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魔法少女「……さて」
ここは湘南の海水浴場。夕日が輝く海岸に、魔法少女がやって来ていた。
魔法少女「(みんなが言ってた辺りだけど……)」
思わずため息が出た。ほど近い島の方に目をやる。エノシマ海浜遺跡と呼ばれる場所で、湘南の海に浮かぶ島にある遺跡だ。干潮時には海岸と島を結ぶ道が現れる。今はちょうど干潮で、海上に道が浮かんでいる。
魔法少女「隠す気無いのね。すごい魔力の気配。もう時間も遅いし、ここだけでも制圧しておきましょうか」
そう呟くと、手に杖を出して海に浮かぶ道を進む。しかし、遺跡に入ってしばらく進んでもモンスターが現れない。おかしいと思ったその時。
ドンッ!
魔法少女「……! 『バリア』っ!」
銃声が聞こえた。銃弾は音を立ててバリアに衝突し、地面に落ちた。
魔法少女「(何⁉ ティロ先輩⁉ まさかまた……⁉)」
銃声の主について頭をフル回転させながら、奥から近づいてくる足音を聞いていることしかできなかった。そして、奥から現れたのは。
ジェネラル「なんだ、お前かよ」
ジェネラルだった。
魔法少女「なんだって何よ。っていうか、なんであんたがいるのよ?」
ジェネラル「……経緯は省くが、依頼の一つだ。お前こそなんで……」
魔法少女「友達から湘南のモンスター異常発生について聞いたのよ」
そう言いながら、魔法少女はズカズカと遺跡の道に踏み込む。そこが罠だと知らずに。
カタッ 魔法少女が踏んだ床が沈んだ。
魔法少女「ん?」
ジェネラル「おいバカ! そこは……」
ジェネラルが言い終わるより早く、爆発音が響いた。
魔法少女「何⁉ 早く逃げ……」
その時、ガタンという音と共に辺りが暗くなった。振り返ると、来た道が壁で塞がれているのが見えた。
ジェネラル「チッ……ああクソ! どうしてくれるんだ!」
魔法少女「『ライト』! ごっごめん! まさか罠だなんて……」
魔法少女が光の玉を出すと、辺りが再び明るくなった。そして、誰かの足音が聞こえる。やがて、一人の女が出てきた。
「まんまと引っかかったわね」
魔法少女「誰⁉」
りーん「私はりーん。あなた達、絶望様から話は聞いているわ。絶望様のためよ。さっさと死んでちょうだい。『マジックキャンセルフィールド』」
辺り一帯で魔法を使えなくするフィールド魔法だ。――正確には、魔法が使われた瞬間その魔力を吸い取り魔法を消し去る魔法だ――魔法少女の光の玉が消え、辺りが暗くなる。そこに、爆弾が近づく。
ドカーン!
魔法少女「……! 『バリア』……」
魔法少女に向かって飛んできたそれをバリアで受けようとするが、ゆっくりの五感情報の大半を占める視覚情報を奪われた今、反応が遅れる。
魔法少女「きゃぁっ!」
ジェネラル「……」
ジェネラルが腕時計を確認する。ジェネラルが人間界にいたときに使っていたものを戦闘に耐えられるように鍛冶屋が改造したものだ。
ジェネラル「三十分だ」
魔法少女「?」
ジェネラル「島と海岸を結ぶ道は干潮時にしか現れない。知ってるだろ?」
魔法少女「……!」
魔法少女には、ジェネラルが何を言おうとしているのか分かった。
ジェネラル「あと三十分であの道は沈んで塞がる。そうなれば次の干潮まで帰れねぇ!」
りーん「おしゃべりは終わりかしら?」
また、爆弾が迫ってくる。
魔法少女「『バリア』!」
爆弾が目の前で弾ける。
魔法少女「ジェネラルさん! 一瞬だけよ! よく見てなさい!」
ジェネラル「……ああ」
魔法少女「『ライト』!」
一瞬、魔法少女の手元が強く、強く光った。
りーん「うっ……! (嘘でしょ……膨大な量の魔力を一気に流すことで私のフィールドの魔力の吸い取りを制した⁉ そんなめちゃくちゃな……!)」
ジェネラル「『サテライトブラスター』」
目眩ましをもろに喰らったりーんの頭上に、青い光線が降りそそぐ。土埃の向こう、りーんの姿はなかった。後ろからガタンという音がしたので振り返ると、先ほどの壁が上がっていた。
ジェネラル「急いで最深部の宝を持ち帰る。動けるな?」
魔法少女「ええ。(今日の実習で作った魔力回復薬があって助かったわ……)」
そして宝を持ち帰り、遺跡の入り口まで戻ってきて二人が見たのは、ただ一面に広がる海だった。
ジェネラル「……この深さなら流されずに渡れるだろ。行くぞ」
魔法少女「ちょっと待って! 靴がびしょびしょになるじゃない!」
ジェネラル「じゃあお前は次の干潮を待ってから帰るんだな」
魔法少女「……分かったわよ。行くから」
そして二人は、靴だけと言わず膝下まで濡れながら帰った。魔法少女の制服のスカートは、魔法少女が少し持ち上げながら帰ったので無事だったそうだ。
冬乃「お帰りなさい! ……って何でびしょ濡れなんですか」
玄関で、二人を冬乃が出迎える。
ジェネラル「まあ、色々あって」
魔法少女「この人に海の中歩かされて」
冬乃「あはは……とりあえずタオル持ってきますね!」
そう言って冬乃は風呂場に向かった。
魔法少女「お願い! ……はぁ。靴はクリーニングね……」
翌日。
剣豪「……それで? 何の用だよ」
剣豪は天使に呼び出され、敷地内の森に来ていた。
天使「単刀直入に言うわ。ここ、結界が張ってあるわね」
剣豪「結界?」
天使「ええ。外は人間界だったり、普通にゆっくりの世界だったり、場所によって色々ね。でも一つ共通点があるとすれば……手、貸して」
剣豪「ん?」
剣豪が前に手を伸ばす。すると、確かに結界が張ってあるという感じがする。そして結界外に出た剣豪の手に、天使が触れる。すると、バチッという音と共に、両者に痛みが走る。
天使「……い゙っ……た……」
剣豪「っ……大丈夫か? ……やっぱり、この結界の外じゃ、共存は無理そうだな」
天使「それこそ私がこの結界を私と剣豪の周りに張るとかしないと無理ね。解析はしてみるけど……しばらく人間界に行くときには気を付けた方が良さそう。多分、騒ぎになっちゃう……っていうか、ここ本当に元温泉宿? これじゃ客も寄り付かないわよ」
剣豪「んなこと俺に聞かれてもな……って、お前まさか再現する気か?」
天使「いろいろ不便でしょ?」
冬乃「あっいた! 剣豪さーん!」
そこに冬乃がやってくる。
天使「剣豪……これ多分……」
剣豪「だろうな。わかったよ。行ってくる」