「てかさなんで知ってるわけ?ねえ」
「予測変換は消しといたほうがいいよ」
「え、マジでいつ?あ!スマホ貸したときか!」
「オレはたとえ兄弟でも人のスマホを勝手に見るタイプじゃないからね」
「ふーくん?ちみはどんなジャンルのを見てるのかなぁ〜?」
と言う雲善の発言に、静かに耳を傾ける恋弁(れんか)。
「オレはそーゆーの見ないから」
「嘘つけ!」
「たとえ同じ顔の兄ちゃんにでも知られたくないからねぇ〜」
「ぜってぇー見る。ふーの性癖知って学校の廊下に貼ったんねん!」
「たとえ家族でも訴えるときは訴えるかんね」
と兄弟で仲良く?話しながら、名良は
話逸れてよかったぁ〜。ナイス!ふー!
と風善に「話逸らしナイスで賞」を授与した。昇降口に入り、下駄箱で上履きに履き替え、それぞれの教室へ。
ヨルコは糸や嶺杏の元にいて、名良の隣の席にはいなかった。
「名良はどんなん見んの?」
「は?」
「え?ほらぁ〜。ねぇ?」
「言わねぇよ」
「えぇ〜?親友じゃん?」
「親友を盾にすんのやめ。あと男子校じゃないんだから。そーゆーことあんま言うなよ」
「まあ。そうか」
そんなこんな話していると担任の先生が入ってきて、ヨルコも糸、嶺杏の元から自分の席に戻った。
「紺堂くん、おはよ」
「あ、あぁ…おはよう…」
名良はヨルコの顔、声で昨日の出来事を思い出し
告白し玉砕するまでの流れを思い出し、顔を背けながらヨルコに挨拶を返す。
「?」
キョトンと名良の後頭部を見つめるヨルコ。
「イサさん!おはようございます!」
「あ、雲善くん、おはよー」
「今日も可愛いですね!」
「ありがとう」
どストレートに本人に直接「可愛い」と言う雲善に対して
正気かこいつ
と思う名良。朝のホームルームが始まって終わり、1時間目の準備に取り掛かる。
とはいっても1時間の授業担当の先生が都合によりお休みということだったので
1時間目に授業のない担任の先生が自習の監督役として続投ということになった。
プリントが配られ、各々そのプリントをやり
残った時間は好きな教科の勉強をしてもいいという時間になった。
「うわぁ〜…1時間目から体育はめっちゃ嫌」
と糸が窓の外を眺めながら呟く。その言葉に嶺杏(れあ)も窓の外を見る。
「1年生か。たしかに1年の頃、1時間目から体育しんど。って思ってたわ」
「そういえば1年生の頃かぁ〜。この時期の1年の1時間目の体育。遠い昔の記憶だわ…」
愁を帯びた目で空を見る糸。
「新しい学校で知らんクラスメイトに緊張してるときねぇ〜。私もさすがに緊張したわぁ〜…。懐かしい」
「え。嶺杏ちんでも緊張したんだ?」
「糸は私をなんだと思ってるの」
「ん?無気力ダウナー系ギャル?」
「…」
純粋目(まなこ)で見てくる糸をジト目で見る嶺杏。
「無気力ダウナー系はまあいいわ。私ギャル感ゼロでしょ。黒髪だし」
と嶺杏が言うと、糸は人差し指を左右に振り
「Non non。ギャルは髪色じゃないのよ」
と否定する。
「ギャルってのは佇まい?あとはマインド?」
糸は胸をトントンと叩き
「ここが…大事なんだよ嶺杏ちん」
とキラキラした目で言い放つ。
「いや、別に私ギャル目指してないし。なる気ないから」
「そうなの!?」
クラス中の視線が糸に集まる。もちろん担任の先生も。
「女楽国(にょたくに)、どうした?」
「あ、いや、嶺杏ちんに勉強教えてもらってて
そうなんだ!?って思ったら声に出てました。お騒がせしてすいません」
とクラスに「テヘ」みたいな顔で謝り、クラス中の視線が散る。
「はっず」
なぜか嶺杏が恥ずかしがり、机にめちゃくちゃ伏せる。
