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日葵(ひまり)は、
花言葉を覚えるのが好きだった。
「ねぇ、知ってる?」
が、日葵のお約束のはじまりだった。
「ん、何?」
夏の日。向日葵畑に行ったあの日。
背丈より高い花が、風に揺れていた。
日葵はその中で、誰よりも目立っていた。
「向日葵の花言葉って知ってる?」
「知ってる、”あなただけを見つめる“でしょ?」
「正解!でもね、もうひとつあるんだよ」
日葵は得意げに笑った。
「”変わらぬ想い“──なんだって」
風が吹いて、向日葵が一気に揺れる。
「ずっと太陽の方向に向いてるから、そうなんだって」
「へぇ…そうなんだ」
「ねぇ、覚えといてよ。忘れないでね」
呆れたフリしながら、俺は頷いた。
「ほら、写真撮ろうよ!」
「はいはい、撮ろっか」
シャッター音。
画面の中で、日葵は太陽より眩しく笑っている。
「ねぇ、将来さ」
「どうした、急に」
「もし私がいなくなっても、向日葵みたら私を思い出してね!」
「縁起でもないこと言わないでよ」
「ごめん!冗談だってば!」
「まぁ、お互い様じゃない?」
そう言って、日葵はまた笑った。
あのときの俺は、本気で怒っていたわけじゃない。
ただ───
どうしてあんなこと言ったのか、
少しだけ引っかかっていた。
でも、その違和感も、
すぐに夏の暑さに溶けていった。
向日葵は、空に向かって咲いていた。
俺たちの、未来も
あんな風に、まっすぐ続くと願っていた。
でもそのときは、まだ知らなかった。
あの夏が───
一生忘れられないことになるなんて。
向日葵の花言葉──「あなただけを見つめる」
「変わらぬ想い」