佐川は何が起こったのか理解できなかった。
目の前で起きているのは現実なのか、夢なのか考えを巡らせるも答えは出なかった。
ただ一つの事実として、風速30m/sの風が佐川の右手側へ向けて飛んできたということだ。
「いきなり何をするんだよ」
体は無傷であったため、周囲の状況を確認すべく横目で後方を確認した。
ホームレスが建てたと思われる段ボールハウスが吹き飛び、亀裂が入っている。
「何なんだ、あんたは」
「何の目的があってこんなことをするんだ」
サーザスは右手を確認し、佐川を無視しながら自分に何か言い聞かせていた。
「やはり、調整が必要だな」
「先を越される訳にはいかない」
と呟き、佐川の顔を見た。
「おや、驚きましたか?」
「貴方が何を言おうと、もう何もかも遅いのですよ」
サーザスは左手でパッチンと指を鳴らし、A4サイズの紙切れを出現させた。
ふむふむと感心した様子で何かを呟きだした。
「今回はどんな実験にするか」
「これは試したことがない、あれは失敗した」
完全に佐川を無視している。
チャンスとばかりに、河岸からジョギングコースへ駆け出し逃走を試みた。
後方を振り返ると、サーザスは満面な笑みを浮かべながら、紙に目を通していた。
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