「恥ずかったわぁ〜」
糸のほうが恥ずかしそうではない。
「なんであんな声出したんだよ」
「え。嶺杏ちんがギャル目指してなかったことへの驚き?」
「え、待って。私そんなギャル目指してそうに見える?」
「…いや。そうでもない」
「なんっだそれ」
思わず大きな声が出た嶺杏。クラス中の視線が嶺杏に集まる。
「あ、すいません」
とさっきよりも縮こまる嶺杏。
「今嶺杏ちんの気持ちがわかった。なんかこっちまで恥ずかしい」
「十中八九私のほうが恥ずかしいわ」
「あ!見て見て嶺杏ちん」
「聞けよ」
「ピンク髪の…。あの制服コーミヤ(黄葉ノ宮高校の略称)じゃね?」
嶺杏も窓の外を見る。
「うわ。ほんとだ。てか私たち1時間目の授業してるんだから、コーミヤも授業中よな」
「でしょ」
「え。サボってってこと?」
「待って。手ー振ってる。振られてる女子探せ」
と言う糸に「オッケー」とも「了解」ともなにも言わずに探す嶺杏。
「あ、あの子じゃない?友達が肩叩いて」
「どこ」
「あそこ」
「うわ。マジだ。小さく手ー振ってるわ。え、彼氏?」
「じゃないの」
「ガチ?ピンク髪学校おサボりヤンキー彼氏?」
「しかもコーミヤ。他校だし」
「1年のくせに他校にあんなヤンキー彼氏がいるとは生意気な…」
「それにしても綺麗なピンクだなぁ〜」
「1年に先越された…」
「詰めんなよー。彼女が泣きついたら学校に来そうじゃん」
「え。怖い!ヤダ!ヤンキーコワイ!」
「饅頭怖いみたいな」
「なにそれ」
「…饅頭怖いは違うか。ヤンキー怖いは普通だもんな」
「めっちゃ騒がしいじゃん、女楽国のほう」
自習を1ミリもしていない雲善が糸のほうを見て呟く。
「めっちゃ窓のほう見てる」
「体育があるクラスか学年あんでしょ」
「あぁ〜。1年かな。ほらオレらが1年のときも1時間目から体育あったじゃん」
「あったわ!1時間目から持久走なんて日にゃーもう3、4時間目の授業やってらんなかったわ」
「雲善は今もだろ」
「そうともゆー!濃口醤油ぅ〜」
「どっかで聞いたことある」
「1年生のときは1時間目から体育あったんだ?」
ヨルコが名良に聞く。
「あぁ。はい」
ヨルコと顔を合わせずに答える。
「そりゃ疲れるよね」
「あ、はい」
「男子高生は元気の塊なので!」
雲善が割って入ってくる。
「元気の塊ねぇ〜」
含みのある言い方をする名良。
「名良。なんだよ。その含みのある言い方」
「いやぁ〜?元気有り余ってるならそりゃー逆痴k」
「バーーカ、なーーの、かーーなーー!?」
大きな声で阻止した雲善。クラス中の視線、そして担任の先生の視線が雲善に集まる。
「木扉島(ことじま)ぁ〜。うるさいぞ〜」
「雲善が騒いでら」
糸も雲善の大きな声に雲善に視線を向ける。嶺杏も雲善に視線を向ける。
「なんか雲善くんもうちの学校では陽キャ代表みたいなポジ(ポジション)だけど
さっきのコーミヤのピンク髪くん見たら雲善くんも霞むね」
「それなぁ〜。うち割と校則厳しいからなぁ〜」
「厳しかなくない?ふつーでしょ。スカートも折ってるし」
「え。折れない高校とかあんの」
「サクオカ(桜ノ丘高等学校の略称)とかスカート折れないし、カーディガンも指定あるって聞いたけど」
「マジ?辛くね?」
「さあ?私らの感覚では辛いけど、サクオカの生徒は私らと違って、勉強第一みたいなのの集まりでしょ?」
「あぁ〜…相容れない」
「な〜」
なんていう騒がしい1時間目の自習の授業が終わり
2時間目、3時間目、4時間目と授業が過ぎ去っていき、お昼ご飯の時間となった。