pnside
昨夜の沈黙がまだ胸に残っていた。あの瞬間、先生が何も言わなかったこと。
それが、思っていたよりもずっと重たく響いている。
もしまた死にたくなったら。
自分で口にして、後悔して。
でも、何かを確かめたかった。
きっと先生にとって俺がどんな存在なのか知りたかったんだ。
それなのに返ってきたのは静寂だけで。
その静けさが、まるで拒絶みたいに感じた。
眠れなくて、天井を見ていた。
白い光がぼやけて、頭の中がぐるぐると渦を巻く。
“ やっぱり俺なんて ”
その言葉ばかり繰り返していた。
最近はネガティブな事ばかり考えてしまうせいで夜もよく眠れない。
朝、ドアが開く音と共に 先生が入ってくる。
いつも通り眠そうに白衣の袖を直して、静かにカルテをめくる。
けど目が合わない。
それだけで胸が痛い。
でも、来てくれた。
それだけで少し安心してしまう自分がどうしようもなく嫌だった。
rdside
昨夜の沈黙がずっと頭に残っている。
何か言うべきだったと自分でも分かってはいたが 口が動かなかった。
そのせいで彼は酷く落ち込んで心を塞ぎこんでしまいかけている。
「もしまた死にたくなったら」
あの言葉があまりに真っすぐで 一瞬で自分の言葉を奪った。
あまりにも聞きたくない言葉だったのかもしれない。
本当にもしもなのか … もしかしたらもう諦めてしまっているのか。
どちらかは分からないけど“守りたい”という気持ちが俺の中で膨らむばかりだった。
どうして返せなかったのか。
その問いが、今も刺さったまま抜けない。
こん x3 ヾ
rd「入るね」
そう言って俺が診察室に入ると、案の定彼は元気がなかった。
彼は少し顔色が悪い。
目の下に影が落ちていて、息が浅かった。
それでも笑おうとしていた。
その無理が、見ていられなかった。
“助けたい”
そう思うたびに、どうしようもない痛みが生まれる。
ただの患者じゃない。
そう気づいてしまった時から、ずっとバランスが崩れている。
こんな感情なんか知らなければ良かったのに。
pnside
会話が続かない。
息が詰まるような沈黙が何度も訪れる。
pn「昨日は…ごめんなさい」
そう言いかけたけど、声が出なかった。
気管に何かが詰まってしまったような感覚だった。
その代わりに、先生が静かに言った。
rd「気にしなくていいよ」
その言葉が、優しいのに遠い。
届きそうで届かない距離に感じた。
手のひらが汗ばんでいる。
何か言いたいのに、言えない。
言わなきゃいけないと分かっているのに俺の体は決して賛成の意を示してはくれなかった。
結局、また黙ってしまった。
沈黙の中で、心だけが焦っていた。
rdside
カルテを見つめても、文字が頭に入らない。
彼の視線が気になって仕方ない。
手の震えが止まらない。
“距離を置かなければいけない”
頭ではそう言い聞かせているのに、 目の前の彼を見るたびにそれが壊れる。
今日も目の奥に影がある。
まるであの夜の前みたいだ。
… 嫌な予感がした。
このまま黙っていたら、また彼を失いそうで、また彼は自分を諦めてしまいそうで。
言葉が勝手にこぼれた。
rd「……ぺいんとがいなくなるのは、嫌だ」
その瞬間、空気が止まった。
言ってはいけない一線を越えたと、すぐにわかった。
これだけは絶対に言ってはいけないと分かっていたのに、言ってしまった。
けれどもう取り消せなかった。
pnside
頭が真っ白になった。
“いなくなるのは嫌”
その言葉が何を意味するのか、分からなかった。
昨日の言葉の返事なのだろうか。
それでも、嬉しかった。
心臓が痛いくらい高鳴って、それが 同時に怖くもなった。
それは先生として言ってるのか、
それとも…
そんなことを考える自分が情けなかった。
先生としてに決まっているのに。
それでも期待してしまう。
息を整えながら、笑ってみせた。
pn「……そんなふうに言われたら、期待するじゃないですか」
震えた声が部屋の中に落ちる。
先生は何も言い返さなかった。
その沈黙が、逆に優しく感じた。
いや、辛いのかもしれないけど。
もしかしたら先生としてではないかもしれない、その中途半端な期待を打ち切ってくれるような気がした。
涙がこぼれそうになって、俯いた。
静かに空調の音だけが響いている。
カーテン越しの光は鈍くて、外の空が曇ってるのがわかった。
時計の秒針の音がやけに大きく聞こえる。
その小さな音が、部屋の中の沈黙を測るみたいで、 一秒ごとに心が締めつけられていった。
自分の心を安心させるように瞳を閉じると先生の声が頭に響き渡った。
それは呼吸する度に胸が痛くなってくる。
まるで空気すらも重くなってしまったみたいに。
rdside
“期待する”
その言葉に胸を刺された。
本当は、そう言わせたくなかった。
でももう遅い。
“助けたい”と“惹かれている”が同じ重さで揺れている。
どちらが本音なのか分からなくなっていた。
それでも、今度は黙らなかった。
もうこれ以上ぺいんとを傷つけたくない。
rd「…期待していいの。ぺいんとはここにいていいの」
自分でも驚くほど穏やかな声だった。
俯いてしまっている彼から涙がこぼれるのが見えた。
肩が小さく震えていた。
ただ、声をかけることができなかった。
今の俺が何を言っても、きっと彼をさらに惑わせる。
そう分かっていながら、喉の奥が痛むほど言葉を飲み込んだ。
伸ばしかけた指先が、彼に触れる直前に震えて止まった。
あと少しで届く距離なのに、触れたら壊れてしまいそうな彼を見ると怖くて触れられなかった。
“どうすれば救えるんだろう”
その問いは、医者としてではなく、一人の人間としての苦しみだった。
それでも俺は心に誓った。
“次に彼が『死にたい』と言っても、今度は黙らない”と。
そう強く思った。
その誓いと同時に、どうしようもなく苦しいほど、彼が愛おしかった。
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝ ♡1000 💬1
コメント
1件
うわぁぁぁ!遂にここまで来た!rdがちゃんと言えるようになるのはいつだろうか、、、あとこのお話で何回泣いたことか、、、(???)